堂場瞬一著 『凍る炎』、『高速の罠』
−アナザーフェイス5、6−



 

              2016-06-25



(作品は、堂場瞬一著 『凍る炎』(アナザーフェイス5)、『高速の罠』(アナザーフェイス6) 
 文春文庫による。


           
 

 本書  『凍る炎』(アナザーフェイス5) 
     
2013年(平成25年)12月刊行。書き下ろし作品。
 
      『高速の罠』(アナザーフェイス6)
         2015年(平成27年)3月刊行。書き下ろし作品。

 堂場瞬一:(本書より)

1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説の執筆をはじめ、2000年に「8年」で第13回小説すばる新人賞受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「アナザーフェイス」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、「警視庁追跡捜査係」シリーズのほか、「神の領域 検事・城戸南」「約束の河」「標なき道」「長き雨の烙印」「断絶」「夜の終焉」「共鳴」「ラスト・コード」(中央公論新社)、「ヒート」(実業之日本社)、「逸脱」「歪」(角川書店)、「解」(集英社)、「虚報」「衆」(文藝春秋)などがある。

主な登場人物:

『凍る炎』(アナザーフェイス5)

大友鉄
妻 菜氏i没)
息子 優斗
義母 矢島聖子

前妻を亡くし捜査一課から刑事総務課に。刑事特別捜査係主任、巡査部長。「取り調べ」と「事情聴取」が得意。
・優斗 小学 年(歳)。
・矢島聖子 町田に住む菜獅フ母親。菜緒の死後困ったときは聖子が優斗を預かっている。

柴克志

捜査一課、大友鉄の同期。突っ走りタイプ。
・桜川係長 柴の上司。

高畑敦美 捜査一課 柴と同じ班から永橋係長の班に。大学時代女子ラグビーで活躍、大柄。
後山(あとやま) 捜査指導参事官、キャリア、警視正。大友に対する指揮権、福原聡介から移る。
福原聡介 刑事部特別指導官という特別なポジションを離れ、三方面本部長に。退職前の最後のご奉公と。

台場署捜査本部
(中原殺し)

・永橋係長
・篠田管理官(強行班を束ねる)
・権藤 捜査一課長(今年の春から、一課叩き上げ)

沖田大輝 本庁捜査一課追跡捜査係刑事。
大阪府警 ・三輪 捜査一課刑事。

ベンチャー企業
新エネルギー研究開発

・中原孝文 上級研究員。メタンハイドレート採掘技術(NSシステム)開発プロジェクトのリーダー、37歳。
・脇屋拓 中原プロジェクトの研究員、26歳。
・瀧本美羽 上級研究員。中原とはライバル関係でプロジェクトから閉め出されている、32歳。

新エネルギー研究開発の本社

・谷田部(やたべ) 広報部長
・水沼佐緒里 広報係長。矢島聖子が大友鉄に見合い写真を見せた相手。

極亜貿易公司
(赤坂のビル)

・劉(りゅう) 商社の社長。電子機器を中国から日本に輸出。 中国にも同名の会社持つ。
・古谷(こたに) 社員
・雨野勇作 社員
・三浦 社員


『高速の罠』(アナザーフェイス6)

大友鉄
妻 菜氏i没)
息子 優斗
義母 矢島聖子

前妻を亡くし捜査一課から刑事総務課に。刑事特別捜査係主任、巡査部長。「取り調べ」と「事情聴取」が得意。負傷の癒やしで実家の佐久に。
・優斗 この春から小学6年になる。一人旅で佐久に。
・矢島聖子 町田に住む菜獅フ母親。菜緒の死後困ったときは聖子が優斗を預かっている。

柴克志 捜査一課、大友鉄の同期。突っ走りタイプ。
高畑敦美 捜査一課 柴と同じ班から永橋係長の班に。大学時代女子ラグビーで活躍、大柄。
後山(あとやま) 捜査指導参事官、キャリア、警視正。大友に対する指揮権、福原聡介から移る。
福原聡介 刑事部特別指導官という特別なポジションを離れ、三方面本部長に。退職前の最後のご奉公と。

準捜査本部
新宿中央署

信越バス会社脅迫手紙に対し。
・皆川係長 捜査一課特殊係。
・足達 盗犯係の若い刑事。大友鉄に付く。

深井 埼玉県警、寄居署の刑事課長。
高木一朗 長野県警捜査一課刑事。大友鉄の高校時代の同級生。
村上良司 大友鉄の高校時代の同級生。電気店を営む。
信越バス会社関係者

