芦沢央著 『悪いものが、来ませんように』








              2019-02-25

(作品は、芦沢央著 『悪いものが、来ませんように』  角川文庫による。)
          

  初出 2013年8月 角川文庫より単行本として刊行したものを加筆修正。
  本書 2016年(平成28年)8月刊行。

 芦沢央
(あしざわ よう)(本書より)
 
 1984年東京都出身。2006年千葉大学文学部史学科卒業。12年「罪の余白」で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞してデビュー。同作が15年に映画化されて話題に。他の著書に「今だけのあの子」「いつかの人質」「許されようとは思いません」。 
    

主な登場人物:

柏木奈津子
(旧姓 長谷川)
夫 貴雄
奈津子の母親 幸代

美容学校に通っていたが美容院で働いた経験無し。利口でしっかり者だが、まわりとは交わらない性格。小さい頃ピアニストになりたいと、テレビにも出たことがある。
・母親の幸子、お嬢さん育ち、父親(大工)が仕事中の事故で亡くなり、自ら化粧品の外交員で働く必要に。でも働くことが向いてなかった。

庵原紗英(いはら・さえ)
夫 大志
(だいし)

鞠絵の姉。中津川助産院の看護助手(助産師の資格なし)。子供が好きなのに不妊に、そして夫の浮気に悩む。
母親のことを”なっちゃん”と呼び、何でもなっちゃんに頼りきり。
・夫の大志 常磐銀行水戸死手本店勤務。浮気相手に赤ん坊が。

坂井鞠絵(まりえ)
娘 梨里(幼稚園児)

紗英の妹。中津川助産院の助産師。中津川助産院での評判良いが、姉の紗英はどんくさい。
中津川久美 中津川助産院の院長。
沢野亜矢子 中津川助産院の患者。紗英にクレームを付けている。
山本祐司の証言 高一の時の紗英の同級生。付き合ったの半年ほど。別れた理由「育ちが悪い」と言われた。それもなっちゃんがそう言ってたと。
宮野靖子の証言 奈津子の母親(幸子)のこと、世間知らずのお嬢様育ち、大工の父親が事故で亡くなり、幸子が化粧品の外交員で働く。
山部由香子の証言 長谷川(柏木の旧姓)奈津子の美容学校でのクラスメイト。家庭におさまるタイプには思えなかった。
庵原和子の証言 庵原大志の母親。紗英との結婚、最初から反対。
大志の浮気は男の甲斐性と。
黒川敦美(あつみ)の証言 紗英のこと、父親のコネで4年ほど新聞社に勤務し、退職して中津川助産院に。敦美が入社時3年先輩だったが紗英の評判は芳しくなかった。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 子どもにめぐまれず悶々とした日々を送る紗英、子育て中の奈津子。誰よりも気の合うふたりを襲った事件とは…。『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞した、気鋭の新人が放つ心理サスペンス。          

読後感:

 読み始めてからずっと奈津子、紗英、鞠絵の関係が良く理解できなかった。紗絵と鞠絵は姉妹であることは分かったが、但し中津川助産院で働く妹の鞠絵は助産師の資格を持っていて、中津川院長からも信頼を得ているのに対し、一応彼女からの口利きで採用した姉の紗英は評判倒れ。

 紗絵となっちゃんの関係は終盤になって母親と娘であることが分かったが、そんな関係を知ってから、紗英の夫大志殺しがらみの犯人がだれ?というミステリーがこの小説の目玉となる。
 
 奈津子が母親であること、その奈津子の母親幸代による子育ての反面教育のようなものが底流にあって、子供を愛している感情が強く、大志殺しに強く関わっているかに思えるのだが、紗英の線も捨てきれない。親子の関係、姉妹の関係の妙味、知られたくないことを知られたらと心が揺れ動く不安からくる心理サスペンスに読者は惑わされる。
 

余談:

 初めての著者の作品なのでネットで調べていたら、芦沢央のツィッターにぶつかった。野性時代フロンティア文学賞の審査委員に山本文緒の名前とツィッターのやり取りがあり、自分でも関心のある作家の山本文緒の名に嬉しくなる。
 さらに文学賞を目指す作家さん達の様子が垣間見れて楽しい。
     

背景画は、花をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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