堂場瞬一著 『沈黙の檻』
 

 

 

              2016-07-25



(作品は、堂場瞬一著 『沈黙の檻』  中央公論新社による。)

           
 

  本書 2010年(平成22年)10月刊行。書き下ろし作品。

 堂場瞬一:(本書より)

 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説の執筆をはじめ、2000年に「8年」で第13回小説すばる新人賞受賞。主な著書に「夜の終焉」(上・下)「断絶」「長き雨の烙印」「神の領域 検事・城戸南」「約束の河」「? The Flame」「標なき道」(以上小社刊)、「逸脱」(角川書店)、「アナザーフェイス」「虚報」(共に文藝春秋)、「交錯 警視庁追跡捜査係」(角川春樹事務所)などがある。

主な登場人物:


氷室貴志(37歳)
<私>

春木署刑事課係長。1年半前は捜査一課在、望月課長とは同期。新木峠での事故について望月課長より、末松に聴取を指示され動き出す。
春木署

・刑事課 望月課長 同期。
・刑事課 富田刑事。部下。
・交通捜査 藤沼係長 同期。
・鑑識  須田係官。

県警本部

県庁所在地の笹原市にある。
・捜査一課 川村誠 同期。 17年前の末松事件を担当。

松崎 かっての氷室の上司。5年前に今は定年退職。17年前の事件時の担当班長。
末松有(たもつ)

新富運送の現社長。前島の週刊誌への告白記事により(?)、新木(あらき)峠で車を2回に渡り追突、崖から落とされる被害を受ける。
17年前の件については「ノーコメント」を続けている。末松を知る人は皆人望をたたえている。

羽鳥学 新富運送の専務。末松とは30年来の仲。末松は人殺しなどしないと。
杉沢武則(27歳) 新富運送前社長(杉沢ェ 創業者)の息子。末松社長に恩義を感じ心酔。
大元美絵 新富運送で経理を担当。杉沢武則の恋人。付き合って2年。
前島竜司(50歳)

末松有とは中学迄の同級生。時効になり17年前の事件のことを週刊誌に殺人を告白、主犯は末松で自分は手伝いと。
激しい性格、筋金入りの犯罪者。

高井真由子 食事処の主。私生活は謎。
大神莉子 地元紙 春木支局の記者。
福田登紀子 NPO法人“育成会”笹原支部事務局長理事。末松から年200万、8年間寄付有り。無実を照明して欲しいと。
新富運送を退社した従業員 ・広田貢
・高村若菜 

末松事件の補足:17年前春木市で起きた新富運送創業者杉沢ェ社長(39歳)殺人事件。主犯は末松有と疑われるも、確証がなく2年前に時効を迎える。末松はその後新富運送社長を引き継ぎ再建に奔走。被害者の子供杉沢武則は当時10歳。今は新富運送で働いている。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

時効。罰は逃れても、罪は消えない。殺人犯かもしれない男と彼を護り、信じる刑事。時効事案を挟み対峙する2人の傍で、新たな殺人が起きる…。書き下ろし長編ミステリー。堂場瞬一の新境地。

読後感
  

 物語の展開はいかにも著者らしい軽快な描写で進んでいき読者を飽きさせない。時に心情を語り合い、時にほっとする場面があったり。
 警察の犯人を決めつけて進む体質に反発を覚え、容疑者との気のあったつながりを果たしてすっきりと晴らすことが出来るのか。

 17年前の事件の犯人は末松と警察では認識しているも、確証が得られず時効を迎える。そして2年後、前島という刑務所帰りの人物が週刊誌に自分が犯人のひとりで主犯は末松と告白。
 騒ぎになった新富運送はピンチに追い込まれる。一方末松社長はその件に関しては「ノーコメント」を貫き様々な憶測を呼び起こす。
 前社長の息子杉沢武則は当時10歳、末松は息子の支援をし、会社に雇って自分の息子のように扱う。

 氷室はそんな末松社長の人柄に次第に惹かれながら真実を掴もうと同期の望月課長と反目しながら捜査を続ける。
 ラストは当然のように犯人は明らかになるが、その後のシナリオは?
 恐らく「相棒」の杉下右京だったら間違いなく別の結果になっていただろうと。

  

余談:

 著者の作品にシリーズ物が多数あるが、先に読んだ「共鳴」といい、今回の「沈黙の檻」といい新しい視点での作品も結構面白い。現在の世の中の風情や課題をテーマに展開する小説は身近なものだけに感情移入しやすくなりやすいが、そんな中ユーモアであったり、料理のことであったり、病気のことであったり参考になるものを見つけると結構嬉しいものである。  
背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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