堂場瞬一著 『 波紋 』
警視庁失踪課・高城賢吾シリーズ(第6弾)

 

              2017-01-25



(作品は、堂場瞬一著 『 波紋 』   中央公論新社による。)

          
 

 本書 2011年(平成23年)2月刊行。書き下ろし作品。

 堂場瞬一(本書より)
 
 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年に「8年」にて第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの他、「沈黙の檻」「夜の終焉」(上・下)「断絶」「長き雨の烙印」「神の領域 検事・城戸南」「約束の河」「? The Flame」「標なき道」(以上小社刊)、「交錯 警視庁追跡捜査係」(角川春樹事務所)、「アナザーフェイス」「虚報」(文藝春秋)、「青の懺悔」(PHP研究所)、「棘の街」(幻冬舎)などがある。  

主な登場人物:


<警視庁失踪人捜査課三方面分室の面々>

高城賢吾(47歳)
<私>
(たかしろ・けんご)

警部。失踪人捜査課三方面分室のナンバー2(管理職)。
娘の綾奈が7歳で失踪行方不明になって9年。妻(弁護士)とは離婚、7年間酒浸りの生活後、失踪課に来て2年。高城が来てから失踪課の仕事が増える。

阿比留真弓(50歳) 室長、警視。先の「裂壊」でのことで上昇志向失せる。法月の移動話にも動かず。高城との間の亀裂はさらに開く。

明神愛美(めぐみ)(29歳)

巡査部長。栄転が吹っ飛び金町署刑事課から失踪課に。突っ張り、頑なな心、冗談が通じない。高城に対する辛らつな言葉に磨きがかかる。
醍醐塁 大柄な男。元プロ野球選手。
森田純一 最年少。舞の腰巾着。射撃の腕は一流。
六条舞 派手な顔つきの美人。本物のお嬢様、父親は厚労省の幹部、母親は製薬会社創始者族の出。現代っ子の振るまいが秀逸。
小杉公子 庶務。分室で唯一常識的な人間。大人の風格を示す。
田口英樹(47歳)

法月の後釜に交通部交通規制課から配属の警部補。やる気の無い人間風。”サボリの田口”で有名らしい

石垣徹(とおる) 失踪課課長、警視正。真弓とは別の意味で出世至上主義。失踪課の3分室を2つに減らそうと企んでいる。

法月大智
(のりづき・だいち)
娘 はるか

3月1日付で渋谷中央署警務課に移動。定年間近のベテラン刑事。心臓に持病。
・娘 はるかは駆け出しの弁護士。高城にとってはるかは恐ろしい存在。

野崎健生(たけお)
妻 詩織
健生の母親 満佐子

ビートテクの‘歩行アシストシステム’の開発担当。大日本技術総研会長にスカウトされてビートテク社に就職。野崎家の分家の人間。5年前多重追突事故現場から立ち去り行方不明に。
・詩織 港学園大学で米文学を教えている。
・満佐子は交通事故で車椅子生活。

新井琢郎 野崎健生の同僚。ビートテク社勤務。
野崎武博(39歳) ビートテク社の社長。会長の弟。野崎健生の分家の人間が自分の座を脅かすと恐れていた。
野崎清吾(65歳) 大日本技術総研会長。ビートテクの持ち株会社。武博の兄。
日向 ビートテク社総務部長。
住田貴章(たかあき) 住田製薬前会長。相談役。
日吉徳雄(84歳) 老人ホーム「桜園」の住人。
灰田 ビートテク社のライバル企業ハイダの社長。
(しの) 独立行政法人高度自律システム研究所総務部長。
長野威(たけし)

警視庁捜査一課の刑事、係長。高城と同期、事件を食べて生きている男。

物語の概要:(「本書」の紹介記事を参考に。)

 法月の置き土産の案件が現実に。5年前に交通事故現場から消えた男に関する調査を始めた直後、男が勤めていた会社で爆発事件が発生。犯行声明には失踪した男の署名が記されていた。

読後感

 先の「裂壊」の事件の後失踪課は閉塞ムード、仕事も無い状態。法月は失踪課から交通部に異動が決まり5年前の事案を高城に置き土産。今回、室長阿比留真弓のイメージは地に落ち、捜一に返り咲く望みはほぼ不可能に?

 そんな中、高城と明神愛美が情熱を注がせたのが5年前の失踪事件。現在でも注目されている介護支援ロボットの研究にまつわる話題を織り交ぜ、本家と分家のきしみ、技術者の生きがい、会社の隠蔽体質と切り口がひと味違う世界を取り入れて展開する。
 次々と犯人に振り回され一向に犯人や野崎の行方が掴めない。

 今回は捜査一課の長野がいつになく激しく被害者に当たる他、高城にとって5年前の失踪者が果たして見つかるのか、自分の方の綾奈が行方不明になって9年経つ事も有り、疑心暗鬼に陥っている。
 そんな中ラストで法月や明神愛美から綾奈を探す気になったら協力する旨打ち明けられ、この後の作品に続くのではと思われる。先だって公子からも「本件はちゃんとやらなくちゃ駄目よ」と発破を掛けられていた。そして果たして室長のその後の行動は?法月の後釜の田口英樹の出番は巡ってくるのか。

  

余談:

覚え書きとして警視庁失踪課・高城賢吾シリーズをリストアップしておく。
・第1弾  蝕罪   2009.2
・第2弾  相剋   2009.4
・第3弾  邂逅   2009.8
・第4弾  漂泊   2010.2
・第5弾  裂壊   2010.6
・第6弾  波紋   2011.2
・第7弾  遮断   2011.10
・第8弾  牽制   2012.12
・第9弾  闇夜   2013.3
・第10弾 献心    2013.6 

背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

戻る