有川浩著 『キャロリング』



              2016-11-25



(作品は、有川浩著 『キャロリング』   幻冬舎による。)

          
 

  初出 「別冊文藝春秋」2012年9月号、11月号
 本書 2014年(平成26年)10月刊行。

 有川 浩(本書より)
 
 1972年高知県生まれ。「塩の街」で電撃小説大賞<大賞>を受賞し、2004年デビュー。同作と「空の中」「海の底」から成る自衛隊三部作、「図書館戦争」シリーズをはじめ「阪急電車」「植物図鑑」「空飛ぶ広報室」「明日の子供たち」など著書多数。映像化された作品も多く、幅広い世代から支持を集めている。また俳優の阿部丈二と演劇ユニット<スカイロケット>を結成し、「旅猫リポート」「ヒア・カムズ・ザ・サン」の舞台かを自ら手がけるなど、演劇の世界へも挑戦の幅を広げている。 

主な登場人物:


大和俊介
父親
母親

父親の母親に対する暴力で父親に反抗、しかし母親から「いいかげんにしてよ」の言葉にあいショックを受ける。両親は別居するも再びよりを戻す。
俊介は家を出、母親の旧姓を使うことで以降会わず。

「エンジェル・メーカー」の人達

月島での子供服メーカー。今年の12月25日倒産が決まっている。
・社長 西山英代 夫(没)の後を継ぐ。
・佐々木勉
(ベンさん) デザイナー 最古参の社員、39歳。タヌキ腹。
・折原柊子
(とうこ) デザイナー 大和と同い年、中途入社。・朝倉恵那 大和より1つ上、東大卒の棘だらけの女性。中途入社。
・大和俊介 バイト時代から大学3年生の時から内定通知を受け、就職。

田所航平
父親 祐二
母親 圭子

「エンジェル・メーカー」のサイドビジネスである“学童保育”の子供。
小学6年生。両親と共に暮らしたいと・・・。
日記でなく、物語を作っている。
・父親はちょっと頼りない、余り仕事のできるタイプではない。家を出て「坂本整骨院」出見習い中。
・母親は仕事が好きな働き者の女性。航平が小4の時プロジェクトの主任に抜擢される。両親の罵り合後父親は出て行き、別居。父親は実家に、航平は母親とマンションに引っ越す。

坂本冬美 横浜の「坂本整骨院」の院長。祖父の代からの医院。夫は没。

大嶽正ェ
(おおたけまさひろ)

整骨院の常連患者。妻を亡くし、妻に似ている冬美先生のことを娘のように好いている。
「赤木ファイナンス」の人々

ギャンブル依存症の父親が闇金業者の使いっ走りから海に浮かんでいた頃赤木は一人で生きていくことに。
・社長 赤木守 暴力団グループから店を任される。
・部下 糸山光太と石田猛 赤木に拾われる。
・事務所の事務員 レイ 元ホステス。赤木に借金の保障を受ける。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 両親の不仲に心を痛める航平。本当の想いを打ち明けることなく別れ、気まずいままの大和と柊子。倒産、離婚、失恋、そして…。クリスマスにもたらされるささやかな奇跡の連鎖。有川浩が贈るハートフル・クリスマス。

読後感  

 両親が不仲の間での子供である大和俊介、田所航平を巡り、関係する人達との交わりを通し、子供服メーカーの「エンジェル・メーカー」を舞台に物語が展開する。
 大和は航平より3周り程度大人ゆえに多少のゆとりはあるけれど、航平と向かい合うと同等の世界で向かい合うことに。航平も子供なのに全く大人のごとく大和や柊子に接する。

「エンジェル・メーカー」(社長西山英代)の倒産を覚悟した12月25日の残り迄の間に「エンジェル・メーカー」の従業員の活動様子。サイドビジネスで行っている学童保育のスクールの生徒田所航平の家庭のもめ事に介入することになった柊子と大和そして二人の間の生い立ちの違いが問題に。関連して大和の父親祐二が母親圭子と別居し、さらには離婚の危機に。祐二は「坂本整体院」(坂本冬美院長)で見習いで働いているが、ここも借金の取り立てに閉めようとしているし、常連患者大嶽と祐二の冬美先生を巡る思いも交差して事件が舞い降りてくる。

 著者の優しさはこの取り立て屋の「赤木ファイナンス」(社長赤木守)の社長や従業員の三人にもめくばりされている。一見やくざ風ではあるけれど大和の心意気を感じたり・・・。ラストの展開はハートフル・クリスマスとあるもちょっぴり厳しい現実の姿に引き締まる思いが。

  

余談:

 これまでも有川浩作品を読んできたが、今回の作品は何となく甘いというか、ぐっとくるものが少ない感じで、話は面白く引き込まれるのだが、ちょっと物足りない印象である。

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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