物語の概要:(本書の裏表紙に記載の文章より抜粋。)
『凍る炎』(アナザーフェイス5)
「燃える氷」メタンハイドレートの研究施設で起きた密室殺人事件。夢のエネルギー資源をめぐる最悪の謀略に巻き込まれる刑事総務課の大友鉄。シリーズ最大の難事件が幕を開ける!
『高速の罠』(アナザーフェイス6)
先の事件で負傷し、長野県佐久市の実家で療養していたシングルファーザーの大友鉄――父を訪ねに高速バスに乗った優斗は、移動中に忽然と姿を消してしまう。混乱を極める難事件に県境を越えて大友鉄が立ち向かう、人気シリーズ長編第6弾。
読後感:
『凍る炎』(アナザーフェイス5)
今回の事件は大友を悩ませる。事件の全体像が見つからない、ばらばらの事象で関連があるのか無いのか、はたまた相手に対して得意の取り調べ術が有効でない。さらに相手が中国人であったり、ロシア人であったりと。従って応援にかり出されたとはいえ、一向に成果が上げられず、いったんは引き上げざるを得ない状態にまで。
従って読者側としても最初の方は淡々と読み進めたのが、途中から何となく鬱状態に陥りそうに。なかなか核心状態に至らないことでだらけてきてしまう。
もう一つは最初に柴と大友が関わっていた強盗事件が、途中で負傷した柴をそのまま残して別の事件に招集され、分断されたことにも一因があったのかも。当然後の事件にも関係しているとは想像できたけれど。
扱うのがメタンハイドレートの発掘技術という最近話題のテーマであるけれども、ちょっと現実味にかけ離れている事件であったことも要因かも。
一方で優斗との親子関係の話やら見合い話、大友の菜緒流のすき焼き作りの方がぐっと身近な話題に感じたのも皮肉なもの。
とはいえラストのところ、事件の解決も完全ではなく、大友の捜査一課復帰の方向といい、ラストの語りがあれっと言う思いを抱いたら大友の最後がおかしくて終わってしまった。
『高速の罠』(アナザーフェイス6)
今回の事件はアナザーフェイス5「凍る炎」で、銃に撃たれ九死に一生を得た大友鉄が退院後1週間の休暇を取り故郷の佐久に7年ぶりの高校の同窓会に出席。一方息子の優斗は春休みを利用、高速バスの一人旅で佐久に来るときに拉致事件に合う。
何せ体に自信の無い状態、そして管轄外で埼玉県警、長野県警との間の情報交換も上手くいっていない中、自分が両者の橋渡し役をやらざるを得ない状況で息子の拉致事件を探るように。
「凍る炎」の時と違って話がすっきりとしていて展開がすっと頭に入ってくる。境界での縄張り意識はよくあることでそんなことよりも自分の体のことで死の恐怖を味わった前後で取り調べのノウハウ、意気込みが微妙に変化していることに驚く。
しかも相手を落とすことが出来ないことにさらに自信をなくす。追い打ちを掛けるように、息子の拉致事件に伴う息子のその後の影響を心配、高畑敦美にも傷を負わせてしまう。
回を追うごとに作中の人物に感情移入をしていくようで次の事件を心待ちにするようになった。
|