芦沢央著 『罪の余白』



              2019-05-25

(作品は、芦沢央著 『罪の余白』   角川文庫による。)

          

 初出  2012年8月に刊行された単行本を修正の上文庫化。
 本書 2015年(平成27年)4月刊行。

 芦沢央(あしざわ よう)
(本書より)
 
 1984年東京都出身。2006年千葉大学文学部史学科卒業。12年本作で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞してデビュー。他の著書に「悪いものが、来ませんように」「今だけのあの子」。

主な登場人物:

安藤加奈
父親 聡
(さとし)
母親 真理子(没)

弱音を吐かない優しい子。木場咲を頂点に新海真帆、加奈の三人組のグループを構成。学校の4階から転落死。いじめ?、自殺?
・父親の聡 半年前他の大学から転籍、33歳でようやく講師に。専門は動物行動心理学の心理学者。
妻と娘を亡くし、生きる気力無い状態。リストカットの跡も。
・母親の真理子 加奈が8歳の頃、がんで2年半の闘病の末死亡。 加奈を妊娠した時、がんが見つかったが、治療より産むことを優先させたことが影響?

<加奈の友達など> 創律女子学院高校
木場咲 小さい頃から可愛いと言われることに慣れ、芸能界入りを望む母親からは反対されている。クラスでヒエラルキー上位の目立つ子。
新海真帆 ヒエラルキー下から二番目当たり、咲のアドバイスで普通の可愛い子に変身。咲は真帆にとって憧れの人。咲が加奈のことも褒めるの不満。
笹川七緒 加奈と同じクラスのクリスチャン。空気を読むこともなく、いつも一人でいて休み時間には机で聖書を読んでいる。
岩崎希恵 担任の教師。
小沢早苗 29歳にして助教授に就任の、心理学を志している。対人関係が苦手だが、とにかく関心がある事への造詣は深い。安藤聡の義母(真理子の母親)からたまにでいいから聡の様子を見に行ってくれと頼まれている。
間宮恭子(きょうこ) 中学時代の毎年恒例の教育実習生。咲たちのクラスに。そこでの生徒達の反応は「今年の教育実習生は外れだね」と。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 高校のベランダから転落した加奈の死を、父親の安藤は受け止められずにいた。クラスメートだった少女の協力で娘の悩みを知った時、償いを求める戦いが始まった…。
〈受賞情報〉野性時代フロンティア文学賞(第3回)
            

読後感:

 妻を若くして亡くし、そして残る娘の加奈までも自殺?とも分からないが学校の教室の手すりから転落死の報に、自らの生きがいをなくしてしまう父親の安藤聡。
 一方学校ではよくある、皆がどこかのグループに属して食事時とかに机を寄せて仲間だけの世界にふけるも、そのグループの中では自分がトイレに行っている間に自分の悪口を言われて仲間はずれにされないかと顔色を窺う新海真帆のような疑心暗鬼と、咲は自分だけの親友との思いから加奈を嫌っている。咲もうわべは加奈には見せないが嫌っている状況。

 そして小沢早苗の存在。人とのコミュニケーションを取ることが苦手、自分はどこかおかしいのかも知れないと思い、色々検査をするも結果は陰性。心理学にのめり込んだのは納得できる理由が欲しかった。そんな人物と安藤聡の様子を見るように頼まれての好意的接触で巻き起こる出来事が展開する。

 著者はさらに安藤聡が加奈の苦しみを感じ取れなかったことへの苦悩と、何故加奈が殺されなければならなかったのかから、パソコンに残された日記を見つけ、犯人に復讐することを計画する。
 それらのことがミステリーとして伏線をちりばめ、心理的仕掛けも加味されて展開する。
 ラストで加奈の亡くなった要因が明かされているが色んな意味合いが含まれている作品であった。 

余談:

 この作品に登場する木崎咲なる女学生のモンスターぶりが凄い。
 咲と真帆が加奈に対してのいじめが原因で転落死させてしまった(?)ことを確かめるため名前を偽って焼香させてもらいに行き、日記を残していなかったかを確認したり、相方の真帆がいなくなればいじめは誰も知らない(それ位仲良しグループであったと思わせることが出来る)ことにとなる。そうすれば自分が芸能界に入り有名になっても過去の噂で足を引っ張られることもないと考えて。恐ろしい。
        

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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