本書 2017年(平成29年)4月刊行。書き下ろし作品。 芦沢央(あしざわ・よう):(「いつかの人質」より) 1984年東京生まれ。千葉大学文学部卒業。2012年「罪の余白」で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。他の著書に「悪いものが、来ませんように」「今だけのあの子」「いつかの人質」「許されようとは思いません」「雨利終活写真館」がある。
主な登場人物:
石田繭子(まゆこ) 夫 旭(あきら) 息子 航太(こうた)
帝王切開で産んだ赤ン坊、隣の郁絵の赤ん坊のネームタグを取り違えて付けたことから、罪意識に間違いを告げようとするも実際の行動は・・・。 ・夫は国際線のパイロット(副操縦士)。 ・航太 引っ込み思案で人見知り、二年保育で、3才迄家で繭子に育てられる。
繭子が幼い頃小学校の先生。放置自転車の使用が元で警察の聴取を受け、減給、教育委員会の呼び出しなどで体調壊し、休職。 その頃から変わってしまう。
平野郁絵(いくえ) 夫 哲平 息子 璃空(りく)
繭子と同じ日に生まれた赤ん坊、繭子の赤ん坊と取り違えられたことを知らずに・・・。 ・夫は会社勤め。 郁絵が元彼と浮気の噂を聞き、璃空とのDNA鑑定を行い<生物学上の親子でない>との報告を突きつける。 ・璃空 3才で保育園に。絵本好き、しっかりしている。
物語の概要:(図書館の紹介記事より。) 自ら産んだ子を自らの手で「取り替え」た、繭子。常に発覚に怯えながらも、息子・航太への愛情が深まる。一方、郁絵は「取り違えられた」子と知らず、息子・璃空を愛情深く育ててきた。それぞれの子が4歳を過ぎたころ、「取り違え」が発覚し…。 読後感: 赤ん坊の取り違えを巡り、育児室でネームタグの取り違えを行ってしまったしまった石田繭子が、報告することを次々と意に反して出来なかったことで起こる後悔。 時間が経つに従い子どもの航太に対する愛おしさが大きくなるに従って、親に似ていないことへの不安が募る。その心情を第一章では描かれる。 一方、我が子として育てている平野郁恵の方は、それとは知らず、喜びいっぱい、保育士としての経験もあるも、母親として子どもを育てることの難しさを感じている。 そして苦難が押し寄せる。夫が妻の浮気の噂を知り、子どもとの親子鑑定をしたことで真の親子でないことを知る。璃空(りく)が4歳の時のこと。 第二章では、知ってからの郁絵の母親としての璃空との接し方、繭子の側の子ども(航太)との接し方、交換するか否かの選択を迫られる姿が描かれる。 著者は一体どのような結論を迎えさせようとしているのか、読者は両家族の心情を理解しつつも、興味深く見守ることに。