大門剛明 『氷の秒針』


              2019-11-25


(作品は、大門剛明著 『氷の秒針』    双葉社による。)
                  
          

 初出 「小説推理」2011年7月号〜2012年3月号。
 本書 2012年(平成24年)6月刊行。

 大門剛明
(だいもん・たけあき)(本書より) 

 1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。2009年「雪冤」で第29回横溝正史ミステリ大賞及びテレビ東京賞をW受賞。以後次々と新作を発表し、社会派ミステリーの新星として注目を浴びる。他の著作に「罪火」「確信犯」「共同正犯」「告解者」および「有罪弁護 負け弁・深町代言」などの深町代言シリーズがある。 

主な登場人物:

寺山力(ちから) 元長野県警の刑事。15年前、小岩井事件、下諏訪事件を担当。退職後も容疑者を追っている、60過ぎ。

平田弘務(ひろむ)
娘 ひかり

松本署の刑事、警部補44歳。妻とは離婚、娘のひかりは父親を選んだ。寺山の後輩。
・ひかり 最近は反抗期か父親と心が通い合わない。百瀬悠希と付き合っている模様。

上條秀樹 松本署の刑事、巡査長29歳。平田の部下。

鮎沢誠二

松本市内で宝石商を営む、57歳。小岩井事件の犯人とみられたが起訴されず。寺山が執拗に自首を促していた。
小岩井(こいわい)

松本市内平成7年2月11日自動車修理会社社長宅での一家三人撲殺事件で助かった姉。以降殺人罪の控訴持効制度撤廃に向け被害者遺族会「いのちの会」の幹部として活動。
当時のショックで精神が不安定になっていたが、長い時間かけ社会復帰。

原村俊介
義父 芳郎
(よしろう)

下諏訪の俊介の妻(美穂子当時25歳 )が平成7年5月19日殺害される。原村時計店の2代目。一級時計修理士。旧姓小口。
・芳郎 美穂子は娘。父親を亡くした俊介を弟子として受け入れ、店を継がせる。

百瀬拓一
妻 奈留美
息子 悠希

百瀬計器の会社社長。寺山は百瀬が犯人と見込み自首説得に奔走。
・奈留美 実家は産婦人科の娘。自身看護師。
・悠希 札付きの悪。警察の補導繰り返す。

上川菜々子 百瀬計器の顧問弁護士。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 一家惨殺と主婦殺害の2つの事件。両事件の遺族が、捜査によって結びつき、揺らぐ思いを交錯させる。横溝正史ミステリ大賞出身、社会派で注目の著者が、「奪われた者の怒りと苦しみ」に迫る劇的ミステリー。

読後感:

 時効制度廃止の法案が成立した前後で、2つの殺人事件の犯人には明暗が。
 一つは松本市の小岩井社長一家三人の撲殺事件。犯人は鮎沢誠二と目されていたが、証拠不十分で起訴は見送られ、時効成立を待って自首。
 もう一つは小岩井殺人事件の3ヶ月後にあった下諏訪での原村美穂子(当時25歳)の絞殺事件は時効廃止の案件。犯人は百瀬拓一と目されている。

 この二つの事件を中心に被害者遺族を結びつける展開で、被害者は犯人への憎しみと共に、失った相手への思いに疑心を募らせ、揺れ動く心理と、犯人のことを調べていく内に、次第に事の真相が明らかになっていく。
 刑事を退職しても執拗に二つの事件を追う寺山にも隠されていた秘密があった。憎むべき犯人のことを調べるが、小岩井薫の「私は人殺しです」と告白する被害者にも忸怩たる悩みがあった。

 事件はさらに自首をした鮎沢誠二が殺される殺人事件が起きてしまう。
 この犯人捜しにも興味が湧く。そんなことで物語はどんな展開に落ち着くのか、読者は最後までグイグイと引き込まれていく。


余談:
 
 著者の作品は先に「雪冤」で読んだので、期待をして手にした作品である。期待通り。なかなか面白く読めた。
背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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