堂場瞬一 『ラストライン』



              2020-07-25


(作品は、堂場瞬一著 『ラストライン』      文春文庫による。)
                  
          

 初出 週刊文春2017年8月17・24日 夏の特大号〜2018年6月7日号
 本書 2018年(平成30年)11月刊行。

 堂場瞬一:
(本書による)  

 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年に「8年」で第13小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「アナザーフェイス」シリーズ、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ、「刑事の挑戦・一之瀬拓真」シリーズ、「警視庁追跡捜査係」シリーズのほか、「ランニング・ワイルド」(文藝春秋)、「焦土の刑事」(講談社)、「1934年の地図」(実業之日本社)、「絶望の歌を歌え」(角川春樹事務所)、「宴の前」(集英社)、「砂の家」(KADOKAWA)、「白いジオラマ」(中央公論新社)など多数。

主な登場人物:

岩倉剛(ごう)
妻 
娘 千夏

本部捜査一課から南太田署刑事課強行班係に、警部補50才。定年まであと10年。岩倉の行く先々で事件が起こる疫病神。
・妻 城東大の生産工学部の教授。岩倉とは数年後の離婚含みで別居中。
・千夏 高1の15才。妻の方に住む。

伊東彩香(あやか) この春の異動で交番勤務から刑事課に赴任の新人刑事、20代半ば。
安原 南太田書刑事課の課長、警視。岩倉の後輩。
特捜本部

・木下 本部管理官。捜査一課一筋25年。岩倉より3つ年上。
・水谷 本部、警部補。

村沢 品川北署の副署長。岩倉の所轄刑事になって1年後、新人刑事として後輩に当たる。典型的な出世コースに。
三原康夫 被害者。萩中での殺人、顔を殴打、70才。
宮本卓也 鍵こじ開け手口から、宮本の犯行と疑われる。
松宮真治

日本新報社会部の記者。半年前から静岡総局から二方面の警察回り(品川北署の記者クラブ)。自殺、28才。真面目の評判。
・峰 日本新報の警視庁キャップ。
・高山 日本新報整理部。松宮真冶が相談していた相手。

松宮真冶の家族構成

・実の両親 父親=義友 山郷物産事件の元社員。自殺。
      母親=果穂 夫の自殺後、精神的に不安定に、子育てできる状況になし。その後は自活できるようになり一人暮らし。
・両親(養子先) 父親=和生(かずお)、母親=聡子
(さとこ)が真冶を引き取る。
・田川 聡子の父親、80才超え。新報社会部で山郷事件を担当していた。時々真冶と会っていた。

[山郷(やまさと)物産不正融資事件]関係者
本村健太 逮捕当時広域暴力団常道会の組員。岩木貴生(たかお)殺害で15年の刑務所暮らし後、9年前出所。
岩木貴生(たかお) 山郷物産で長岡保雄の参謀といわれてた男。本村に刺され即死。
三原康夫

国内総合部(なんでも屋)の部長。社内のスィーパー。
関連会社に出向の山郷物産社員岩木を、本村を使って殺す。
25年前の山郷物産事件に関する内部資料を、身辺整理用にメモしていた物を松宮真冶に託していた。

長岡保雄(やすお) 銀行から不正融資を引き出した主犯格。
西本浩介 25年前の執行役員。
竹井 常道会で本村の近くにいた人間。
赤沢美里(みのり) 舞台女優、蒲田に住む。捜査一課の後輩で大友鉄の紹介で岩倉と知り合い懇意に。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 定年まであと10年のベテラン刑事岩倉剛。捜査一課より南大田署に配属となった直後に管内で独居老人が殺される。移動の先々で事件を呼ぶと言われる岩倉は、元交番勤務で同じく異動してきたばかりの後輩女性刑事・伊東彩香と共に事件の捜査に加わるが…。

読後感:

 最初の事件が、萩中での三原康夫の殺人事件。南太田署に特捜本部が立ち、捜査が始まる。
 犯行の手口から宮本卓也が挙がったが・・。
 そんな時に日本新報社会部の記者松宮真冶の自殺の報が入る。
 記者の自殺に嫌な感じを抱く岩倉。新人女刑事彩香とコンビを組み、松宮の自殺を調べていると・・・。さらに松宮は養子で、産みの母親が自殺したことを知る。という具合で、物語の前半は、松宮の自殺は問題が無く捜査打ち切りになったかに・・。

 そんな折、特捜本部では被害者(三原康夫)の過去が・・。山郷物産の社員で、25年ほど前勤めていたらしいこと、バブル期直後の大規模な不正融資事件が未だに全容解明出来ていないことが・・。
 そこからは山郷物産の事件がらみで三原のことを、さらに長岡保雄有罪判決でもピカソの絵の保管場所拒否でうやむや状態のこと。
 岩倉の引っかかりは山郷物産の不正融資の事件発覚の情報提供者それも社内のタレコミと・・。
 三原殺しの殺人事件と、松宮という新報新聞記者の自殺をめぐる、25年前の山郷物産の不正融資事件にまつわる追跡が複雑に展開、同著者の作品に出てくる大友鉄(刑事総務課)<アナザーフェイスシリーズ>、失踪課の高城賢吾<警視庁失踪課シリーズ>、城戸南検事<神の領域>、日本新報の記者<メディア三部作>の登場も盛り込み、登場人物の刷り込みもばっちり。

 やっとラストでは相方の彩香との距離も「ガンさん」と呼ばれるに到り急激に近づく。
 この後の「割れた誇り」「迷路の始まり」へと続くことに・・。
 なかなか単純な物語でないのは著者の作品の特徴。登場人物も次第に増えてきて、関係を追っかけるのも大変。
 様子が分かったことでまた次の作品を手にすることに・・。


余談:
 
 文庫本と単行本の読み応えの差を感じる。
 文庫本で文章がぎっしりと詰まって書き込まれた作品では、頭の中になかなか流れが入ってこない。
 その点、単行本の場合はスペースがあり、その余白感で頭の中が整理されるような。
 それでも高齢になってくると、特に名前などは覚え書きをしておかないとなかなかぴんとこないので困ったものである。
背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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