有栖川有栖著 
                       「虹果て村の秘密」
                       「46番目の秘密」
                      

 

                2011-11-25



(作品は、有栖川有栖著 『虹果て村の秘密』、『46番目の秘密』 講談社による。)

         

『虹果て村の秘密』
 本書 2003年(平成15年)10月刊行。本作品は“ミステリーランド”のために書き下ろされたもの。

『46番目の秘密』
本書 1992年(平成4年)3月刊行。

有栖川有栖:

 1959年大阪市生まれ、同志社大学法学部卒。 在学中は推理小説研究会に所属。 89年、大学生・江神神二郎が名探偵役をつとめる 「月光ゲーム」 で瑞々しいデビューを果たす。
 一方、臨床犯罪学者・火村英生が不思議な名探偵ぶりを発揮する国名シリーズは 「ロシア紅茶の謎」 から7作がある。 両シリーズともに有栖川有栖なる人物がワトソン役として登場するのは著者のお人柄か。 2000年に設立された 「本格ミステリ作家クラブ」 の初代会長でもある。

物語の概要と主な登場人物:

『虹果て村の秘密』 
 推理作家になりたい12歳の少年秀介は、憧れの作家の別荘に招かれ虹果て村で夏休みを過ごす。しかしあいついで殺人事件が発生。刑事になりたい同級生の優希と共に、事件解明に大人も驚く知恵を絞る。

上月秀介

推理小説大好きの小学6年生、12歳。推理小説家になりたい。
父親は刑事。

二宮優希
母親 二宮ミサト

母親は推理作家なのに母親の仕事に興味なし。秀介と同級生。刑事に憧れている。夏休み、二人で二宮の出身地にある別荘に招待される。
藤沢明日香 二宮ミサトの従姉妹、25歳。

賛成派
・烏賊崎恭子
(いかざき)
・国松正志
・西尾陽一

高速道路建設に賛成。
・イカザキは中学校の教師。
・国松は工務店経営と民宿のようなものをやっている。
・西尾は工務店の経営者、長身でレスラーのように肩幅が広い。

反対派
・笹本慎
・風間春彦
・島谷豊明

高速道路建設に反対。
・笹本は郷土史研究家。
・風間はカメラマン。
・島谷はUFO研究家。緑色の服装をしている。3年前に天狗山に着陸騒動あり、今でもそこにいると信じている。

新堂連太郎 雑誌記者。高速道路の賛成、反対派の取材に。
小室巡査 村で唯一の駐在さん
赤いバイクの男 途中まで正体不明。20代半ば、いけてる男。


『46番目の秘密』
 45の密室トリックを発表、日本のディクスン・カーと呼ばれる真壁聖一が殺された。密室と化した地下の書庫の暖炉に上半身を押しこまれた上、火をかけられるという無惨な姿であった。彼は自ら考え出した46番目の密室トリックで殺された。推理作家、有栖川有栖と気鋭の“臨床犯罪学者”火村英生の痛快コンビ誕生。

火村英生
(ひでお)
京都の帝都大学で犯罪社会学の講座を持つ臨床犯罪学者、32歳独身。(招待客)

有栖川有栖
(私)

大阪生まれ大阪育ちの専業推理作家。学生時代から火村とは付き合っている。ワトソン役のような者。32歳。(招待客)
真壁聖一 私と同業で“密室の巨匠”と呼ばれる。50歳。北軽井沢に“星火荘”という別荘に移り住んでいる。クリスマスにパーティを毎年催している。
出版社の面々
(招待客)

真壁聖一の作品を出している出版社の編集者。
・杉井陽二(青洋社)
・船沢辰彦(珀友社)杉井より5つ年上。真壁との付き合いは長い。
・安永彩子(ブラック書院)落ち着いた雰囲気の細面の美人。最年少で20代最後のクリスマス。

作家たち
(招待客)

・石町慶太 スキー焼けの筋肉質の男。33歳。
・高橋風子 小柄でクラシックな体格。心理サスやハードボイルまでこなす。

真壁佐智子
娘 真帆

真壁聖一の実の妹。数年前離婚して“星火荘”に居る。
真帆は高2。東京の大学を出て編集者になりたいと。

桧垣光司 高2の17歳。“星火荘”に居る。
警察関係者

・鵜飼警視 群馬県警の若いキャリア組。
・大崎警部 北軽井沢署の刑事。


読後感

『虹果て村の秘密』

 かって子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランドとして書き下ろされた作品、全ての漢字にルビが振ってあり、児童書のよう。でも大人も子どもも楽しめる。推理小説家になりたい上月秀介と刑事を目指す二宮優希(いずれも小学6年生、12歳)のクラスメートが夏休みに推理作家の二宮ミサトの招待を受けて別荘に来て遭遇する事件を解明するという筋書き、登場人物も自然豊かな村に高速道路を通すことに賛成派と反対派がいて揉めている。そんな中で虹果て村の虹にまつわる伝説を交えながら事件は展開する。

 複雑な話ではないけれど、犯人の検討はさっぱりつかない。最後の優希の謎解きと真摯な話しぶりに犯人も素直に応対するあたりなかなか小憎らしい作りになっている。


『46番目の秘密』
 いわゆる密室もののミステリー小説である。フラッシュ・バックとして最初に描写されている浅間山麓のホテル火災事故が伏線になって後半の方で関係してくるが、読者にはそこのところはよく分からない状態で話は進む。
 クリスマスでの北軽井沢の大作家の別荘“星火荘”に招待された出版社、作家、それと家族たち等のパーティでの模様、その夜の密室殺人事件とミステリー小説ならではの展開が興味をそそる。 そして臨床犯罪学者の助教授火村英生とその友人で作家の有栖川有栖なる人物を初めて知る。シリーズ的にこのコンビ者も出てくるものと思われる。

 気軽にミステリー小説を楽しむなら格好の作品。

  

余談:
 
 密室ものに限らずミステリー小説には関心があり、特に昔は定年になったらアガサ・クリスティやエラリー・クイーンのミステリーをゆっくり読みたいと思っていたのに、現在の所まだその心境になっていなくて、もう少し重い作品を好んでいる。そればっかりではしんどいので合間に軽快な作品を織り交ぜて読むことにしている。
背景画は、単行本の「虹果て村の秘密」の表紙を利用。

                    

                          

戻る