青羽悠 『凪に溺れる』



              2021-02-25


(作品は、青羽悠著 『凪に溺れる』    PHP研究所による。)
                  
          

  本書 2020年(令和2年)7月刊行。書き下ろし作品。

 青羽悠:
(本書より)  

 2000年、愛知県生まれ。2016年、「星に願いを、そして手を。」で第29回小説すばる新人賞を史上最年少で受賞して、作家デビュー。
 

主な登場人物:

プロローグ 2019年
河崎遙

派遣社員で大手企業の受付。趣味は音楽。健太と付き合って4年。
感化されたバンド“the noise of tide”の「凪に溺れる」のボーカル霧野十太が遙の誕生日に亡くなっていたことを知り、まずくなった健太との関係を・・・。

健太 4年制大学を卒業後横浜のメーカーに就職。遙との今が幸せと。
一章 2006年
大宮夏佳(なつか) 東京生まれの夏佳は、父親の転勤族(銀行勤務)で田舎町に転校してきた中学3年生。夏季オリンピックの日本選手に憧れ、水泳に注力中。
関秋穂

夏佳と同じクラス、沢山の友達を持つ元気いっぱいの子。
夏佳と一番の仲良し。

霧野十太(じゅつた) 夏佳と同じ転校組で、東京の子。クラスの挨拶でバンドを組んでくれる人がいたら教えてくださいと。
二章 2009年
小崎聖来(せいら) “死にたい”と思っている高校三年生。自分は愛されていたい、でも、どれだけ愛されても満たされない。ぎりぎりの友達と言えるのは関秋穂ぐらい。早川と付き合っているが、十太に興味を持ち近づき、早川は「何で俺じゃだめなんだよ」と。
霧野十太(じゅつた) バンドの仲間に「一緒にやれない」ともめる。
三章 2015年
石田正博(まさひろ) 大学4年生、休学中。大学2年の時ハンドを組み、もう4年。バンド“the noise of tide”でのギター担当で、金銭管理管轄。
金木梓(あずさ) ベース担当。大学3年生、休学中。
原田弘毅(ひろき) ドラム担当。バンドの賑やかし担当。専門学校卒業しフリーター。
霧野十太(じゅつた) 歌とギターのフロントマン。歳は正博の一つ上。
小崎聖来(せいら) 十太とともに東京に。十太の彼女。
輝樹(てるき) 正博の先輩、同じ研究室所属の修士2年生。正博に研究の手伝いを頼む。“寮楽祭”でのバンド演奏を頼まれたと。
四章 2018年
北沢 音楽業界に飛び込んで20年以上。その昔、三人でバンドを組むも、久太が加奈との間に子供を作った時点で何かが崩れ、すべてが終わった。
霧野久太

十太の父親。北沢と組んだバンドのボーカル。赤いギターを弾く。
10年を超える月日が流れ、若年性の病で久太は死んだ。

吉田加奈 北沢ら三人で組んだバンドのドラム担当。同じ学校。
五章 2019年
相葉光莉(ひかり)

出版社勤務2年で辞め、フリーター3年、28歳。
元の出版社の受付には河崎遙がいる。

大宮夏佳(なつか) 28歳の水泳選手。東京オリンピック出場やメダル獲得が期待されている。自然な流れで婚約。
秋穂

夏佳の中学高時代の同級生。バイト先の花屋に雇ってもらう。
霧野君とは高校も一緒。

石田正博
妻 梓

バンド“the noise of tide”の解散後バンド諦め就職。
・梓 正博と結婚、妊娠中。

加奈 十太の母親。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 OLの遥は、無名のアーティストの曲が「バズって」いるのを見つける。その曲にとてつもない引力を感じた遥だったが、数日後「2018年10月23日、Vo霧野十太逝去。27歳」の文字を目にする。霧野十太とは何者なのか。著者渾身の青春小説。

読後感:

 2019年、河崎遙は音楽が趣味、恋人の健太とのドライブデートでの噛み合わない会話に気まずい雰囲気に。その時流れていたのが「凪に溺れる」。
 このボーカリストの霧野十太(じゅつた)が1年前に、遙の誕生日に27歳で亡くなっていたことを知る。そんなプロローグから時は2006年、十太の中学3年生の十太の様子から、2009年高校3年生の十太、2015年大学の時のバンド結成、2018年十太27歳の時、その昔北沢が十太の父親がやはりバンドを結成したときの様子が語られ、そのメンバーとの間で十太が生まれることに。

 そして2019年バンド“the noise of tide”が最後の大学での寮楽祭に出場して、最後のライブとなったその場に、相葉光莉が頼まれ手伝いで遭遇する。そのことで感化を受け、会社を辞め、フリーターとなり、霧野十太なる人物をもっと知りたいと大宮夏佳と共に訪ね歩く。

 霧野十太がどうして亡くなったかの真相は、第5章で明らかになるが、霧野十太が何者か、その謎は、人と交わることが苦手、しかし彼から発せられるうねりのようなものが、聞く人に信じるべきものに出会わせる。
 そんな十太が、ただ一人「死にたい」と言っていた聖来を選んだことで自らの死を招くとは。


余談:

 本作品は著者の第2作目だが、第1作目の「星に願いを、そして手を。」に青春時代の息吹を味わったが、本作品も青春小説である。
 ところで一番その青春時代の甘酸っぱさを感じたのが、第一章の大宮夏佳と関秋穂の別れ。
 転勤族の夏佳は、どうしようもなくひとりといっていいそんな彼女が、クラスで中心人物の秋穂と仲良くなって、別れなくてはいけないシーン。
 駅に一人でいるとき、見送りに来てくれた秋穂との別れのやり取りに胸が熱くなった。
 やはり大人になるに従って、物わかりとか周囲のこととか、気兼ねとかで熱くなることが少なくなっていくのでは。
 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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