安生正著  『ゼロの迎撃』




 

                  2015-08-25




 (作品は、安生正著 『ゼロの迎撃』    宝島社による。)

          
  
本書 2014年(平成26年)7月刊行。

安生 正:(本書より)

 
1958年生まれ、京都府京都市出身、東京都在住。京都大学大学院工学研究科卒。現在、建設会社勤務。第11回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、「生存者ゼロ」(宝島社)にて2013年デビュー。


登場人物:

真下俊彦 防衛省情報本部統合情報部付き三等陸佐/情報分析官。
寺沢 情報本部総務部所属、陸曹長/調整官。退役間近。
岐部 情報本部統合情報部所属、三等陸尉。
高城和久 東部方面隊第一師団所属、三等陸曹。レンジャー。
栗林 統合幕僚監部、総合幕僚長、陸将。
市橋 情報本部、統合情報部長、一等陸佐。
梶塚 内閣総理大臣。
磯崎 内閣官房長官。
影山 防衛省内部部局、大臣官房審議官。
須藤 内閣法制局長官。
ハン・ヨンソル 朝鮮人民軍平壌防御司令部特殊旅団参謀長、大佐。
陳(チェン) 中国人民解放軍陸軍、瀋陽軍区、中佐。
崔(ツェイ) 中国人民解放軍陸軍、瀋陽軍区前司令員、中将。
キム 朝鮮人民軍平壌防御司令部特殊旅団、少佐/ハンの腹心。

補足1 朝鮮人民軍:朝鮮民主主義人民共和国の軍隊。
補足2 中国人民解放軍:中国共産党の政党軍隊。
    朝鮮人民軍は人民解放軍の賊軍に等しい。

物語の概要(図書館の紹介記事より)

 東京を突如謎のテロ組織が攻撃。自衛隊総合情報部所属の情報官・真下は、テロ組織を率いている人物の居場所を突き止めるべく奔走するが…。国家の「今そこにある危機」を圧倒的なリアリティと壮大なスケールで描く。

読後感

 国会で安全保障関連法案が議論されているちょうどそのタイミングで東京を壊滅させるため北朝鮮の特殊部隊の襲撃を受けるという一見考えられないような事態をシミュレーションさせるような事件。
 果たして日本はこういう事態が発生したときにうまく対処できるのだろうか?と思ってしまう。先に読んだ「生存者ゼロ」より現実的なテーマに空恐ろしくもあり、真実味を帯びて読んだ。
 
 国家安全保障会議でのやりとりでは必ずいる原則論、法律論を振りかざす人間がいるが、即決断が必要なときに自衛隊の最高責任者である首相の決断力、そして出動を命じるときの心に響くスピーチを出せるのか、そしてそれを引き出せるに足る情報を提供できる人間が周りにいるかという極めてシンプルで人間的なものが欠かせないと改めて思えた。

 それにしても真下という情報分析官の色んな知識を持ち合わせていないととても対処できないのではなかろうか。著者が調べたであろう参考文献も色んな書籍がリストアップされていて、さぞかし大変だっただろうなあと思ったり。

  

余談:

 今国会で審議中の安保法制の法律、結局はそのときの最高責任者が判断するしかないであろうと思うが、常に不測の事態を想定して考えておかないと、特に時間がない状態での判断を要する場合、色んな事を想定し、相当訓練しておかないとうまくいかないんではないだろうか。

 現実の首相や閣僚の仕事量を考えると、そんなことを真剣に考えているとは思えないが・・・。 3.11の福島の事故のような切羽詰まったときの行動にはそんなことは想定されていなかったから、結果的に大混乱を招いたといえる。
 まじめにこういうことを考えていてくれる人が存在していることを願うばかり。

背景画は、作品中に出てくる対戦車ヘリ、AH−64アパッチ編隊のフォト。

                    

                          

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