相沢沙呼 『メディウム』



              2021-02-25


(作品は、相沢沙呼著 『メディウム』    講談社による。)
                  
          

  本書 2019年(令和元年)9月刊行。書き下ろし作品。

 相沢沙呼
(あいざわ・さこ)(本書より)  

 1983年埼玉県生まれ。2009年「午前零時のサンドリヨン」で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。2011年「原始人ランナウェイ」が第64回日本推理作家協会賞(短編部門)候補作、2018年「マツリカ・マトリョシカ」が第18回本格ミステリ大賞の候補作となる。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。「小説の神様」(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化が発表された。 

主な登場人物:

香月史郎
(こうげつ・しろう)

推理作家。推理力はないが、単に犯罪者の心理に対しての洞察と描写に多少の自信がある程度。

城塚翡翠
(じょうづか・ひすい)

霊媒の娘。死者の魂を呼び寄せることが出来る。20歳くらい、北欧系の血が混ざる日本人的な顔立ちの帰国女子。タワーマンションに住むお嬢様。

千和崎真
(ちわさき・まこと)

翡翠のアシスタント兼家事手伝い。翡翠と一緒に住む、気心の知れた友人。

鐘場正和
(かねば・まさかず)

警視庁捜査一課の警部。
蝦名海斗
(えびな・かいと)
捜査本部の巡査部長。
[第一話] 泣き女の殺人
倉持結花(ゆいか)

香月の大学の後輩。写真サークル香月にとって妹のような存在。
殺害される。

立松五郎 空き巣の常習犯。
西村玖翔(くうと) 大手ブライダルプロデュース会社の社員。結花とは小林舞衣を通して知り合い、結花に熱心に交際を迫っていた。
小林舞衣 西村の同僚。結花と同じ大学で写真サークルにいた。結花とは親しい間柄。
[第二話]

黒越篤
(くろごし・あつし)

オカルトやホラーの要素と本格ミステリを組み合わせ他作風で人気の作家。曰く付きの水鏡荘を購入、仕事場にしている。60近い年齢。
バーベキュウパーティーの後、仕事場で遺体が発見される。

新谷由紀乃 元黒越の教え子で随分可愛がられていて、こうしたバーティーにはよく招かれている。
別所幸介(こうすけ) 黒越の元教え子。作家志望で今は黒越の弟子のような立場。
有本道之 K社の編集者。
[第三話] 女子高生連続絞殺事件
藤間菜月

高校2年生。香月に学校が巻き込まれた殺人事件を解決してと依頼。
写真部に所属。遙香とは同学年、写真部で知り合った親友。
第三の殺人事件の被害者。

武中遙香(はるか) 第一の事件の被害者、16歳。塾に向かう途中に。塾講師のバイト今野悠真(21歳)と付き合っていた? 悠真本人は否定。
北野由里

第二の事件の被害者、16歳。図書委員。菜月のクラスメイトだが、ほとんど交流なし。

蓮見綾子(あやこ) 写真部のただ一人の3年生。北野と図書委員同じ。
藁科琴音(わらしな) 読書家で図書委員長。社交的な子。
[最終話]

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 推理作家として難事件を解決してきた香月史郎は、心に傷を負った女性、城塚翡翠と出会う。彼女は霊媒であり、死者の言葉を伝えることができる。香月は霊視と論理の力を組み合わせて、姿なき連続殺人鬼に挑む。だが、殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた。

読後感:

 推理作家の香月史郎が霊媒娘城塚翡翠(じょうづかひすい)の能力を利用して事件を解決に導くとして第三話まで事件が展開する。
 霊の力で証明するとしても、証拠能力は無いため、香月は証拠として鐘場警部に示さなければならないというハンディがある。

 城塚翡翠という娘、帰国女子のお嬢様で自分の能力を理解してもらえない、信じられないことでかえって気味悪がられて、友人がただ一人千和崎真しか居ない。けれどその美人で可愛くて、子どもっぽい性格から、第二話の女子高生の写真部の皆からはモデルとして引っ張りだこになる始末。すっかり仲良しになってしまう。

 第一話は香月の妹とも思っている倉持結花が空き巣に入られて殺害されたと思われたが、翡翠は「犯人は女の人です」と。
 翡翠の能力はひとつに現場に立って魂の匂いで感じること。
 そして現場で翡翠は自分では記憶に残らない言葉を発し、香月がそれを聞くことに。

 第二話では怪奇推理作家黒越篤が黒越の別荘水鏡荘(みかがみそう)で殺害された事件。集まったのは編集者と弟子の仲間達に、香月と翡翠が参加していた。ここでは翡翠は「犯人は別所さんです」と告げる。
 翡翠が見た夢(?)の内容とアリバイから解き明かす犯人捜しが展開する。

 第三話は高校2年生藤間菜月の頼みで、学校で起きた殺人事件の解決に、香月と翡翠と蝦名刑事が学校に乗り込んで解決に当たる。
 絞殺事件は学校外の公園とか人気の無いところで、塾に向かう途中とか、塾帰りとかで行われていた。
 翡翠は「犯人は女の子です」と。そして発した言葉は「先輩、どうしてこんなことを」と。
 事情聴取が難しい学校に乗り込んだ三人と、写真部の面々のやり取りが賑やかで華やいだ気分にさせるのは、翡翠のキャラクターによる。

 第四話最終話は連続殺人事件にまつわる話。これまでの常識が一転、とんだ事態に驚きの一語。とても話せない。

 第一話から第三話の終わりに“インタールード”と称する短編が挿入されていて、鶴岡文樹(ふみき)なる人物が実験をする相手に城塚翡翠を狙っている話がどういう意味をなしているのか。 最終話がそのことに発展していくような気がするが・・・。

 本屋大賞ノミネートとか、このミス、本ミス、ベストブック、トリプル1位との帯文、イラストの女の子が本の中身を象徴するような予感。


余談1:

 やはり題名の「medium」が何を意味するのか気になる。
 関係がありそうなこととして
・(伝達・通信・表現などの)手段、媒体、機関
・複数形で みこ、霊媒 が出てきた。


余談2:読めない漢字、しかも熟語でなく。

 例えば:辿々しい(たどたどしい)、怖気たつ(おじけたつ)、竦める(すくめる)、擽る(くすぐる)、零す(こぼす)、煌めく(きらめく)など日頃お目にかかれない漢字に辞書を引きながらとなった。手強い著者で侮れない。 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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