有川 浩著  『塩の街』






              
2014-08-25





(作品は、有川 浩著 『塩の街』     電撃文庫による。)

                   


 本書 2004年(平成16年)2月刊行。

 有川 浩:(本書より)

 関西在住10有余年、未だお国訛りが抜けきれない四国人。郷里を語るとちょっぴりプチナショナリスト(県粋主義者)にして、小心かつ人見知り名暴れん坊。第10回電撃ゲーム小説大賞<大賞>受賞作。
 

主な登場人物:
小笠原真奈(17歳) 平凡な女子高校生。冬の初め怪現象(塩害)で両親が帰ってこない。親がいないことを知って男達に襲われ、逃げ出してさまよい、秋庭の部屋に連れてこられる。

秋庭高範
(あきばたかのり)

優しくするとき怒る人。実は照れ屋。
航空自衛隊百里基地を除隊。真奈より7〜8つ年上。
秋庭二尉、航空戦競会三連覇の覇者。

谷田部遼一(19歳) 重いリュックを背負い、群馬の自宅から歩いてきれいな海に行きたいと。行き倒れの状態の所を真奈が秋庭のところに拾ってくる。猫、犬に次いで3つ目。3人で廃車寸前の車で向かう。
トモヤ
(20歳そこそこ)
囚人で塩害の人体実験にされているところを逃げだし、遼一と別れて帰途に就く秋庭、真奈の乗った車を襲う。
入江 秋庭と高校の時同級で頭抜群。警視庁科捜研に配属。立川駐屯地司令になりすまし、塩害対策を模索している。

野坂三曹
夫 正

立川駐屯地の武器隊の女性隊員。
・正 通信隊の隊員。



作品の概要:

 塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた…。第10回電撃小説大賞「大賞」を受賞した、著者のデビュー作。

読後感:

 今までに読んだ有川浩作品は「阪急電車」「県庁おもてなし課」「空飛ぶ広報室」と興味深い作品であっただけに、デビュー作である本作品は興味津々であった。

 最初は何か塩害とか結晶とかSFっぽい話で理解出来ないところもあったが、そんなことはさして気になることなく、シーン1での遼一がきれいな海に行きたいと、重いリュックの中味が塩害にあった恋人海月の姿であったことそして遼一もやがて・・・。

 シーン2ではトモヤの正体が分かり、真奈が最後にトモヤの告白を聞いてやることが出来、安らかな気持ちになって送ってやる。その後の真奈は二人の悲劇に落ち込んでしまう。

 その後は塩害を対処すべく秋庭が、入江と相容れない考えの持ち主ではあるが、塩害の対処に向かう。そんな事件の中で真奈という無垢な高校生と兄のようでもあり、大人でもある秋庭のお互いを思いやる心情がやがて恋なのか先行き不透明な時と向き合って他人のために立ち向かうのか、自分の幸せと感じる気持ちで立ち向かうのかの気持ちの葛藤。

 ふたりを見守る野坂夫婦、冷酷なようで真奈の一途さに惹かれてのことなのか入江の言動と読者の胸を打つシーンはさすが有川浩の真骨頂。あとがきで著者が明かす作品の出来上がりの様子も興味深かった。

余談:
 
 最近野菜サラダにかけるさるメーカーのポン酢を扱っていたスーパーが店じまいしたので手に入らなくなった。(ネットではあるが送料や代引きを考えるとちょっとね)そこで近所のスーパーなどを調べ回った。と「県庁おもてなし課」に記載されていた馬路村のポン酢が目に付いた。そうそうとさっそく購入、かなり高価だけれど満足・・・。こんな効能もあったのか。
背景画は、本書の挿絵の内”シーン1”の挿絵を利用。シーン毎に描かれた挿絵も魅力的。