堂場瞬一著 『 共鳴 』
 

 

 

              2016-07-25



(作品は、堂場瞬一著 『 共 鳴 』  中央公論新社による。)

           
 

  本書 2011年(平成23年)7月刊行。書き下ろし作品。

 堂場瞬一:(本書より)

 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説の執筆をはじめ、2000年に「8年」で第13回小説すばる新人賞受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、の他「沈黙の檻」「夜の終焉」(上・下)「断絶」「長き雨の烙印」「神の領域 検事・城戸南」「約束の河」「? The Flame」「標なき道」(以上中央公論新社)、「警視庁追跡捜査係」シリーズ(ハルキ文庫)、「アナザーフェイス」シリーズ(文春文庫)、「棘の街」(幻冬舎)、「異境」(小学館)などがある。

主な登場人物:


新城将(21歳)
母親 香恵
オヤジ
バアチャン(没)

麻生和馬の孫。大学を途中で世田谷の家に二年間の半分引き籠り生活中。
オヤジは広告代理店の営業、家に殆ど居ない。
バアチャンが脳梗塞で倒れてからは世話を高校生の将が見る。
母親の香恵は麻生和馬の娘、オヤジと口論、いきなり出て行きアメリカへ。将11歳の時。

麻生和馬(74歳)
妻 琴恵(没)
和馬の妹 五月

元刑事、県警防犯アドバイザーとして14年間、小田原でお節介役を引き受けている。
・妻の琴恵は10年前に亡くなる。
将を罪滅ぼしの思いで立ち直らせようと引き取る。

滝川悦子
息子 幸平
(40歳)

和馬の幼なじみ、鴨宮飯店を営む。
息子の幸平は店の社長。
・鄭麗華(テイ レイカ) 今度入った中国の女の子。日本語たどたどしい。

田口健太
父親 泰治
母親 初美
おばあちゃん

将と同じ高校生で不登校。おばあちゃん子、おばあちゃんが亡くなった後は家にも寄りつかない。田口家は麻生家の隣。
おばあちゃんは脳梗塞で倒れ、健太が面倒見る。

小川

ガソリンスタンドの店長。
・三原 バイト。麗華ちゃん目当てで鴨宮飯店によく来る。整理整頓好き。

原口彰(あきら) 小田原中央署生活安全課の係長、40代半ば。麻生和馬の最後の弟子。
久内 医者。麻生和馬の
王亮 中国人、麻薬の売人。麗華と接触?

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

半引きこもりの孫を強引に連れ出した元刑事の祖父。家族を顧みることなく生きた男の次なるミッションは、引きこもりの孫の更生だった。反発から始まった2人の関係は、ある事件を通して変わっていく…。

読後感
  

 町のお節介役を引き受け、信用度抜群のジイサンと半引きこもりの孫、新城将を主人公にふたつの相談事に首を突っ込んだことで、反発しながらも将はジイサンを見直し、ジイサンは一方で現役当時の仕事人間で、”自分の周りの人間を幸せにする”という言葉も孫の痛烈な批判に堪えることに。

 相談ごとは別に、将の疑問と、かたや高校生の健太の疑問がお互い似たようなことで反発、批判しながらラストに向け展開する。
 現在の介護とその難しさの中、両方おばあちゃん子の若者が、おばあちゃんの死に対する疑念を晴らすことが出来るのか、引きこもりや家に寄りつかなくなった真の原因が明らかに。

 一方で娘香恵(将の母親)と父親の麻生和馬との間、将の父親との離れてしまった関係は当然コミュニケーションがあるわけでもなく、このままでは解決しないと決心し連絡を取ることで事態はこれも進展することに。
 今までの著者のシリーズ物とは違った一面を垣間見た。

  

余談:

 小説の中で描写される言葉で感じたこと。
最近の若者には強さはないが優しさはある(健太も将もおばあちゃんの面倒見ていたことに)
・小説は、人の心理を読み解く能力を養うのに最適なテキスト。行間から人の気持ちをすくい上げる読み方をすれば(弟子の原口に実際の取り調べで相手の気持ちに入っていけるように) 

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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