有吉佐和子著 『複合汚染』






              
2008-01-25



 (作品は、有吉佐和子選集第12巻 『複合汚染』 新潮社による。)

                   

 朝日新聞朝刊の小説欄に昭和49年10月14日から八ヶ月間にわたって連載。
 昭和53年(1978年)2月刊行。

 有吉佐和子:
 1931年(昭和6年)1月20日生まれ、和歌山市出身。カトリック教徒。母親秋津の存在が大きい。「紀ノ川」は昭和45年の作品であるので、「複合汚染」は後の小説である。


読後感:

 問題小説かと思っていたが、最初の方は、紀平梯子(ていこ)の東京地方区の応援演説を市川房枝(81歳)に(市川は参議院選挙全国区に出馬)頼まれ、選挙演説での経緯を語るものである。これがまたおもしろいから、ついつい読み進んでしまう。もう一人の応援演説者に吉武輝子(公害問題研究会のメンバーでもある)がいる。

 紀平ならぴに吉武の演説は、環境汚染問題、赤ちゃんの異常出産の話、子供の健康の話と恐ろしいデータが紹介される。そんなところから次第に著者の主題である「複合汚染」の問題へと入っていく。
 
 農薬の問題、化学肥料の問題、それらに対抗して全国で取り組んでいる人達の紹介へと本題に入っていく、なかなか巧みな演出である。しかも著者自身この「複合汚染」
という本のことを、小説と呼べる態のものとは思えないと記されていたが、ちょっと小説の分類に入れるのはどうかと思うが、そこに入れておいた。

 この本を読んでいく内に、今年は自宅で庭に植えた蜜柑が小振りだが沢山できて、取ってから何日(10日以上だったか?)もたつと皮がしおれてきてもう食べられないかと思って剥いてみると、中味はしっかりとむしろ甘くなっているぐらいであった。一方、もう食べ終わったのでスーパーで1週間程度の量を買ってきたが、1週間も経たない間に、残っているものは、皮は勿論中味も腐ってきてしまって、なるほどこの本の通りだと感じた。今更ながら、食べ物から合成洗剤、化学肥料、歯磨き剤とそこら中のものに関心を持つようになってしまった。
 


◇書き留めておきたい言葉を参考に記しておく

・有機農業・・農薬も、化学肥料も使わない農業。
・化学肥料を使うと小物の成育はいい。但し、ひ弱な野菜や果物が生まれる。
・土・・・化学肥料と農薬を使い続けると、土も力がなくなって死ぬ。やっぱり堆肥。
・米余りの問題・・備蓄にたえない。化学肥料で育てた米は、3年以上の保存に耐えない。
・土とミミズ・・土はミミズの口から入って外へ出るとまた土になる。前と後で土の性質がまるで違う。ミズの体内の分泌液によって豊かな黒い土になる。出て来た土は細かい団粒状、空気が通りやすく、ふわふわと柔らかなものになる。
・肥沃な土・・有機質を多く含んでいる土壌のこと。みみずは有機質の多い土を好んで集まってくる。
・化学肥料を使うと土は酸性になる。土が酸性になると様々な要素が抜ける。カルシウム、土が本来持っているカリウムもなくなる。マンガンや硼素のような微量元素も抜けてしまう。・・みみずは酸性の土を嫌う。中和させるために石灰を使うと土がカチカチに固まってしまう。
・生体濃縮
・食物連鎖
・コンパニオン・プランツ=仲良し

  

余談:

 昨年の1月に床の補修を頼んだ時に、大工さんが持ってきて下さった、無農薬のキャベツの美味しかったこと。外は虫が食っているかも知れないけれど大丈夫と言われ、パンに挟んで食べてもしゃきしゃきとしてこんなに美味しいなんてと感心したことを思い出す。

背景画は。無農薬野菜例のラディッシュフォト。

                    

                          

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