天野節子著 『氷の華』
                          
 



              
2011-01-25




 (作品は、天野節子著 『 氷の華 』 幻冬舎 による。)

                 

 本書 2007年3月刊行

 天野節子:
 
 1946年千葉県生まれ。本書がデビュー作(61歳)となる。


 

主な登場人物:

瀬野隆之
妻 恭子
(旧姓 吉岡)
家政婦 杉野妙子

大手企業(東陽事務機)の営業部長。妻恭子の叔父はそこの創立者の一人。その縁で隆之の地位は盤石。 いつもブランド物に身を固めている。
妻の恭子、結婚して12年子供はいない。 家事は家政婦に任せて生活をエンジョイ。 プライド高く典型的な高級志向の女、頭が切れ、侮辱されるのは我慢が出来ない。
練馬区高野台に住み、軽井沢に別荘を持つ。

戸田克己 警視庁捜査一課警部補、50歳過ぎ。
大塚宗雄 練馬西署所轄の若い刑事。関口真弓毒殺事件での相棒。
関口真弓 瀬野隆之と同じ会社に勤める経理課の女。 地味で美人ではないが、瀬野隆之と愛人関係とのうわさ。 毒殺される。
高橋康子 大学は違うが、瀬野恭子の友人。ニューヨークに長くいて昨年帰国、恭子と再会する。 出版社勤務。
滝口好美 大学は違うが、瀬野恭子のもう一人の友人。演劇の舞台で活動している。


◇物語の展開: 図書館の紹介より

 誰かを殺してまで、守りたいものは何か…。たった1本の電話が、何不自由なく暮らしていた主婦を殺人者へと変えた。 罠が罠を呼ぶ、衝撃の結末。 驚異の新人が放つ、本格ミステリー。 


読後感:

 この作品がデビュー作?しかも還暦過ぎて、自費出版が最初でと・・・どういう素性の作家か非常に興味を持ってしまった。それほどまでに面白い筋書き、展開となっている。

 しかもヒロイン役の瀬野恭子なる女性の頭の回転の良さ、あまり感心はしないがプライドの高さ、毅然とした態度、夫とその愛人に苔にされた(?)屈辱を隠し、逆に復讐を企てるその狡猾さ、一方、戸田警部補と大塚刑事の恭子に対する揺るぎない執念、どちらも心地よいほどの心情を抱かせてくれる。

 途中松本清張の「砂の器」のシーンと似た場面も再現され、読者をぐんぐん作中に引き込ませる技量も大したものである。次の「目線」という作品が楽しみである。
 久しぶりに推理小説らしい推理小説を読んだなあという印象である。

  

余談:

 戸田警部補の言葉に、「これは印刷出来ないんですか? 私は画面で文章を読むのは苦手です。 密着感がなくて、頭に染み込んでこないのです」とあり、電子書籍が話題になっているが自分も紙でないと彼と同じである。

 

 背景画は、文庫本の「氷の華」の表紙を利用。