物語の概要:
その年、ペテルブルグの夏は長く暑かった。 大学もやめ、ぎりぎりの貧乏暮らしの青年に郷里の家族の期待と犠牲が重くのしかかる。 この悲惨な境遇から脱出しようと、彼はある「計画」を決行するが…。 世界文学に新しいページをひらいた傑作。
読後感:
第1巻での金貸しの老女アリョーナの殺人、さらに不意に現れた義理の妹までも斧で殺してしまう場面は恐ろしい。その後主人公のラスコーリニコフの熱病にうなされたり、幻覚を見たり、心気症の様相を見せ、警察に対する心の移ろい、相手が疑っていないというのに、罠にはまらないかと疑ったり、とにかく自然でおれない心変わりが罪を犯した人間の心の安らぎがない様子を現している。
一方でマルメラードフ(飲んだくれの元役人)の話を聞き、貧しいカテリーナやソーニャに持っている全てのお金を施すという理解に苦しむ様な行動に出る。
主人公の罪の意識が果たしてどのようなものなのか、なかなか読んでいても判らない。
第2巻に出てくるヨハネによる福音書「ラザロの復活」の話、主人公がソーニャに朗読させ、その後「ぼくらふたりとも呪われた者同士」と「もし明日ここに来れたらリザヴェータ(ソーニャの親しい友?)を殺したのはだれか君に言うね」という、その辺の心理はよく分からない。
殺人事件の犯人がどのように捕まるかの興味もある。関係のないペンキ職人が自分が殺しましたと予審判事のポルフィーリーにラスコーリニコフが居るところで白状し、いずれ嘘であることが判るので何か手を打っておかなければと主人公が考える。(第2巻)
はたしてラスコーリニコフは犯人であることにしらを切り通すことが出来るのか?
そのほかにもルージンと3人(ラスコーリニコフ、母親、妹)の妹の婚約に対する対峙、謎の人物スヴィドリガイロフとラスコーリニコフとの対決、スヴィドリガイロフが妹のドウーニャを脅す場面、予審判事のポリフィリーとラスコーリニコフの対峙、ソフィーヤをルージンが罠にはめて脅す場面などその場面場面の描写には引き込まれてしまう。
そしてラスコーリニコフが最後にどのようになるのか、救われるのか最後のエピローグへと導かれる。
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