朝倉かすみ 『にぎやかな落日』


              2021-09-25


(作品は、朝倉かすみ著 『にぎやかな落日』    光文社による。)
                  
          

 
初出 たんす、おべんと、クリスマス     「小説現代」2018年5月号
    コスモス、虎の子、仲よしさん     書き下ろし
    口紅、コート、ユニクロの細いズボン 「小説宝石」2019年10月号
    煤(スス)、まぶた、おもちの部屋   「小説宝石」2019年10月号
    お手紙、不良、赤い絨毯                 「小説宝石」2019年10月号
    テレビ、プリン、オートバイ     「小説宝石」2019年10月号
    目方、寸法、帳面           「小説宝石」2019年10月号

 本書 2021年(令和3年)4月刊行。

 朝倉かすみ
(本書より)
 
 1960年北海道生まれ。2003年「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞、2004年「肝、焼ける」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。2009年「田村はまだか」で吉川英治文学新人賞を受賞。2017年「満潮」が山本周五郎賞の候補に。2019年「平場の月」で山本周五郎賞受賞、直木賞候補、北海道ゆかりの本大賞受賞。ほかに「ロコモーション」「てらさふ」「ぼくは朝日」など。

主な登場人物:

島谷もち子
<おもちさん>
夫 勇

おもちさんの家族は総勢12人(一番上の兄はサイパンで戦死して)おもちさんは二番目の姉、現在ボケが少し、目の病気持ち。
生まれは小樽、石狩に家を建てて住む、82歳。
活発で活動家、どこでも人気者。
・夫の勇さん 江差の出、元ブリキ職人、今は要介護3で特養にいる。

妹 よっちゃん
娘 藍子
(あいこ)

横浜住まい、旦那の山本さんは大工さん。
・藍子さん 小さい頃おもちさんに懐き、おもちさんの子供になりたいと。今は50代、独身。いまでも電話でやり取り。東京の会社勤務。

ちひろさん おもちさんの娘、東京に住む、59歳。

トモちゃん
夫 隆弘

おもち家の息子のお嫁さん、40代。出来た人でおもちさんのことを気にかけ、おもちさんが頼りにしている人。
林さん

月に何度かおもちさんの元を訪れ、「計画」をたててくれる人。
要介護2に押し上げた立役者。

田中さん おもちさんが入院時の丸メガネの担当看護師で、お注射係。
春川ますみ 田中さんの上司。
及川さん 高級介護老人施設(マンション)「夢てまり」の施設長。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 北海道で独り暮らしするおもちさん、83歳。夫は施設に入り、娘は東京から日に二度電話をくれる。実は持病が悪化して、家族がおもちさんの生活のすべてを決めていくことに。揺れては消える老境の心情が静かに切々と迫ってくる、人生最晩年の物語。

読後感:

 時に年を取り、晩年を迎えることを思うと先行き心配になるものだが、主人公のおもちさん、日頃はカラオケ部の催しでは人気者、おもちさんが出席しない時は、静かなものになるという。その他人と交わることに楽しみを感じ、女性に多い性分が羨ましい限りである。
 でも、夫の勇さんが(口が重いひとだが)脳卒中で半身不随の身で特養に入院して、一人で住むことになると、寂しさが身に染みるらしい。

 本人はボケが始まっているし、目は医者からは治らないと宣告され、失明までの命。
 東京に居る娘の訪れを待ち望み、今でも電話をしあっている姪の藍子と一緒に住みたいとも思う。
 娘やケアマネの林さんは、高級介護施設の「夢てまり」への入居をなだめたりすかしたりと。遂に入居に踏み切ったおもちさんは、夫の勇さんの特養に、バス一本で行けることを喜び、車椅子に乗せて散歩に出ることに意欲を湧かす。
 おもちさんの生き方に、老いの悲しさ、不安があるがその生き様は共感と共に、勇気が湧いてくるように。


余談:

 おもちさんが入院している部屋に入院してきたスナックのママの言葉。
「だれかの世話にならないば生きてけないんならサー、赤の他人のほうが絶対いいヨ。ビジネスライクが一番サー」身内はネ、遠くにありて思うものなんだワ−と。
 ほんとほんと。 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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