堂場瞬一著 『 邂逅 』
警視庁失踪課・高城賢吾

 

              2016-12-25



(作品は、堂場瞬一著 『 邂逅 』ー警視庁失踪課・高城賢吾(第3弾) 中央公論新社による。)

           
 

  本書 2009年(平成21年)8月刊行。書き下ろし作品。

 堂場瞬一:「蝕罪」より)

 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年に「8年」にて第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの他、「共鳴」「沈黙の檻」「断絶」「長き雨の烙印」「神の領域 検事・城戸南」「約束の河」「? The Flame」「標なき道」(以上小社刊)、「警視庁追跡捜査係」シリーズ(ハルキ文庫)、「アナザーフェイス」シリーズ(文春文庫)、「歪」(角川書店)、「衆」(文藝春秋)、「暗転」(朝日新聞社版)などがある。

主な登場人物:


<警視庁失踪人捜査課三方面分室の面々>

高城賢吾(45歳)
<私>
(たかしろ・けんご)

警部。失踪人捜査課三方面分室のナンバー2(管理職)。
娘の綾奈が7歳で失踪行方不明に。妻(弁護士)とは離婚、7年間酒浸りの生活。多摩東署から失踪課に。

阿比留真弓(48歳) 室長。上昇志向の上司。自分の存在を忘れられない様しばしば本庁に顔出し。

明神愛美(めぐみ)
 (27歳)

巡査部長。栄転が吹っ飛び金町署刑事課から失踪課に。突っ張り、頑なな心、冗談が通じない。来た頃より柔軟性も見られるように。

法月大智
(のりづき・だいち)
娘 はるか
(27歳)

警部補。定年間近のベテラン刑事。心臓に持病。高城の注意を無視して仕事に熱を入れ倒れる。藤井碧の死に責任を感じて?
・娘 はるかは駆け出しの弁護士。高城に父親に気をつけている様激しくハッパをかけている。

醍醐塁 大柄な男。元プロ野球選手。鈍感な体育会系の人間と思っていたら案外細かいところに気がつく。
森田純一 最年少。舞の腰巾着。仕事できない。
六条舞 派手な顔つきの美人。本物のお嬢様、父親は厚労省の幹部、母親は製薬会社創始者族の出。
小杉公子 庶務。
石垣 失踪課課長、警視正。真弓とは別の意味で出世至上主義。
三井 捜査二課の管理官。

占部俊光(40歳)
母親 佳奈子
(70歳位)

学校法人港学園理事長。出身地仙台。妻は4年前交通事故死で母親との二人暮らし。“突貫小僧”(三浦の評価)。
・母親の佳奈子から息子の行方が分からないことで失踪課を訪れる。口うるさい母親。

姉 藤井碧(40歳)
妹 鈴原香奈枝

ミッション系の名門森野女子短大の総務部長。コンサルティング会社から2年前引き抜かれ、東京でひとり暮らし。仙台で死亡、自殺と考えられている。
・妹の香奈枝は結婚して仙台に住む。姉の明るくて勉強が出来て人気者で、ひとりだけ異質な優秀すぎる人とは正反対の立場で疎遠になっていた。

港学園関係者 ・三浦尚志(ひさし) 法学部教授。
森野女子短大関係者 ・浦島 事務局長。
阪井康之(やすゆき) 東日新聞のサツ回り記者。六条舞と付き合っている(?)。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 大学理事長が失踪の捜索願が母親から出される。しかし一変必要なしと変化、大学側も非協力的に。一方女性の遺体が仙台で見つかる。心臓に持病持ちの法月が無理をおしてのめり込む姿に高城の心配は増すばかり。

読後感:

 またこの警視庁失踪課・高城賢吾シリーズを読むことになりそうである。刑事物としての筋の興味とは別に心臓に病を持つ法月大智をめぐり娘のはるかが法月の体を心配し管理職である高城賢吾に注意を促すも倒れ、高城を責める。女同士のよしみか、はるかと親しみ関係を持つ明神愛美は間に挟まれて困ってしまう。その後のはるかと高城の会話のやりとりを読んでいると次第に生い立ちや暮らしの様子が目の前に広がってきて人間ドラマとしての物語にしみじみとしてくる。

 こんな所も著者の作品が読まれる由縁であろう。
 さて事件は大学の占部理事長の行方不明(?)を疑われる案件に乗り出した高城は、大学側の聴取にも協力を得られない上に、依頼者側から突然「探さなくて良い」との言葉に、気になる点があるのに捜査の理由がなくなる。一方で法月が調べる失踪者森野女子短大の総務部長藤井碧が仙台で死亡の知らせ。二つの事案に関係があるのか。捜査二課からの挑戦的言葉にも反発を覚え、室長の真弓からも良い感触を得られず、独断でチームを動かす捜査に果たして光が当たるのか。

  

余談:

 作品の中で、“訳あり人間ばかりが集まった失踪課の中で最大の謎であるのが阿比留真弓室長”と記されているが、その謎が描写されるにはこの先の作品を読んでいく必要がありそう。今回は法月大智とその娘はるかの描写がとりわけ注目されたが、次第に課内の人間の様子があぶり出されることを期待したい。

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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