支部だより 
香港支部 98年10月 by Dragon


回はコブラの話でしたが、確か前前々回で香港鱗翅会の話題に触れちょこっと紹介させて頂きました。 今回はその続きから。

紹介のあらまし、、、

 香港でも虫好きな人がいて香港大学の研究員を中心としてほかのアマチュアメンバーも含めて月例会や野外観察会を開いていますと言った内容でした。で、そんなある日のこと、一通の手紙が私のところへ舞い込みました。
それは香港教職員組合から、10月に昆虫展覧会と講演会を開催するので、香港鱗翅会のメンバーである私に講演依頼の申込の件だったのです。しかも題目も”香港及び南中国の甲虫について”と決められていてさらにそれを北京語でやってくれという要求だったのです。

 実はこの手紙が来た頃の前後2回ほど、旅行とかめんどくさいとかで月例会をさぼっていた私だけが知らされてなかったようでして、この話同会でも取り上げて積極的に協力しますということになっていたそうな。
頼まれると断れない私は、それからというもの悶々とした苦悩の日々を過ごしたといえば皆さんにもその気持ちが伝わるのではないでしょうか。

 月日が経つのは早いもので、楽しみに心待ちにしている時は一日千秋なのだが、不思議といやだなと思っているとすごく早く感じてしまうのは私だけだろうか。

ここからは昆虫展覧会&講演会レポート

 開催当日まで2回の月例会があって、いろいろ段取りや分担を決めた。
メンバーの皆はやる気まんまん(吉田照美じゃないよ)で、パネル展示や写真なんかとてもアマチュアの作品とは思えないような出来(だってプロのカメラマンなんだものな〜)でやんす。
さらにはポスターを作製したり、プリントティーシャツを作製(これは会場で販売)したり、年会報まで作製しちゃおうってんだからすごい力の入れようだ。
そしてそこまでやるとさすがに資金がないのでメンバー1人づつから約1万円を徴収(あくまでドネーションだといいながら)される破目になった。そこで普段標本の購入でありがねを使い果たししまっている私は物納ということで去年日本人学校の昆虫展の際の販売用の標本箱に売れそうなやつで出しても惜しくないやつをかき集めることにした。
会場の準備は平日に行うといわれたがさすがにそれはお断りして、当日の開場前に私の分担を持ち込んだ。

 結局ものぐさな私は手間のかかるパネルやポスター、スライドなんて用意せず、展示用の標本箱4箱と販売用の標本6箱を用意するだけだと思ってたかをくくっていたのだが、標本に学名ラベルの他に中国語ラベルも作らなければならず、これが意外と時間がかかってしまった。
虫の固有名称には学名がそれぞれあることは皆さんもよくご存知だと思います。
そしてさらに日本であれば和名があるようにイギリスであれば英文名があるのです。
では中国では?やはりあるんです漢字でつけられた名前が。
カブトムシを独角仙、カミキリを天牛というのを知っている人はいらっしゃるのではないでしょうか。
総称ではそれでいいんですが固有名称となると困ります。
掲示板のほうで、美村とか安他絵臼とかやってる世界に近いものがあります。
ちょっとそれますが表音文字を持たない中文では外来語の表示が常に問題になります。
多くはその意味を訳したり、或いは音訳して漢字表記します。

 問題なのは意味のない個人名だとか地名(勿論由来や現地語での意味はあるんでしょうけど)を訳す際に明確なルールがないために人によって勝手に表記してしまうことです。
たとえばアメリカの前大統領(だっけ?)は中国では”里根(リ−ガン)”で台湾では”雷根(レイガン)”と表記しています。

 昆虫の名前も同様で台湾で出版されている本と中国本土のものとでは同じ種でも漢字表記が違うものがあったり、まだ中文名がつけられていないものも数多くあります。
日本でも紹介者によって和名が違う場合もありますが最近の傾向として学名カタカナ読み和名が定着しそうですね、でも個人的には慣れのせいもあるんでしょうがやはりビソンはフチドリアカだしゼブラはタテジマノコと呼びたいですね。