・太田社長 世襲の二代目。
・小菅元(こすがはじめ) 総務担当常務、59歳。ナンバーツー。

綾瀬竜馬 佐久の人、ギタリスト。佐久に一人で向かう高速バスの中で大友優斗に声を掛けた松葉杖の人物。大友鉄の父親(高校の教師をしていた)の教え子。

斉木昭(さいきあきら)妻 真希子
息子 光俊

8年前信越バスの運転手、中央道石川パーキングエリア手前で事故を起こし、懲役5年実刑、出所後自殺。
息子の光俊 IT系の会社勤務。
・裁判時の弁護士 脇屋

沢登有香 東日新聞の女記者、遊軍。粘りっこく鋭い。

物語の概要:(本書の裏表紙に記載の文章より抜粋。)

『凍る炎』(アナザーフェイス5)
「燃える氷」メタンハイドレートの研究施設で起きた密室殺人事件。夢のエネルギー資源をめぐる最悪の謀略に巻き込まれる刑事総務課の大友鉄。シリーズ最大の難事件が幕を開ける!

『高速の罠』(アナザーフェイス6)
 先の事件で負傷し、長野県佐久市の実家で療養していたシングルファーザーの大友鉄――父を訪ねに高速バスに乗った優斗は、移動中に忽然と姿を消してしまう。混乱を極める難事件に県境を越えて大友鉄が立ち向かう、人気シリーズ長編第6弾。

読後感
  
『凍る炎』(アナザーフェイス5)

今回の事件は大友を悩ませる。事件の全体像が見つからない、ばらばらの事象で関連があるのか無いのか、はたまた相手に対して得意の取り調べ術が有効でない。さらに相手が中国人であったり、ロシア人であったりと。従って応援にかり出されたとはいえ、一向に成果が上げられず、いったんは引き上げざるを得ない状態にまで。
 従って読者側としても最初の方は淡々と読み進めたのが、途中から何となく鬱状態に陥りそうに。なかなか核心状態に至らないことでだらけてきてしまう。

 もう一つは最初に柴と大友が関わっていた強盗事件が、途中で負傷した柴をそのまま残して別の事件に招集され、分断されたことにも一因があったのかも。当然後の事件にも関係しているとは想像できたけれど。
 扱うのがメタンハイドレートの発掘技術という最近話題のテーマであるけれども、ちょっと現実味にかけ離れている事件であったことも要因かも。

 一方で優斗との親子関係の話やら見合い話、大友の菜緒流のすき焼き作りの方がぐっと身近な話題に感じたのも皮肉なもの。
 とはいえラストのところ、事件の解決も完全ではなく、大友の捜査一課復帰の方向といい、ラストの語りがあれっと言う思いを抱いたら大友の最後がおかしくて終わってしまった。


『高速の罠』(アナザーフェイス6)

今回の事件はアナザーフェイス5「凍る炎」で、銃に撃たれ九死に一生を得た大友鉄が退院後1週間の休暇を取り故郷の佐久に7年ぶりの高校の同窓会に出席。一方息子の優斗は春休みを利用、高速バスの一人旅で佐久に来るときに拉致事件に合う。

 何せ体に自信の無い状態、そして管轄外で埼玉県警、長野県警との間の情報交換も上手くいっていない中、自分が両者の橋渡し役をやらざるを得ない状況で息子の拉致事件を探るように。

「凍る炎」の時と違って話がすっきりとしていて展開がすっと頭に入ってくる。境界での縄張り意識はよくあることでそんなことよりも自分の体のことで死の恐怖を味わった前後で取り調べのノウハウ、意気込みが微妙に変化していることに驚く。
 しかも相手を落とすことが出来ないことにさらに自信をなくす。追い打ちを掛けるように、息子の拉致事件に伴う息子のその後の影響を心配、高畑敦美にも傷を負わせてしまう。
 回を追うごとに作中の人物に感情移入をしていくようで次の事件を心待ちにするようになった。 

  

余談1:

 作品の中で警視庁捜査一課追跡捜査係という沖田大輝なる人物が登場している。堂場瞬一作の”警視庁追跡捜査係”シリーズがあり、こちらも読んでみることになりそう。

余談2:

 ラストで大友鉄が今は三方面本部長の要職にある福原とのやりとりがあり、後山との差、後山の様子をうかがい知る。とにかく後山のことは謎に包まれているので。

 まず資格、福原が「刑事部指導官」の特殊な立場で刑事部か扱うどの事件に首を突っ込んでもいい―――という立場である。後山は、立場的にはそれより下の参事官、そしてキャリアである。捜査現場の経験は、福原に比べ圧倒的に少ないし、周辺も「傷つけてはいけない」という意識で接している。・・・

 そんな中で、あれこれ口を出し、現場にも出て、大友を引きずり出す役割を負っている後山は、特殊な存在なのだ。本人が希望してやっているのか、あるいはもっと上の意思で決まったことなのか。彼本人に確認するのは怖くもあった。後山との微妙な距離感は、なかなか縮まらないから。まだまだ気さくに話ができるわけではないのだ。

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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