堂場瞬一 『 誤断 』



              2019-12-25


(作品は、堂場瞬一著 『 誤断 』    中央公論新社による。)
                  
          

  本書 2014年(平成26年)11月刊行。書き下ろし作品。

 堂場瞬一
(本書による)  

 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒。2000年秋「8年」にて第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、「汐灘」サーガの他、「Sの継承」「ラスト・コード」「共鳴」(以上小社刊)、「警視庁追跡捜査係」シリーズ(ハルキ文庫)、「アナザーフェイス」シリーズ(文春文庫)、「捜査一課・澤村慶司」(角川文庫)、「警視庁被害者支援課」シリーズ(講談社文庫)、「埋もれた牙」(講談社)、「警察回りの夏」(集英社)、「異境」(小学館文庫)、「内通者」(朝日新聞出版)などがある。

主な登場人物:

[長原製薬関係者] 同族経営の製薬会社。ここ10年赤字決算の不振に喘ぐ。外資系のユーロ・ヘルスとの合併話が浮上中。創業地は富士山が見える畑井市湊地区、当時は大企業で地元を潤していたが、本社を東京に移す。
槙田高弘(まきた)

3年前から広報部に勤務、31歳。入社以来総務畑出身。本家(長原一族)の遠い親戚筋に当たる。
副社長の特命事項で関節痛の鎮痛剤による副作用と思われる案件を担当することに。

安城隆雄(あんじょう) 副社長。実質会社を動かしている人物。
野分 槙田の上司に当たる広報部長。
濱野(はまの) 槙田の同期。営業部所属。槙田の相方に指名される。
長原幸喜(こうき)

先々代社長。畑井市(はたい)創業の地の当時社長。現在は引退し、畑井市湊地区に住む。個人筆頭株主。外部との付き合いほとんど絶っている。四人の息子が居る。
・長男 晴信 現社長。
・次男 専務。
・三男 芸術施行で今は高校の美術教諭。
・四男 紀博(のりひろ)アメリカで弁護士活動をしていたが、足が動かなくなり離婚、日本に戻ってくる。

長原晴信 2年前に就任した現社長。線の細い男。
高藤辰美(たかとう) 長原製薬の顧問弁護士。慢性的に膝の痛みを抱えている。
真島康二(まじま・こうじ) 畑井市湊病院の医師。高藤とは同じ中学、高校。東京の大学に進んでからは会うことなかったが・・。湊地区に住む住民の代表として長原製薬に渉外交渉で会いに行く。自身も最近膝痛発症。
宮本佳織(かおり) 高藤事務所に所属の弁護士。真島の訴訟の弁護士を引き受ける。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 自分が勤める製薬会社の製品が、死亡事故に関わっているという。調査を命じられた槙田は、自社製品の使用履歴を調べる。被害者家族の口を金で封じるという業務を任されるが、そこに過去の公害事件が再燃してきて…。

読後感:

 膝が痛み、やがて手足が痺れ、歩行困難となり、寝たきりに。最後は自発呼吸が出来なくなるという症状で40年前5人が死亡したが、当時湊地区にあった大企業の長原製薬はお金で住民を黙らせて公にならなかった。

 しかし、最近開発した商品を服用する関節痛の人間がホームから転落したり、地下鉄に飛び込む事案が発生、密かに調査する中で、湊地区で40年前と同様の症状が起きていることから湊地区代表として真島という人物が訴訟を持ち込まれた。

 作品は公害事件を起こした長原製薬の会社側。一方で訴訟を起こした側それぞれの側にある人物達の公害事件を巡る非常な戦いが展開する。
 その中で安城副社長に命を受けた若い広報部所属の槙田は会社側の立場と、片や社会人として会社のやり方が正しいのかと思い悩む。悩んだ末は会社の顧問弁護士の高藤に会社の秘密を漏らしてしまう。

 揺れ動く槙田は次第にどう生きるかを選択、安城副社長に宣告する。
 安城副社長は一方で、ここ10年しばしば赤字決算で不振の会社を外資系のユーロ・ヘルスとの合併話に今の公害問題を抱えていることを悟られることを恐れている。
 果たして対決の結末はどういう方向に向かうのか。最後まで分からない。


余談:

 今まで堂場作品を読んできたが、このような作品はなかったかな。今回は会社人間としても、一方で訴訟を起こす側の人間としてもそれぞれの言い分があり、事情があり槙田、安城、高藤それぞれの立場で物語が語られていて感情移入してしまう上手い作りになっている。
背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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