あさのあつこ著 『ガールズ・ブル』、
                 『ガールズ・ブルU』







              
2011-09-25



(作品は、あさのあつこ著『ガールズブル』、『ガールズブルU』ポプラ文庫による。)

            
 

◇ガールズ・ブルー
 初出 2003年にポプラ社より刊行され、2006年に文春文庫として刊行されたものに加筆・修正を加えたもの。
 本書 2008年(平成20年)4月刊行。
 第一章 スプラッシュ    第二章 花火と世界征服
 第三章 海に還る犬
◇ガールズ・ブルーU
 本書 2009年(平成21年)8月刊行。

あさのあつこ:
 1954年、岡山県生まれ。青山学院大学文学部卒業。 「バッテリー」シリーズで第54回小学館児童出版文化賞を受賞。 著書に「バッテリー」「The Manzai」シリーズ、「弥勒の月」「ランナー」ほか多数。
 

◇  物語の展開: 図書館の紹介文より 
 
 ごくフツーの、しかし過激な高校生、理穂・美咲・如月。 葛藤と矛盾を抱えたプライド高き劣等高校生たちそれぞれの夏が始まった…。 気鋭・あさのあつこが放つ、切ないほど透明な青春群像小説。


主な登場人物:

吉村理穂 (あたし)
弟 真央

理穂17才、稲野原高等学校(地域では底辺校)の2年生。 欠点はお利口さんのいい人ぶるといわれる。
真央は2才した。 集団に交わることの嫌いな人間を相手にすることが苦手。睦月でなく、如月にあこがれている。

師岡美咲 幼なじみ、稲野原高等学校の2年生。 身体虚弱児、自分中心に自分のペースで動く意固地な少女。 超激辛の弁を吐く。

藤本如月 (きさらぎ)
兄 睦月
(むつき)

幼なじみ、稲野原高等学校の2年生。 あだ名は眠りネコ。 追試でようやく進級。
兄は繰州東高校3年生、野球部のレギュラーで甲子園出場に近い。

長原好絵 (スウちゃん) 稲野原高等学校の2年生、成績は学年でトップ。クラスで一番太っている。
竹下綾菜 高校1年の時同じクラスの子。 眠りネコ、年間10人前後の退学者がでるが綾菜も成績不振と授業日数不足で進級できず、辞める。
森次啓志 (ケイちゃん) 野球部、隣人の住民。 スウちゃんの彼氏。
<ガールズ・ブルーU> それぞれ1年上がる。
吉村真央 地域では屈指の進学校龍野緑西高校1年に、成績はトップクラスでも学校という場所とはソリがあわない。
藤本睦月 プロ野球ドラフトで4球団より誘いが有るも、蹴って東京の私立大学に一般入試で合格。 運動生理学を学んでいる。

読後感:

◇  ガールズ・ブルー

 高校2年生の幼なじみの仲良し若者(理穂、美咲、如月)、そして出来のいい兄(睦月)を持つ弟(如月)、集団に交わることの嫌いな弟(真央)を持つ姉(理穂)、そして若者に切っても切れない異性との関係(理穂とふった拓郎、いい関係だったのに殴られて悩むスウちゃんとケイちゃん、理穂に好感を持つ睦月との関係など)、さらに学校から離れて実世界で活動する綾菜の態度、さらには体は弱くとも強靱な信念を持ち合わせて生きている美咲の姿。 若い時代に起きる様々な出来事に、見事にユーモアな皮肉をない交ぜて軽快に展開する物語は興味津々である。

 作品の最後にある解説に佐藤多佳子氏が書かれている作品の内容、人物の性格の分析には全く同感。
 佐藤多佳子さんの解説の表現 「彼らが交じわす会話はアップテンポでキレがよくナチュラルでポップで嫌みがない」 がぴつたり。

◇  ガールズ・ブルーU

 それぞれ1年進級し、いようよ高校生最後の年。 それぞれの進路が大きな課題で悩む。 主題は進路とそして思いがない混ざる。 友情であり、恋である。 なかでも美咲の入院での死の予感が物語を引き締める。 スウちゃんの家庭の事情から、地元に就職を余儀なくさせられることも遠い世界を観てみたいという思いが切ない。 睦月と理穂の恋の顛末ははまあ若いからいいんじゃない。
 高校3年で最後の時、バラバラになっていく時間を切なく思う主人公達の姿が淡く青春時代の何とも形容しがたい雰囲気を懐かしんだ。

◇  印象に残る表現:
・禍福は糾(あざな)える縄のごとし。
・禍と福は交互にやってくる。
・天網恢々疎にして洩らさず。

   
余談:
 “揺れる。あっちこっち。向こうとこちら。 振り子が大きく行き来する。 たった一日の一夜の間に、何度も揺れ惑う。”と記述されている。 若者の心の揺れは大いに理解できる。 あさのあつこという作家の人気が判る気がする。


                  背景画は加藤清正が精魂こめて築城したという熊本城。



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