ドストエフスキー著 『罪と罰』
                        亀山郁夫訳





              
2009-03-25



(作品は、ドストエフスキー著亀山郁夫訳 『 罪と罰 』光文社文庫 による。)


         
               
 

本書 2008年(平成20年)10月刊行。


 

主な登場人物:

ラスコーリニコフ
(愛称:ロージャ)
正式名:
ロジオーン・ロマノヴィチ・ラスコリーニコフ

法学を専攻するが、学費滞納で大学から除籍の元大学生。ペテルブルグの粗末なアパートに住み、金貸しの老女殺害を犯す。

プリヘーリャ

ラスコーリニコフの母親。故郷で年金暮らしをしながら、息子に絶えず気を配る。

アヴドーチャ
(愛称:ドゥーニャ)

ラスコーリニコフの妹。美しく芯が強い果敢な女性。
マルメラードフ 居酒屋でラスコーリニコフと知り合う、飲んだくれの元役人。
カテリーナ マルメラードフの後妻、良家出身で気位が高い。極貧と病気に喘ぐ。
ソーニャ
(愛称:ソフィア?)
マルメラードフの前妻との子供。一家を救うため娼婦になる。
ラズミーヒン

ラスコーリニコフの友人。学費滞納のため大学は除籍の元大学生。気のいい若者。

ゾシーモフ ラズミーヒンの友人、お洒落好きで裕福な医者。
ナスターシャ プラスコーヴィヤの下宿の女中・料理人。ラスコーリニコフの世話を焼く。
ルージン ドゥーニャの婚約者。ペテルブルグに出てきた法律関係の七等文官。
レベジャートニコフ 役人、空想社会主義者の青年。ペテルブルグでルージンを間借りさせる。ルージンが卑劣な手でソフィアを陥れようとした時、ルージンに反旗を翻す。
ニコジーム・フォミーチ ラスコーリニコフが住む区の警察署署長。
イリヤ・ベトローヴィチ 同じ警察署の副署長。「火薬中尉」とあだ名される激情的な正義漢。
ザメートフ 同じ警察署の事務官、ラスコーリニコフの借金の件で事情聴取に当たる。
ポルフィーリー 予審判事、ラズミーヒンの縁戚で、ゾシーモフとも関わりがある。
アリョーナ・イワーノヴナ 金貸しの老女(ラスコーリニコフに殺される)。妹のリザヴェータと共に住む。
リザヴェータ 金貸しの老女アリョーナの義理の妹、小売商を営む。
ミコールカ(=ミコライ) ペンキ職人。
アルカージー・スヴィドリガイロフ

ラスコーリニコフの故郷の「紳士」、ドゥーニャを追い続ける。
第2巻で謎の人物としてラスコーリニコフに「幽霊を信じますか」と問いかける。ドゥーニャにラスコーリニコフの秘密を握っていると詰め寄る。

マルファ スヴィドリガイロフの妻、謎の死をとげる。


物語の概要:
 
 
その年、ペテルブルグの夏は長く暑かった。 大学もやめ、ぎりぎりの貧乏暮らしの青年に郷里の家族の期待と犠牲が重くのしかかる。 この悲惨な境遇から脱出しようと、彼はある「計画」を決行するが…。 世界文学に新しいページをひらいた傑作。 


読後感:
 

 第1巻での金貸しの老女アリョーナの殺人、さらに不意に現れた義理の妹までも斧で殺してしまう場面は恐ろしい。その後主人公のラスコーリニコフの熱病にうなされたり、幻覚を見たり、心気症の様相を見せ、警察に対する心の移ろい、相手が疑っていないというのに、罠にはまらないかと疑ったり、とにかく自然でおれない心変わりが罪を犯した人間の心の安らぎがない様子を現している。

 一方でマルメラードフ(飲んだくれの元役人)の話を聞き、貧しいカテリーナやソーニャに持っている全てのお金を施すという理解に苦しむ様な行動に出る。

 主人公の罪の意識が果たしてどのようなものなのか、なかなか読んでいても判らない。

 第2巻に出てくるヨハネによる福音書「ラザロの復活」の話、主人公がソーニャに朗読させ、その後「ぼくらふたりとも呪われた者同士」と「もし明日ここに来れたらリザヴェータ(ソーニャの親しい友?)を殺したのはだれか君に言うね」という、その辺の心理はよく分からない。

 殺人事件の犯人がどのように捕まるかの興味もある。関係のないペンキ職人が自分が殺しましたと予審判事のポルフィーリーにラスコーリニコフが居るところで白状し、いずれ嘘であることが判るので何か手を打っておかなければと主人公が考える。(第2巻)

 はたしてラスコーリニコフは犯人であることにしらを切り通すことが出来るのか?

 そのほかにもルージンと3人(ラスコーリニコフ、母親、妹)の妹の婚約に対する対峙、謎の人物スヴィドリガイロフとラスコーリニコフとの対決、スヴィドリガイロフが妹のドウーニャを脅す場面、予審判事のポリフィリーとラスコーリニコフの対峙、ソフィーヤをルージンが罠にはめて脅す場面などその場面場面の描写には引き込まれてしまう。

 そしてラスコーリニコフが最後にどのようになるのか、救われるのか最後のエピローグへと導かれる。


   


余談1:
 この文庫本「罪と罰」でも亀山郁夫の読者ガイドがこと細かく解説されていて、大いに参考になった。 こんなに深く理解するには相当この作品を読み込まないと一回さらっと読んだくらいでは理解するのに及ばない。 やはり何回も時を置いて読む必要がありそうである。

余談2:
 シベリア送りになるラスコーリニコフにソフィアが付きそう所は、先に皆川博子の「冬の旅」を読んでいてその辺の状況を理解していたのですんなりと受け入れられてよかったよかった。
 

          背景画はNHK教育テレビで放送の亀山郁夫氏によるロシア文学「罪と罰」紹介の場面を利用。



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