本書　２０１９年（平成３１年）１月刊行。書き下ろし作品。

　大門剛明（だいもん・たけあき）：（本書による）　　

　1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒業。第29回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をダブル受賞した「雪冤」で2009年にデビュー、ドラマ化される。主な著書に「反撃のスイッチ」（講談社文庫）「告解者」「婚活探偵」「優しき共犯者」などがある。「テミスの求刑」「獄（ひとや）の棘」など映像化作品も多い。

主な登場人物：

補足）「綾川（あやがわ）事件」：21年前に起きた少女誘拐殺人事件。当時この他に高木悠花ちゃん7歳の失踪、松岡千紗当時8歳の誘拐事件が発生していた。

物語の概要：（図書館の紹介記事より。）

　２１年前の少女誘拐殺人事件の冤罪再審裁判に抜擢された期待の女性弁護士・松岡千紗。しかし、千紗はその事件で監禁された少女の１人だった。間一髪で自分を殺めたかも知れない容疑者に千紗は敢然と対峙する。慟哭の「冤罪」ミステリー。

読後感：

　弁護士になって2年の若い女弁護士の活躍。フェアトン法律事務所のトップ真山から、21年前の少女誘拐殺人事件「綾川事件」の再審請求の担当を引き受けた真の理由は、綾川事件当時、3件の誘拐事案が発生しており、しかもその中のひとつは、自身が誘拐され、逃げ出した経験を有し、自ら犯人を突き止めたいとの思いからだった。
　この21年間、悪夢として怪物から逃げ出す事象が今も続いて、叫び声を上げ目覚めるという。

　物語は当初無罪を主張していた平山が一転、自白をし、裁判で無実を主張したが、無期懲役で服役している。そんな中どのような主張をして再審請求を勝ち取ったか。
　一方、警察を退職した当時担当の有森義男は、取り調べの方法にまずい点を認めつつも、平山以外犯人はいないとの確信から、突き進んだ結果、再審裁判での証人尋問で、当時一緒に担当した今井の裏切りで、暴露され、警察は世間からバッシングを受けることに。

　物語は千紗の立場からと、有森の立場からの二面から、本当の犯人は誰なのか？ 平山は本当に犯人ではないのかが展開していく。
　謎の電話の主の存在が出てきて、一体犯人は誰なのか、平山は本当に犯人ではないのかと最後まで分からないまま結末へと読者は引き込まれていく。

　平山と千紗の、本音で話し、嘘をつかないという約束は果たしてそうだったのか。
　平山は本当に犯人ではないのか。有森の元刑事としての正義はどうなるのか。
　予断を許さず物語が進行し、読者は結末を予測できないで引き込まれてしまう。