堂場瞬一著 『敗者の嘘』
 アナザーフェイス2


 

              2016-03-25



(作品は、堂場瞬一著 『敗者の嘘』−アナザーフェイス2  文春文庫による。)

           
 

 初出  単行本は1989年1月 講談社より講談社ノベルとして刊行された作品。
 本書  1992年(平成4年)2月刊行。

 堂場瞬一:(本書より)

1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説の執筆をはじめる。2000年に「8年」で第13回小説すばる新人賞受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、「警視庁追跡捜査係」シリーズのほか、「神の領域 検事・城戸南」「約束の河」「標なき道」「長き雨の烙印」「断絶」「夜の終焉」「沈黙の檻」(中央公論新社)、「蒼の悔恨」「青の懺悔」「灰の旋律」(PHP研究所)、「棘の街」(幻冬舎)、「巨報」(文藝春秋)、「水を打つ」(実業之日本社)、「逸脱」(角川書店)など。

主な登場人物:


大友鉄(35歳)
妻 菜
(没)
息子 優斗
義母 矢島聖子

2年前妻を亡くし捜査一課から刑事総務課に。刑事特別捜査係主任、巡査部長。
テツの評価:被害者の心に壁を作らない、容疑者を警戒させない(福原の評価)。人に警戒心を与えないタイプ。
・優斗 小学2年(8歳)。
・矢島聖子 町田に住む菜獅フ母親。菜緒の死後困ったときは聖子が優斗を預かっている。
・畑野 同僚。

柴克志 捜査一課、大友鉄の同期。突っ走りタイプ。
高畑敦美 捜査共助課、巡査部長。大友と同期。取り調べ技術の確かさ。大柄。
福原聡介 刑事部特別指導官。刑事部のナンバースリー。大友鉄を捜査本部に手伝いとして送り込む。
神田署特捜本部

・岩永管理官捜査一課。警部補時代までは公安部所属。
・宇田 捜査一課、警部補。落としの宇田。
・上野 若手の刑事。

立川署

・矢内交通課課長
・森嶋亜樹 立川署に移動してきたばかり。

篠崎優

新神田弁護士事務所勤務、28歳。
・黒原所長。

沢登有香 東日新聞の女記者。粘りっこく鋭い。
渋谷博巳(ひろみ)

神田の放火殺人事件の容疑者。篠崎優とは中学、高校一緒。二号店(登山専門店)の店長。
渋谷の父親芳明はスポーツ用品店「シブタニスポーツ」の社長。神田に3つの大型店を持つ。
・有吉 二号店の副店長。

物語の概要: (本書の裏表紙に記載の文章より抜粋。)

 神保町で、強盗殺人事件が発生。任意捜査の最中に容疑者が自殺。翌日には真犯人を名乗る女弁護士が出頭。育児のため一線から外れた刑事総務課の大友鉄が加わるが・・・。

読後感
  

 この作品の前に読んでいた薬丸岳の「誓約」と違ってこのアナザーフェイスシリーズ第2弾の「敗者の嘘」、読んでいても主人公の大友鉄や同期の柴や高畑敦美、犯人として自首してきた弁護士の篠崎優、嫌われる相手の東日新聞記者沢登有香の人物に対して親しみのようなものが湧いてきて感情移入が起こり、物語の進展にも惹かれていってしまった。このシリーズ、もっと読んでみたくなる。
 さて、主人公の大友鉄の人物の魅力がとにかく相手を知らず知らずに素直にさせ、和ませ高畑敦美や沢登有香に言わせれば”無意識過剰”とまで。

 そのテツも息子の優斗に対しては全くの親ばかなくらい、義母の聖子には頭が上がらない苦手の女性。
 管理官の岩永に対しては言うことを聞きながらも自分の考えているように事を運ぶ。事件は特捜本部の方針とは違う方向で大友、柴、敦美の三人で行動する展開に。ときに役者を目指していたとばかりに変装したり、演技をしたりと随所で躍動する姿もたのしい。
 事件の真相は意外や意外と・・・。

  

余談:

久しぶりにミステリーの中でユーモアある描写に楽しめた。やはり張り詰めてばかりでなくほんわかな描写が入ってくるとほっとする。しかも三人(大友、柴、高畑)の同期コンビの活躍は息がぴったりでたのしい。 

背景画は、水をテーマに。

                    

                          

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