秋吉理香子 『 聖母 』



              2020-05-25


(作品は、秋吉理香子著 『 聖母 』      双葉社による。)
                  
          

 初出 「小説推理」’15年1月号〜6月号に連載された同名作品に加筆、訂正したもの。
 本書 2015年(平成27年)9月刊行。

 秋吉理香子
(本書による)  

 早稲田大学第一文学部卒。ロヨラ・メリウス大学院にて、映画・TV製作修士号取得。2008年、「雪の花」で第三回Yahoo!JAPAN文学賞を受賞。2009年、受賞作を含む短編集「雪の花」にてデビュー。2013年に、ある女子高生の死の真相を六人の同級生が語るミステリー「暗黒女子」を発表し、大きな反響を呼んだ。他の著書に「放課後に死者は戻る」がある。 

主な登場人物:

保奈美
夫 靖彦
娘 薫

大手製薬会社勤務経験のある、翻訳の在宅アルバイトの主婦、46歳。
43歳の時、苦労を重ねやっと薫を妊娠。東京都藍出市
(あいいでし)の高層マンションに住む。
・靖彦 車販売の営業職。土日祝日が稼ぎ時。
・薫 ことみ保育園に通う女児、3歳。

矢口由起夫
父親 正敏
母親 晃代
(あきよ)

猟奇殺人事件被害者の藍出市ウサギ幼稚園の年中さん、4歳。
・正敏 リフォームを請け負う工務店勤務のサラリーマン、32歳。
・晃代 29歳。

三本木聡(さとし) 公園で女の子をいじめたりの乱暴な男児、5歳。二人目の犠牲者。
田中真琴

藍出第一高校2年生、剣道部の副主将。公民館でちびっ子剣道クラブで、剣道六段元体育教師橋本とボランティア活動をしている。
スーパーサンズマートでバイト。
そもそも他人が嫌い、触れ合うなんてぞっとすると。

綿貫

藍出第一高校2年生、剣道部の主将。声も図体もでかい。
「真琴は子供好きだもんなあ」と。

蓼科秀樹 4年前大美戸市強姦事件の犯人。
坂口 50歳そこそこの捜査一課四係刑事。
谷崎ゆかり 同じ四係、1年ほど前に捜査二課から一課に、若くて美人の刑事。
里田 捜査一課係長。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 幼稚園児が遺体で見つかった。警察は懸命に捜査を続けるが、犯人は一向に捕まらない。主婦・保奈美は、大切なひとり娘も狙われるのでは、と恐怖を覚え…。娘を守るため、母がとった行動とは。

読後感:

 帯文の「ラスト20ページ、世界は一変する。」がそれまで読んでいたことが「えっ!」に変わって思わずページを振り返ってしまうほど。
 徴候は少し前にも。真琴っててっきり男の子と思っていたが、途中から女のこと知ってそうだったのかと。
 それだけで済まず、ラストへ。

 それまで不妊に苦しんだ母親に、やっと妊娠、出産で子を授かってそれ故に母親としてこの子を護りたいの思いが人一倍強い。そんな中、幼児の猟奇殺人事件が身の回りに起こり、精神的にも緊張感が漂う。
 方や一見信頼のおける高校生として、学校でも、ちびっ子剣道クラブでも、バイト先のスーパーサンズマートでも活躍する姿とは別の顔を持っている真琴。

 殺人事件を調べる坂口、谷崎のコンビの活動振りも、坂口のおじさん年齢と若くて頭の回転が良く前向きな刑事コンビのキャラ振りがおもしろい。
 女流作家だけあって出産にまつわる描写や母親の心理の描写が生々しく、現実味を感じる。


余談:

 秋吉理香子なる作家についてネットで調べていたら、デビュー当初からのファンというお姉さんとお友達という女性のもの。
 ・心の描写がリアル。 心の動き、登場人物それぞれの気持ちの変化や揺らぎの描写にリアリティ。
 ・映像が浮かぶ小説、興味が喚起される。
 ・学びがある。 1つの題材の小説に副産物が5,6個くらい必ずある。など。
 同感するところ多々。この後も読んでみたい。 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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