安生 正著 『生存者ゼロ』
                







              2014-10-25




 (作品は、安生 正著『生存者ゼロ   宝島社による。)

               

 初出 2013年1月「生存者ゼロ」(宝島社)として単行本として刊行。
 本書 2014年(平成26年)2月刊行。(単行本を加筆修正)

 安生 正:(本書より)
 
 1958年生まれ。京都府京都市出身、東京都在住。京都大学大学院工学研究科卒。現在、建設会社勤務。

物語の概要: 図書館の紹介文より 

 北海道沖に浮かぶ石油掘削基地を襲ったのは、テロ攻撃か、謎の病原菌か、それとも…。未知の恐怖が日本に襲いかかる。パニック・スリラー。〈受賞情報〉「このミステリーがすごい!」大賞(第11回)

主な登場人物:

廻田宏司(主人公)
(かいだこうじ)

陸上自衛隊西部方面普通科連隊に所属の三等陸佐。根室半島沖の石油掘削プラットフォームTR102での不可解な事件調査に関わり、市ヶ谷の中央情報隊に異動、寺田陸幕長から真相究明の役を任せられる。
伊波 防衛医大専修医。医学研究科で総合病理学系専攻の医師。廻田の協力者に。
館山雅広 三等陸佐、狙撃の腕前優れ、TR201調査にたってと連れてくるが、感染症にやられる。
広瀬 北部方面部隊にこの人ありと言われた医務官。信念の人、廻田と親しい間柄。廻田の協力者に。

富樫裕也
妻 由美子
息子 祐介

国立感染研究所にこの人ありと讃えられる感染症学者、博士。国立感染症研究所の部長職を更迭され、中部アフリカで新種の微生物探しに。
・由美子は国立感染症研究のパートナー。
・息子の祐介は6歳。

鹿瀬 国立感染症研究所の細菌部長。富樫の後釜。富樫を陥れた張本人。
その他の自衛隊関係者

・寺田陸幕長 市ヶ谷防衛省陸上自衛隊幕僚監部。
・大山統合幕僚長

国家安全保障会議メンバーたち

・大河原首相
・磯崎官房長官
・宮内厚生労働大臣
・牧内危機管理担当大臣
・片岡内閣官房審議官
・広山防衛大臣 他

弓削亜紀

生物学者、28歳。
廻田が北海道川北町を視察に来たときのトラブルで、弓削のおばあちゃんの消息を調べるとその場しのぎに約束してたことから・・。廻田の協力者に。

読後感:

 迫力といい、中味の面白さ、謎の解明の期待感といい、ミステリーの醍醐味をたっぷりと盛り込んだ逸品。
 根室沖合の石油掘削プラットホームTR102での職員全滅事件、それだけで終息したかに見えたことが再び中標津
(しべつ)川北で二度目、さらに足寄(あしより)町での三度目となるパンデミックにどう対処していくのか。

 国家安全保障会議での政治家達の無策に寺田陸幕長の直轄で秘密裏に任務を指示された廻田三等陸佐と仲間の伊波たちが突き止めたのは・・・。
 一方で感染症の権威者である富樫は妻と息子を助けられず、コカインに手を出し、狂人となって果たして頼りになるのか・・。

 富樫と鹿瀬の相克も見逃せない。そこにどう関係してくるのか分からないが、美人の弓削亜紀という人物の登場が気になるところ。
 物語は日時と時刻、関係する場所が太字で記され、時の経過、描写箇所が明確に展開するのですっきりと中味に集中して感情移入できるのがいい。
 ラストの結末は一体どうなるのか、ページ数も少なくどういう決着をつけるのかと・・・。

   
余談:
 
 奇抜さという点で以前読んだ高野和明著の「ジェノサイド」と同じような感銘を覚えた。
 それにしても昨今の世の中の出来事といい、危機管理の必要性、あり方を改めて考え直させるような内容に襟を正さなくては。

         背景画は物語導入部での海上の石油掘削プラットフォームをイメージして。



戻る