朝倉かすみ 『田村はまだか』


              2021-08-25


(作品は、朝倉かすみ著 『田村はまだか』    光文社による。)
                  
          

 
初出 (小説宝石・光文社)
    田村はまだか        2006年7月号
    パンダ全速力        2006年10月号
    グッドナイ・ベイビー    2007年2月号
    きみとぼくとかれの     2007年5月号
    ミドリ同盟         2007年8月号
    話は明日にしてくれないか  2007年11月号

 本書 2008年(平成20年)2月刊行。

 朝倉かすみ
(本書より)
 
 1960年北海道生まれ。03年「コマドリさんのこと」で第37回北海道新聞文学賞、04年「肝、焼ける」で第72回小説現代新人賞受賞。著書に「肝、焼ける」「ほかに誰がいる」「そんなはずない」「好かれようとしない」がある。

主な登場人物:

花輪春彦 札幌ススキノのスナックバー「チャオ!」のマスター、46歳。
田村久志

母親はろくでなしの男狂いだが、息子は彼女の自慢の子。
勉強できたし、駆けっこも速い。無口で同級生と打ち解けようとする素振りも見せない、孤高の小六。小学校卒業後宇都宮の親戚に預けられ、中学を出て豆腐屋に住み込んで修行。
父親はなく、母と二人暮らし。
・担任 古川 定年間近の女教諭。

永田一太 「チャオ!」の常連客。飲料販売会社支社の営業マン。

池内暁(さとる)
<腕白男>

化粧品・日用雑貨の卸し会社札幌支社の営業マン。
堂々たる体躯に小5のような童顔。(第二話)

坪田隼雄
<コルレオーネ>

生命保険会社で営業所長、40歳独身。マーロンブランド似。
(第四話)

加持千夏(かじ・ちなつ)
<いいちこ>

男子高校の養護教諭(保健室の先生)、40歳。
(第三話)

伊吹祥子
<エビス>

ウィスキーも焼酎も嫌い、エビスビールのみ。
(第五話)

[第一話] 田村はまだか
・中村理香 小学6年一組の問題児。田村久志、エビスと同級。当てられても答えず、テストは白紙で出す。律儀に登校する。
[第二話] パンダ全速力

・二瓶正克 販売部の量販店担当部門の池内暁の指導係。
      医者を辞めて入社。
・石田康夫 池内曉の上司。量販店担当部門の責任者。

[第三話] グッナイ・ベイビー

・キッド(島村裕樹) 加持千夏の高校の生徒、19歳も年下。
 母親(波津子)と二人暮らしだったが、結婚。
 高三の時母親亡くなる。
・柴崎道雄 数学担当の教員、千夏の1歳年上。
千夏と噂が立っていたが、別の女と結婚。

[第四話] きみとぼくとかれの
・森村美佳 隣家の長女。美術系大学に通っている、坪田と19才違いの21才。
[第五話] ミドリ同盟
[最終話] 話は明日にしてくれないか

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 深夜のバーで、40歳の男女5人が友人を待つ。各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たち…。人生に対するあきらめと不安を抱える世代の群像を軽快な文体で描きながらも、深い感動を呼ぶ傑作。

読後感:

 第一話で深夜札幌ススキノのとあるスナックバー「チャオ!」に小学校の同窓会の三次会に流れ込んできた男三人、女二人の40歳代の同級生たち。マスターの花輪春彦(46歳)が応対する。「チャオ!」の常連客永田一太が皆を連れてきたのだが、名前を明かすのは永田一太のみ。他の人間はマスターから見ての表現で。

 ・腕白男・口調を含めマーロン・ブラント似のビト・コルレオーネ・髪の短い「いいちこ」を呑む女・分けた長い髪の女はエビスビールばかりを飲む女
 彼らは田村久志のことを待ちわびている。
 そして田村久志なる人物の素性が語られている。彼の生い立ちと小学時代問題児であった中村理香と結婚して現在は豆腐屋を継いで宇都宮で暮らしている。

 その後の「第二話」から[第五話]ではマスター表現の人物たちの名前が明らかになっていき、彼ら、彼女らの生い立ち、絡み合い、現在悩まされている様が明かされていく。
 マスターの春彦は客の間で交わされる言葉で印象深い言葉をばね式帳面に書き留めている。
 待ちわびている田村の登場は驚くような展開に。そして皆がどうして田村に会いたがっているかがうかがい知れることに。

 40代にさしかかっている大人たち、これから先のことを考えると、過去のことに懐かしさを求める気持ちも分かる気がする。


余談:

 田村久志の人物が皆の語りによって徐々に姿が想像される。無口で、同級生と打ち解けようとする素振りも見せない孤高な小六である田村が、中村理香というこちらも孤高の小六の問題児に「なにもかも・・・つまんないじゃない?どうせ死ぬんだ。いつか、絶対、みんな、死ぬんだ」と言う理香に、田村が「どうせ死ぬから、今、生きてるんじゃないか」「泣くなよ」「好きだよ」と投げかける言葉が印象的。 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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