安東能明 『消えた警官』



              2020-06-25


(作品は、安東能明著 『消えた警官』      新潮文庫による。)
                  
          

  本書 2020年(令和2年)2月刊行。書き下ろし作品。

 安東能明
(あんどう・よしあき)(本書による)  

 1956(昭和31)年静岡県生まれ。明治大学政経学部卒。浜松市市役所勤務の傍ら、’94(平成6)年「死が舞い降りた」で日本推理サスペンス大賞優秀賞を受賞し創作活動に入る。2000年「鬼子母神」でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞する。’10年「撃てない警官」所収の「随監」で日本推理作家協会賞(短編部門)受賞。「強奪 箱根駅伝」「螺旋宮」「潜行捜査」「聖域捜査」「第U捜査官」「出署せず」「浸食捜査」「広域指定」「総力捜査」「女形警部 築地署捜査技能伝承館・村山仙之助」「頂上捜査」「夜の署長2密売者」「CAドラゴン」シリーズなど、緻密な取材に裏付けされたサスペンス、警察小説で注目を集めている。

主な登場人物:

[綾瀬署]

柴崎令司(しばさき)
妻 雪乃
長男 克己

警務課課長代理、警部。2年前の春まで警視庁総務部企画課企画係長。部下の拳銃自殺の責で綾瀬署に左遷された。
・妻の雪乃は元婦警。

上河内博人
(かみこうち・ひろと)

刑事課課長代理、警部。本部捜査二課から異動してきた。博多出身。少しクセはあるが、優秀な刑事。

高野朋美(ともみ) 刑事課盗犯第二係巡査、27歳。最近めきめきと力をつけている捜査員。

・坂元真紀署長、37歳独身。柴崎と同世代の女性キャリア。
・助川副署長 柴崎の直接上司。
・刑事課 浅井課長、市川昌利刑事課強行班捜査係長。
・警務課 中矢裕康
(ひろやす)巡査部長
・交通課 大城課長、秋山係長、

小幡弘海(ひろみ)
妻 麻子

元地域課巡査。当時29才だったが地域課志望がかない、翌年竹の塚警察署生活安全課へ異動した。しかしその年の冬突如家庭を顧みず失踪。
奥さんはドラッグストア勤務。失踪届出すことを拒否。

[竹の塚署]
奥山考治

生活安全課の課長。
・宇田署長

[本部]
中田(なかだ)

第六方面本部長。柴崎が本部総務部企画課にいたときの上司。
柴崎を左遷に追い込んだ張本人。

<護符の年輪> ひき逃げ事件の真相は?

江森隆史(たかし)
父 安男

隆史の父親安男はガス会社を退職後、子会社に再雇用。
笹尾聖太(せいた) 接触事故を起こしたワゴンRの男。
<火刑> 介護付き有料老人ホームで起きた火傷による死亡事件の真相は?

梅津喜代
孫 智也
(ともや)

東和青幸園での認知症の被害者。火傷で死亡。
・孫の智也は京成高砂駅前で美容師、23〜24才。

東和青幸園の職員

入所者数49名、正規従業員13名、アルバイト5人のホーム。
・富永弘之 施設長。頼りないの評価。実務経験ゼロ。
・宮野保彦
(やすひこ)介護主任、44才。3年歴の未婚。
・西里好美
(よしみ)今年4月入ったばかりの新人。
・木田 去年介護福祉資格取得、4〜5年歴。

<目撃者> バイクと歩行者の交通事故の真相?
天野三恵 横断歩道を渡り中の被害者、75才。
駒井裕樹(ゆうき)

被害者をはねたバイク運転手、28才。
去年まで北進タクシーで働き、一端辞めた。
北進タクシーの専務の次男。

綾瀬署交通課

・大城課長
・秋山係長
・松沢 交通機動隊出身、車の運転はプロ並み。
・交通執行第一係 畠山温子警部補。

<紐の誘惑> 空き巣による犯行か?被害者の絞殺の真相?

三好由夏(ゆか)
母親 弓子

父親のDVで離婚、母子家庭の高校三年生。マンションの3階の部屋で絞殺状態で発見される。
母親との相性よくなかったとも。

原口啓太

由夏の先輩。春休み3〜4日家出した由夏を泊めたことあり。
田端のインテリアデザイン科の1回生。

堀江智弘(ともひろ) 由夏の同級生。
<消えた警官> 失踪した元警官小畑弘海の素顔は?
石山史子(ふみこ)

台風11号の豪雨の中、綾瀬川で身投げと妹の千明から連絡入る。
43歳の時離婚、両親との三人暮らし。両親の介護にかかり切り、
二人共80近くで没去年子宮筋腫更年期障害に悩まされていた

辻本典久(のりひさ)
妻 千明

辻本企画という広告代理店を営む。芳しくなく近く石山史子に同居を申し入れていた。
・千明 石山史子の妹。

依田 リフォーム業者“シンコー”の社長。
玉井若菜 小畑弘海の不倫相手。
佐野恵理 玉井若菜の友人。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 2年前、忽然と姿を消した小幡弘海巡査部長。綾瀬署に所属する柴崎令司警務課長代理、上河内博人警部、高野朋美巡査の3人は、小幡についての捜査を始める。ひき逃げ。老女の不審死。女子高生絞殺。3人は底知れぬ謎へと迫ってゆく。

読後感:

 本の題名「消えた警官」は綾瀬署の地域課から、本人の希望の生活安全課への異動が決まり、竹の塚署の生活安全課に晴れて異動するも、何故か突然失踪してしまった小畑弘海警官のこと。

 短編集かと思いきや、それぞれのところで小畑という警官が話題に挙がり、どういう事件に巻き込まれて、姿を消したのか、はたまた消されたのかと思いきや。次第に印象が悪く悪徳警官の様相を呈しながら、ラストの<消えた警官>へと繋がっていく。
 しばしおいといて、中でも<紐の誘惑>がどういうわけか、終わり近くなっての真相でぐっときてしまった。

 三好由夏という高校3年生の女の子が、妊娠をしてしまい、母親の厳しさにも、ましてや父親の暴力にもサラされて相談する人もなく、どんな気持ちになっていただろうかと思うだけで胸が締め付けられる思いに。

 また、作品自身がすごく現実にあるごとくに描写、展開していくので、地味な感じではあるがリアリティにとんでいる。
 人物のキャラとしても、上河内のなんだか頼もしさ(柴崎が呟いているように「上河内博人に出会い、捜査の面白みを感じるようになったのも事実」)や、高野ちゃんの行動力抜群の男勝りを感じるキャラも好感。

 坂元署長の初々しさ?もやはりいい感じ。柴崎の、刑事ではない警務課の事務方としての言動もいかにも地味だが上河内とのコンビでその良さが光っている。
 こういう警察小説も面白い。


余談:

 面白い知識が得られた。
 GPS付きのバックフォー
(油圧ショベルの中でも、ショベルをオペレータ側向きに取り付けたもの)
 稼働状況がリアルタイムのネットで製造メーカーに送られるシステムを積んでいる。
 ショベルを動かした時間も場所も判る。メーカーは現在地を初めとして、すべてモニターしているはず。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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