芦沢央 『バック・ステージ』


              2019-11-25


(作品は、芦沢央著 『バック・ステージ』    角川書店による。)
                  
          

 初出 「序幕」          書き下ろし
   「息子の親友」       小説 野性時代2013年7月号
   「始まるまで、あと五分」  小説 野性時代2013年10月号
   「舞台裏の覚悟」      小説 野性時代2015年10月号
   「千賀稚子にはかなわない」 小説 野性時代2016年11月号
   「終幕」          書き下ろし

 本書 2014年(平成26年)9月刊行。

 芦沢央
(あしざわ・よう)(本書より) 
 
  1984年生まれ。千葉大学文学部卒。出版社勤務を経て、2012年「罪の余白」で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。同作が15年に映画化。他の著書に「悪いものが、来ませんように」「今だけのあの子」「いつかの人質」「許されようとは思いません」「雨利終活写真館」「貘の耳たぶ」がある。

主な登場人物:

[序幕]、[終幕]

松尾
<私>

玉ノ井と同じく新入社員。先輩の康子さんが苦手。康子さんから、澤口のループ企画からキックバックを受け取っている証拠探しに巻き込まれる。
後藤康子(やすこ) とらえどころのない存在。大学時代から劇団に入っている。嶋田ソウにオーディションで落とされた経験あり。

澤口
子供 留衣
(るい)
   萌奈美
(もなみ)

Pエイジェンシーで営業成績上げていて、社長のお気に入り、4月に昇進の次長。忘れっぽいが企画力とか優れる。
・留衣 10歳。東中野中央小学校に通っている。
・萌奈美 4歳。保育園に留衣が迎えに行く。

玉ノ井愛美(まなみ) 澤口の部下、今年の4月の新入社員。澤口のこと「厳しいけどできる人」と思っている。
嶋田ソウ 人気の演出家。
[第一幕] 息子の親友

望(のぞみ)
子供 浩輝
(ひろき)
   颯太
(そうた)

夫と離婚のシングルマザー。夫は「おまえといると疲れるんだよ」と結婚前の言葉と真逆の言葉を。
・浩輝 滑り止めに受験した私立の小学校に。外で遊ぶより本が好き。
・颯太 離婚で保育園から5歳児クラスの保育園に転入。園の人気者に。夫に似ている。

友達

・慎也 サッカー上手く、頭もいい。みんなの人気者。
・悠馬(ゆうま) 慎也と仲がいい。

[第二幕] 始まるまで、あと5分
奥田 中学時代サッカー部の部長。
顔がかっこいいということで女子にそこそこ人気。
伊藤

二ヶ月前高田馬場の書店で奥田と再会。趣味が一緒で度々会うことに。中学で同学年。当時伊藤姓3人居た。
・伊藤みのり かっこよく可愛い。3年間無遅刻・無欠席ただ一人。
・伊藤祥子 優等生。
・伊藤裕也 バスケ部のキャプテン。一番人気。

[第三幕] 舞台裏の覚悟
川合春真(はるま) 無名の役者。嶋田ソウの舞台で陰の主役ともいえるキーパーソン。
他に舞台の出演者

・千賀稚子(ちが わかこ) ベテラン女優。
・円居孝治(まどい)大物実力派俳優。
・新里茜 新進気鋭。
・池田慎平 アイドルグループ「ミニッツ5」。
・坂城れな(さかき) 茜と年同じ。プライベートでもよく遊んでいる若手女優。「あたしなんかチョイ役」と繰り返している。

嶋田ソウ 舞台演出家、40代半ば。厳しい指導で有名。
[第四幕] 千賀稚子にはかなわない
千賀稚子(ちが・わかこ) ベテラン女優、74歳。認知症の症状が出始めたの半年ほど前。
信田篤子
(しのだ・あつこ)

千賀稚子の長年のマネージャー、57歳。
芸能事務所山部プロダクションマネージャーとタレントである以前に、時に親友であり、時には母娘であった。
稚子の痴呆のこと嶋田には話したが、周囲には知られたくない。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 新入社員の松尾は、先輩の康子がパワハラ上司の不正の証拠を探している場面に遭遇し、そのまま片棒を担がされることになる。翌日、中野の劇場では松尾たちの会社がプロモーションする舞台が始まろうとしていた。その周辺で4つの事件が発生し…。

読後感:

 短編集かと思いきや、そうでもなく[第一幕]、[第二幕]では別の話だが、[序幕]から[第三幕][第四幕]では嶋田ソウ演出の舞台がらみの内容で、ミステリー仕立ての展開になっている。
[第二幕]の”息子の親友”がなんだか身近な問題と感じてしまったが。ただ難点は、特に[序幕]と[第一幕]の最初の方の導入部分は人物の関係がなんだか判らず、登場人物と関係をメモすることで判るようになったことか。

[序幕]と[終幕]が書き下ろしということで、Pエージェンシーで起こった澤田次長を巡り、松尾、後藤康子、玉ノ井愛美を巡る澤田次長追求の事案が嶋田ソウ演出の舞台裏を巡って展開、[終幕]でハッピーエンド?に落ち着いたということで、空回りの松尾、康子のコンビの行為は結構面白かった。
[第一幕]から[第四幕]の話はそれぞれ含蓄のある内容で、よかった。
 


余談:

 帯文が図書館の本のなかによく張ってある。
 道尾秀介氏
「人生も、面白いのはいつも舞台裏。見えている部分なんて大したものじゃない」
 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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