ピエール・ルメートル著  『悲しみのイメール』
        (訳 橘 明美)









                 2016-02-25


 (作品は、ピエール・ルメートル著 『悲しみのイレーヌ』      文春文庫による。)

        

 本書 2015年(平成27年)10月刊行。

 ピエール・ルメートル:(本書による)

 1951年、パリに生まれる。教職を経て、2006年、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ第1作「悲しみのイレーヌ」でデビュー、同作でコニャック・ミステリ大賞ほか4つのミステリ賞を受賞した。シリーズ第2作「その女アレックス」で、イギリス推理作家協会インターナショナル・ダガー賞を受賞。日本では「このミステリがすごい!」ほか4つのミステリ・ランキングで1位となり、「本屋大賞」翻訳小説部門でも第1位となった。2013年、はじめて発表した文学作品Au revoir la-hautで、フランスを代表する文学賞ゴンクール賞を受賞する。
 訳者紹介 橘 明美
 1958年(昭和33年)東京生まれ。お茶の水女子大学教育学部卒業。英語・フランス語翻訳家。訳書に、P・ルメートル「その女アレックス」(文春文庫)、J・ディケール「ハリー・クバート事件」(東京創元社)、H・ボンド「ラカンの殺人現場案内」(太田出版)など。
 

物語の概要:(図書館の紹介記事より)

連続殺人の捜査に駆り出されたヴェルーヴェン警部。事件は異様な見立て殺人だと判明する…。掟破りの大逆転が待つ鬼才のデビュー作。〈受賞情報〉コニャック・ミステリ大賞。

主な登場人物:

カミーユ・ヴェルーヴェン
妻 イレーヌ

パリ司法警察の警部。犯罪捜査部班長。

ルイ・マリアーニ カミーユの部下。富豪一家の息子。
アルマン 同上。ケチで知られる。いい仕事をする。

ジャン=クロード・マレヴァル

同上。浪費癖、女にのめり込む。
ジャン・ル・グエン 犯罪捜査部部長、警視。カミーユの上司。
コブ 捜査チームのメンバー。ITのエキスパート。
エリザベス 同上。40前後の女性。凶悪犯罪担当あり。
フェルナン 同上。50前後の男。風紀犯罪取締班から。酒浸りの中年。
メフディ 同上。24〜25歳の若者。
ジャン・ベルジュレ 鑑識課長。
エドゥアール・クレスト 心理プロファイラー、博士。
フランソワ・コッテ クルヴォア事件の現場を扱った不動産業者。
エヴリン・ルーヴレ クルブヴォアで惨殺された娼婦。
ジョジアーヌ・ドゥブフ 同上
マヌエラ・コンスタンツァ トランブレで惨殺された娼婦。
アンリ・ランベール コンスタンツァのヒモ。
フィリップ・ビュイッソン ル・マタン紙の記者、30代。人並みはずれて勘鋭い。
ファビアン・バランジェ 大学教授。犯罪小説の専門家。
ジェローム・ルザージュ ミステリー通の古書店主。

読後感

「その女アレックス」で話題になっている著者のそれに先立つ作品とか。そんなことから図書館で借りられたのはこちらの方。
 内容は全くの猟奇殺人事件、状況はおどろおどろしくて、もし映画にでもなったら空恐ろしいと想像するだけで気持ち悪い。小説だからまあよしとして、これを担当したカミーユ警部とその仲間たちの活躍はなかなかチームワークよろしく事件解決に向け取り組むも、なかなか犯人の周到な計画によるもので、解決の糸口がつかめない。

 そんな折過去に起きた同様な事件で連続殺人、さらに推理小説の作品からそれを実行していることを推理する。この推理と判事とのやり合いも面白い。
 
 フランスのミステリー作品がどういうものかよくわからないけれど、古書店の店主(ルザージュ)はミステリー作品に通じていて、それ故犯人と疑われ、取り調べを受け怒り心頭になるも、警部の深刻な頼みに協力をする段はなかなかのもの。

 ラストの方は伏せておくとして警部の必死の様子、仲間たちの協力具合と展開は緊迫感と迫力で読ませる。ミステリーの度合い、物語の展開、ここぞという時の盛り上がり、本が売れるわけも道理。

余談:

翻訳物がどうしても好きになれなくて、最初の方のいかにも翻訳ですのイメージがつきまとっていたが、物語が佳境に入ってくると気にならなくなってしまう。カルロス・ルイス・サフォンの「風の影」に登場する古書店の店主センベーレ、息子ダニエルの事がふと頭に浮かんだ。もうひとつウンベルト・エーコの「薔薇の名前」がこれも文書館の表現と呼応してか頭に浮かぶ。

 背景画は作品の第一部に出てくるクルブヴォア殺人の状況がブレット・イーストン・エリス著の「アメリカン・サイコ」に出いる状況に似せたものとわかるその書籍の表紙を利用。 

                    

                          

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