朝井リョウ著 『星やどりの声』


 

              2017-01-25



(作品は、朝井リョウ著 『星やどりの声』   角川書店による。)

          
 初出 文芸誌「小説 野性時代」2011年1月号〜4月号、6月号、8月号に連載。単行本化に当たり、加筆・修正。
 本書 2011年(平成23年)10月刊行。

 朝井リョウ(本書より)
 
 1989年岐阜県生まれ。早稲田大学文化構想学部在学中。2009年「桐島、部活やめるってよ」で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。現役大学生作家として注目を集める。他著作に「チア男子!」がある。
  

主な登場人物:


<早坂家> 三男三女、母一人。父親は癌で死亡。

長女 琴美(26歳)
夫 孝史

町の百貨店の宝石店で販売を担当。この家の女帝。凌馬や真歩からは、ばれるはずのないことが見抜かれ、エスバーと呼ばれている。
・孝史は交番のお兄さん。

二女 小春 高校3年生。小春とるりは双子。顔は似ているが性格は別。カラーコーディネーターの夢を持つ。
三女 るり 高校3年生。頭が良い、母の店を手伝う。色々自分で悩むタイプ。
長男 光彦 大学4年生、彼女なし(高校の時は居たと釈明)。明るくても騒がしくてもどこでも眠れる。
二男 凌馬(りょうま) 高校1年生。小学3年の時父が入院。顔は悪くないけど、デリカシーまるでなし。
三男 真歩 小学6年生。史郎伯父さんにもらったカメラに夢中。4歳の時父が入院。

母  律子
父(没)星則
(ほしのり)

純喫茶「星やどり」を一人で切り盛りしている。
・父親は建築家、「星やどり」を建て、あおいの家のリフォームを行った。

伯父 史郎 やさしい伯父さん。
吉田あおい

高校1年生(凌馬の同級生)、陸上部。光彦が家庭教師をしている。凌馬とは家のリフォーム中に知り合う幼なじみ。
母と小学生の妹のことで悩みもある。
・父親は九州に単身赴任中。

ハヤシ 真歩のクラスの転校生。真歩に話しかけてきた理由は・・・。
大和 プリントショップのお兄さん。プロのカメラマン。
佑介 小春の彼氏。高校の時2つ年上、今は私立の音大2年生。ストリートミュージシャン。
舞、千草 小春のクラス仲間。
松浦ユカリ 小春の隣のクラスの女の子。成績はトップ、練習もしないのに陸上部のエース。小春は嫌っている。何故か小春に声を掛けてくる・・・。

武内
父親 ブラウンおじいちゃん

土地の地主。
・ブラウンおじいちゃんは「星やどり」の常連客。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 亡くなった父が残したもの。喫茶店、星型の天窓、絆、そして、奇跡。三男三女母ひとり。ささやかな一家が出会う、ひと夏の奇跡の物語。家族が“家族を卒業する”時、父の残した奇跡が降り注ぐ…。

読後感:

 父親の死に対しそれぞれが素敵な思いや悲しみを抱きながら、三男三女それぞれが抱える思いがあふれ出てきた時、もう自然と涙が溢れてきて文字が読めなくなってしまった。
 光彦の章では何でも出来るのに家庭教師をする必要性を認めないが、あおいに対し、誰かに聞いてもらいたい光彦のおしゃべりに、大人の反応を示すあおいの優しさ、いい子だなあ。

 真歩の章では大人っぽい真歩の様子がいい。転校生のハヤシとの間の友情(?)に思いやりが溢れていて涙。笑わない真歩の思いにも涙。
 小春の章では12日の大事な日に母親の行動に爆発ギレ、自分のつらい思いをぶちまける姿に涙。

 凌馬の章では小春の話を聞き母親に反発、あおいとのやりとりや、琴美のサジェスションにやがて思い至ることに。
 るりの章では小春と違い母のことや琴美姉のことへの気遣い、一方で双子の姉の小春との間の微妙な亀裂にいい子だけに切ない。

 双子ってどんなときにも見分けてくれる人が居るって大切なことなんだなあと。
 長女の琴美はさすが家族のことを一番知っていて気をつけているが、やがてどうしようもなくラストの決断に至るシーンに涙。家族とはこんな風になっていくものと改めて我が身のことを振り返ってしまう。
 本当に早坂家は素晴らしい家族である。

  

余談:

 以前読んだ朝井リョウ作品「桐島、部活辞めるってよ」と同じような時期の作品であるが、実に人の思いを的確にくみ取って描写する力量に感心する。 

背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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