朝比奈あすか著 『月曜日の朝へ』



              2018-08-25



(作品は、朝比奈あすか著 『月曜日の朝へ』    講談社による。)

          

 
 初出 群像
    「クロスロード」2010年2月号
    「月曜日の朝へ」2006年12月号

   本書 2010年(平成22年)10月刊行。 

 朝比奈あすか:
(本書より)
 
 1976年生まれ。慶応義塾大学卒業。2006年「憂鬱なハスビーン」で第49回群像新人文学賞を受賞し小説家デビュー。女性の心理描写の細やかさには定評があり、今後活躍が期待される若手小説家のひとり。 その他の著書に「声を聴かせて」「彼女のしあわせ」(ともに光文社)「やわらかな棘」(幻冬舎)「憂鬱なハスビーン」(講談社文庫)がある。   

主な登場人物:

『クロスロード』 実里と木綿子、二人の自分年表の今は希望通りになったのか?

太田実里
<ミリ、おおちゃん>

東友情報サービスで営業管理部に3年。「ミドリ」と呼ばれる請求データの打ち込み専用パソコンを入力する仕事に。
営業を希望していたが現在に到る。高校時代水泳に注力、オリンピックを目指していたが・・。

東友情報サービスの人々

・秋元 実里の上司。
・玉木 40歳代の総務部と管理部兼任している臨時職員。前の社長の愛人の噂。
・ワコ(和子)営業部の友達。
・石倉 実里と同期。
・管理部の萩原部長、矢吹課長、山宮係長。

奥村木綿子(ゆうこ)
息子 健輔
(けんすけ)

中学、高校で太田実里と一緒。器量よし。
・3歳の息子はどもりと運動神経の鈍い子。
・自宅は夫の実家(義母)の敷地内にある。

今井紘一 高校時代の生徒会長。サカイという彼女(生徒会の書記)は有名なカップル。木綿子は今井に猛アタック。現在木綿子の夫?(結婚式は挙げていない)
加治木洋一郎

大きな病院の小児科の医師。10年ぶりの再会、木綿子がネットで調べて息子を伴って訪れる。
高校時代今井と今井の彼女と三人で写真。加治木は奥村木綿子に恋したが断られた。

『月曜日の朝へ』 会社の中では島流しの部門、瑞貴は仕事でも、周りの人間にも不満有り、母親の入院にも心を痛めている。母親の退院話と同じく、会社の縮小計画に市川麻衣子の思いも寄らなかった言葉が・・・。
篠田瑞貴(みずき) 社員300名弱の七海印刷勤務、マルチメディア部今年で4年目、27歳。

<瑞貴の実家>
兄 芳樹
兄嫁 江都子
娘 りりいちゃん
母 

甲府。両親、兄とも人見知りする性格。他人と無意味な世間話をするのが苦手。
・兄の芳樹 私立大出、甲府市内の証券会社に地元限定職で、1年も持たず辞め、伯父の守屋さん(乳飲料の販売店)で手伝い。
・兄嫁の江都子さんは、よく気のつく人見知りしない性格の存在。
・りりいちゃん 元気でかわいらしい顔立ち。
・母 がんで入院中。
・父 3年前定年退職し、農業中心の生活中。

マルチメディア部の仲間

・本郷さん 部長。
・市川麻衣子 4年制女子大出、今年入社の新人。いかにも今時の若者。
・二階堂くん よく働く派遣社員。
・山根さん 勤続10年。

南川 瑞樹の大学の後輩。瑞樹と付き合っている。修士・博士課程へと、計画性があり、要領いい25歳。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 これから私は何を得て、何を失っていくのだろう…。現実の重みに対峙する「27歳」の現実と明日を、群像新人賞作家が描く。対照的な人生を歩む同級生の一瞬のすれ違いを描く「クロスロード」を併録。     

読後感:

 <クロスロード>
 実里の会社での仕事内容はとても希望のものと違うも、自分は馴染んでくるとふっとミスをして上司の秋元に怒鳴られている。中学、高校時代の活発でスイミングに入れ込んでいたのが途中で挫折。会社での上司や、玉木さんの嫌みったらしい問いかけに意地悪で返す。いったい自分はどうなるんだろう。必要とされなかったらと落ち込んでいく。
 
 一方、木綿子は自分年表で「優しいお母さん」を標榜していたが、大学を出てすぐに妊娠、生まれた健輔の成長の遅れに、訪れる病院の医師はかって自らがふった加治木。
「子供の細かいことが全部気になってしまう。そういう母親は多いんですよ。僕なんかに言うよりもね、お父さんとゆっくりお話しされる時間をつくることをお勧めしますよ。はは」といなされる。

 日常とは未来を一日ずつ失い続けることかもしれない。と帰りたくない思いも夫からのメールに健輔と家路につく木綿子。中学に入り、名前が近くて席が前後、山間の小学校出身の木綿子を実里の仲間に入れてくれ流されるままの木綿子と自分の目標に向かって努力の実里の二人の人生は、たまたま出会った様子の実態はこんな風であったのか。

 <月曜日の朝へ>
 篠田の人たちの性格が、人見知り、他人との無意味な世間話をするのが苦手と全く己のことと同じに身がつまされる。
 瑞貴が母親のがん入院で週末都心から甲府に見舞いに行くさまで、六人部屋で母親の性格から「ここはよくない。明るくて、気のいい人ばかりで、安全だし安心だけれど、ここからでしてあげたい」と思う気持ちがよく分かる。

 新入りの市川麻衣子とのやり取りも本当「一応・・・」「すみません」「なんとか・・・」の軽薄言葉にかちんときて、放つ言葉に涙をみせる姿を、後輩いじめと見られたり。
 恋人の南川のこちらの気持ちをおもんばからない態度に、すげなくしては後悔の念に陥ったり。
 描写される様子はいかにも若手女流作家の感覚描写。 
 

余談:

 著者の経歴、余談を記してなかったことに気づき、改めて図書館から取り寄せ。やっぱり中身を思い出さないと書けない。覚え書きのノートを読み返してもうろ覚えで要領を得ない。すっかり読み返すことに。やはり読んだ後すぐに原稿を完成させておかないといかんと反省しきり。
 どうも次々と本を読むことに追われているようでいかん。
 

背景画は、森・木をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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