堂場瞬一著 
    『アナザーフェイス』








                2016-02-25


(作品は、堂場瞬一著 『アナザーフェイス』      文春文庫による。)

         

 本書 2010年(平成22年)7月刊行、書き下ろし作品。

 堂場瞬一:(「灰の旋律」よる)

1963年生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年秋「8年」にて第13回小説すばる新人賞を受賞。主な作品に、「久遠」(上・下)「断絶」(以上、中央公論新社)、「青の悔恨」「BOSS」「天空の祝宴」(以上、PHP研究所)など多数。

物語の概要:(本書に記載の紹介文より)

警視庁刑事総務課に勤める大友鉄は、息子と二人暮らし。捜査一課に在籍していたが、育児との両立のため移動を志願して二年が経った。そこに、銀行員の息子が誘拐される事件が発生。元上司の福原は彼のある能力を生かすべく、特捜本部に彼を投入するが・・・。

主な登場人物:

大友鉄(35歳)
妻 菜氏i没)
息子 優斗
義母 矢島聖子
2年前妻を亡くし捜査一課から刑事総務課に。刑事特別捜査係主任、巡査部長。
テツの評価:被害者の心に壁を作らない、容疑者を警戒させない(福原の評価)。人に警戒心を与えないタイプ(森嶋の評価)。
・優斗 小学2年(8歳)。
・矢島聖子 町田に住む菜獅フ母親。菜緒の死後困ったときは聖子が優斗を預かっている。
・畑野 同僚。
柴克志 捜査一課、大友鉄の同期。
武本一郎 捜査二課、大友鉄の同期。
福原聡介 刑事部特別指導官。刑事部のナンバースリー。大友鉄を捜査本部に手伝いとして送り込む。
目黒署の捜査本部 内?貴也誘拐事件の捜査本部。
・牛山管理官(指揮官)
・杵渕 一課特殊班係長
・森嶋亜樹 一番若くみえる刑事、30歳。
内?貴義
妻 瑞希
息子 貴也
首都銀行渋谷支店貸付け係長。
・貴也 (6歳) 誘拐事件の被害者。
藤見響子 救い出された貴也を見た主治医。170cmの長身、たくましさを備えた骨太のプロモーション。整った細身の顔。
読後感

 主人公は妻を2年前に交通事故で亡くし、息子の優斗(小学2年生)を育てるため捜査一課から刑事総務課に移動、定刻出勤、定時退社で過ごすという刑事物としては異例の設定。人柄も容疑者に対しても壁を感じさせない、とらえどころのない変人。

 学生時代は芝居をやっていたことも役を演じたり、相手の台詞を記憶する能力にも長けている。そんな人間を子供の誘拐事件の特別捜査本部にかって大友の上司の福原が手伝いと称して送り込む。
 捜査に当たって大友の同期との遠慮の無い言い合いや、協力も得ながら、事件の真相に迫っていく。

 子持ちという点を生かし、貴也の事情聴取に信頼関係を築きながら当たる。
 相手をおもんばかる配慮といい、時に演技を交えながら相手との駆け引きをはかる様子に読者は感情移入する。
 堂場警察小説史上、最も刑事らしくない刑事が登場と記される本のバックの文が言い得ている。

余談:

 堂場瞬一のアナザーフェイスのシリーズ(文春文庫から)
   ・アナザーフェイス(2010.7)
   ・敗者の嘘(2011.3)
   ・第四の壁(2011.12)
   ・消失者(2012.11)
   ・凍る炎(2013.12)
   ・親子の肖像(2014.10)
   ・高速の罠(2015.3)

背景画は作品中に出てくる首都銀行(フォトのものとは無関係)の標識を利用して。  

                    

                          

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