青羽悠 『星に願いを、そして手を。』



              2020-11-25


(作品は、青羽悠著 『星に願いを、そして手を。』      集英社による。)
                  
          

 初出 「小説すばる」2016年12月号(抄録)単行本化にあたり、加筆・修正。
 本書 2017年(平成29年)2月刊行。

 青羽悠
(あおば・ゆう)(本書より)  

 2000年愛知県生まれ。本作で第29回小説すばる新人賞を受賞して、作家デビュー。16歳での同賞受賞は史上最年少となる。

主な登場人物:

<四人の幼馴染み> 中学生の時代、科学館(図書棟とプラネタリウム棟が合わさった施設)に集まり宇宙を夢みる仲間だったが、進む道は時が経て変わっていった。
倉木理奈 宇宙が大好きだった理奈は大学院に在学。夢を追い求めて進んできたが、気づくと立ち止まっている自分。祐人とは正反対の自分、祐人と仲直りが出来るのか。自分の気持ちに真っ直ぐ。

神庭祐人
(かんば・ゆうと)

大学卒業後、この町に戻ってきて町役場で働く。変なところ真面目。宇宙を夢見ていたが、高校に進むとき夢を諦めた。付き合っていた理奈とも疎遠に。戻って来て理奈とも会ってなかったが・・・・。

真鍋春樹 大学を出て実家の「真鍋電気店」で働いている。
三島

去年から館長のいる科学館で学芸員。外向けの愛想の良さ、人と打ち解けるのが早く、かしましい女性。薫は、夜の遅い時間、館長がフェンスを何度も蹴っていたことを目撃、何を悩んでいるのだろうと。春樹としょっちゅう小競り合い。

館長 館長は昔人工衛星の「よあけ」ノプロジェクトに関わる仕事をしていた。館長が亡くなり、科学館は八月の末に閉館となることに。
乃々さん 館長の奥さん。館長と乃々さん、細川さんは幼馴染みだった。
直哉(なおや) 館長の孫にあたる。高校生。薫さんから学校に忍び込んで校庭にふたつのWマークの落書き作業を手伝わされ、騒動になる。
河村 直哉のクラスメイト。あまり人と話すのが得意じゃないみたいで、クラスで浮いているWマークの落書きの犯人にされたことを機に直哉と口を利くように。カメラをしょっちゅうさげている。
田上亜希子 河村と同じクラス。
細川正 中学時代の祐人たちの物理の先生。口癖は「一つの計算ミスが、一生のミスになる」。それには館長との確執があった。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 中学生の頃、4人の親友を繋げていたのは「宇宙」への果て無き好奇心だった。彼らは大人になり、大切な人の死をきっかけに再会するが…。16歳の著者が描く、青春群像劇。
〈受賞情報〉小説すばる新人賞(第29回)


読後感:

 中学生だったときの四人(祐人、春樹、薫、理奈)の幼馴染みは、宇宙に関心を持っていたが、高校、大学、社会人と成長するにつけ、それぞれの進む道が変化。そして仲良しだった四人が、館長の死に触れ、N市の科学館がリニューアルオープンを機に今の科学館が閉館となることで、薫の呼びかけで再び集まる。

 それぞれの主人公を通して、揺れ動く心のさざ波が描写されていくと、まさに青春時代のほろ苦く、切なさがいっぱいにたちこめてきて、16歳という作者の描写のうまさのきわだちが伝わってきて震えがきそうになる。

 エピソードは花火大会での中学時代と再会後の花火大会での出来事など。
 戸惑っている理奈と祐人を仲直りさせようとする薫たちの作戦、そして館長の孫にあたる直哉とクラスメイトの、人との交流に苦手な河村が次第に打ち解けてくる姿。
 さらに大きなテーマは乃々さんに頼まれた薫が、祐人を巻き込んで校庭に二つのWマークを描かせたその秘密のわけ。
 それらは館長の死をきっかけに、再び動き出した最強の幼馴染み四人の夢と現実の有り様。

 そしてもうひとつ科学館が閉館となるのを機会に館長と細川先生ののっぴきならない秘密が隠されていたこと。それを修復させようと乃々さんと館長の孫の直哉の活躍がさわやか奈結末に導いてくれた。
 “夢”ということ、それぞれが持ち、叶うか、叶えられるか、その過程も含めて考えさせられるものだった。


余談:

 
やはり、16歳の著者の描くみずみずしい青春の時代の夢を目指す姿に感動。言葉がない。
背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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