堂場瞬一 『 帰還 』


              2022-02-25


(作品は、堂場瞬一著 『 帰還 』    文藝春秋による。)
                  
          

 
初出 「オール讀物」2017年12月号〜2018年9月号「海鳥のいた夏」を単行本化に当たり改題。 本書 2019年(平成31年)4月刊行。

 堂場瞬一
(本書による)

 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒。2000年「8年」にて小説すばる新人賞を受賞。 主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、 「刑事の挑戦・一之瀬拓真」シリーズ(以上、中公文庫)、 「アナザーフェイス」シリーズ、「ラストライン」シリーズ(以上、文春文庫)、「警視庁追跡捜査係」シリーズ(ハルキ文庫)、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ(講談社文庫)、「焦土の刑事」(講談社)、「宴の前」(集英社)、「白いジオラマ」(中央公論新社)、「ピーク」(朝日新聞出版)、「ザ・ウォール」(実業之日本社)など。

主な登場人物:

松浦恭司(きょうじ)
妻 弥生
一人娘 佐奈

東日新聞社会部、事件・司法担当の編集委員、53歳。
入社時、 4人(松浦、本郷、高木、藤岡)とも 津支局赴任の同期。
・佐奈 来年は就職活動の大学生。マスコミを受験する気。

本郷太郎
妻 友美
娘 英玲奈
(えれな)
息子 郁人
(いくと)

東日新聞の関連会社「東日文化財団」に出向、 事務局次長、53歳。 一番出世しそうだったが、 5年前挫折、政治部から事業局、財団へ。 暇な部署。元政治部のエース。
・友美 家の中の実権を握っている。
・英玲奈 一貫校在学中なるも別の大学(医学部)受験を希望。
・郁人 中学3年生、来年はダブル受験。

高木歩美(あゆみ) 東日の広告部部長、来年は広告局次長を約束されている、神戸出身、独身、53歳。初めての女性役員の目も。

藤岡裕実(ひろみ)
妻 葉子

編集局から色んな部署に異動、本人の希望で四日市支局長を選び2年前赴任、記者活動に。写真の腕が良く連載あり、四日市市の臨海工業地帯の写真撮影中、堤防から転落死。警察は事故死と。
・葉子 四日市出身。津中央高校から地元の大学へ。在学中に婚約。父親は同じ津中央高校のOBで、県議会議員、不動産屋。

[東日新聞関係者]
前田 津支局長。
田宮 元四日市支局長、75歳。
[政治関係者]
猪熊一郎

三重一区で、無所属で当選、一期限りで出馬せず、表舞台から消えた。小柄で特徴的な鷲鼻の老人。不動産屋。
藤岡の葬儀に出席していた謎。

村本

元民自党の要職歴任、本郷が記者時代から20年の付き合い。
猪熊情報を入手するためのとっかかり人物。

増淵 民事党県連会長、51歳。二世議員。
湧水 三重県連のボス、民自党政調会長、57歳。
中島

三重三区、野党政友党の代議士。
・公設第一秘書 長畑 もともと民自党の関係者。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 工場夜景の撮影中に、東日新聞四日市支局長の藤岡裕己が水路に転落して死亡。警察は事故死と判断したが、本当なのか。藤岡とともに新人時代を三重県で過ごした同期3人が、真相究明に乗り出す。心揺さぶるミステリ長編。

読後感:

 30年前三重県津支局に赴任した東日新聞の四人の記者(松浦、本郷、高木、藤岡)が53歳の時点で振り返る波乱に飛ぶ人生が物語を貫いている。

 中でも藤岡は2年前、自ら志願して妻の葉子の出身地である四日市の四日市支局長として赴任する道を選び、記者としての取材人生を歩むが、何故か四日市の工業地帯の写真撮影の途中堤防から転落死をし、警察は事故として処理をする。しかし、藤岡は泳げず、過去に怖い目に遭って以降極端に水を避けていたことを知る松浦たちは、藤岡の死に疑問を持っていた。さらには、何故わざわざ四日市に赴任する決心をしたかにも理解しがたい気持ちがあった。
 くしくも、 同期の藤岡の葬儀に三人揃って出席した場で、 猪熊一郎の姿を見て違和感を覚える。と言う出だしからストーリーが始まる。

 同期の四人の東日新聞での仕事ぶりは人それぞれ、出世頭かと思われた本郷も今はコースから外れ、関連会社の財団暮らし、時間の余裕は一番持ち合わせている。一方高木歩美はどうも出世の筆頭株で、ゆくゆくはハツの女性役員の芽も見えてきて、忙しさに追われている。

 松浦は編集委員という立場で、直接の取材はしないが事件の筋書きを追うことではなく、その背景に何があるかを描き出すことを仕事としている。
 新聞社に就職することは記者で生涯過ごすことが本望とする松浦たちの、その取材能力をフルに活用、松浦は四日市に向かい、本郷や高木の協力を得ながら、藤岡に対する疑問点を明らかにする活動を始める。

 とにかく、どういう風に展開するのか、ページ数が残り少なくなる中、ようやく真相が明らかになってくるも、決めてなく、想像の域を出ず、またそれを明らかにすることがよしと出来ない事情で終局を迎える。
 新聞社の内情も面白く、 同期四人の活動ぶり、 生き方のこだわりなどなかなか興味深く読めた。


余談:

 振り返ってみると堂場瞬一作品は結構読んでいることに、著者の多作ぶりを改めて感じる。
 BOOKOFFで購入しようと思うと、過去に読んでいたかどうか判らず、どうしても買うのは避けることになる。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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