 では話を戻して、てな具合に中文名を(調べられるものについては)調べ、また自分で創作したりしました。以下はその例です。、、、といって全部紹介しようかと思ったのですが結構笑えるものもあるのでこれはクイズにまわして賞品に何か太っ腹でプレゼントを出しちゃうことにします。ゆえにここではごく一部というかヒントとしてごく少例を挙げるだけにしますよってに皆さんクイズに応募してチョー。

中文名→和名
高加索独角仙→コーカサスオオカブト(簡単だね〜、だけどオオは訳さないのかって?気にしない!)
台湾深山鍬形→タイワンミヤマクワガタ(文字通り)
ってな具合です、ドケチぢぢぃな私のヒントはここまで。あとはみんな自分で考えてね!

 さて、話をまたもとに戻して、当日10月17日朝、その努力の結晶的標本箱を持ち込みました。
会場は教職員組合で運営している会館、いわば生協みたいな感じで、スーパーありの診療所ありのです。

 午前11時にセレモニーが開かれ新聞記者は来るはテレビは来るはで大盛況、偉そうなじいさん(結構エライひとらしい)が挨拶して一同お決まりの拍手喝采。何故か私が記念のペナントを受領するというハプニングもあった。展示の方は、パネルや写真よりも標本に見学者の目が釘付け、やはり本物のもつ迫力はすごい。釘付けの見方がまたすごい、標本箱のガラスすれすれまで顔を近づけている。どうやらこれは本物か偽物かを見極めようとしてのことらしい。昆虫なんか全然知らない香港人はコーカサスオオカブトをみるとツイつくりものかと疑ってしまうようで、見学者が口々に本物か偽物かの議論をしている。あ〜あ。
さらに本物といえばバードストリート(小鳥屋街)で買ってきた生きたバッタ(小鳥の餌用に売られている)の展示もあり子供達は”動いた”といっては歓声をあげていた。お〜お。

一方、ドネーション販売用標本は開場前にすでにスタッフのあいだで争奪戦が行われ、開場時には何と1箱が申し訳なさそうに山積みティーシャツの傍らに置かれていた。ひぇ〜。
で主催者のほうから申し訳ないけど明日また追加で用意してきてくれと。きょえ〜。
こちらも、”わかりました、けどこんどはタダじゃないですよ”と一発かましてやりました。
誤解の無いように説明すると、会場でHK$100(日本円千数百円)で販売予定だったものをスタッフが自分用に買ってしまったのです。

本題の講演は午後2時からで、初日の演者3人のラストをやることになっていました。この歳で緊張なんてしませんが、さすがに自分の出番が近くなると無性にノドが渇いてきました。まえの2人、1人は開業医、1人は公認会計士で話すことには非常に慣れていて、さらに言葉のハンディ(広東語でやっている)がないので、いい雰囲気で盛り上がっているようだ(どーしよう)。

感心したのは、会場にいる聴講者約100人がだれも居眠りをしたり席を立ったりしないで熱心に聞いていることだ。聞けば、有料(HK$30)だそうで、恐らくは事前に主催者が入場券を各学校に配っていたようだが、それでも教育関係者や生徒たちが詰め掛けてきてくれてやはりうれしかった。(本当はどーせうちわの人間が数人程度だとたかをくくっていたんです)。

あっと言う間に私の番がまわってきて、会場が静まり返ってしまいました。

でもこれは場がしらけているのではなく、北京語をはなす変な日本人がいったい何をしゃべっているのか集中して聞いていたからなのです。香港人にとっては同じ中国語といっても北京語はかなり注意して聞いていないと意味が掴めないところがあります。私に与えられていた演題は甲虫についてでしたが、いきなりこの話題に入ると馬の耳に念仏状態になるのは必至だったので、話のメインを日本の学校教育に於ける昆虫の取り扱い方としました。実際に日本人学校の先生からお借りした教科書や現地の日本人学校の先生が作成した科学の副読本(香港の自然)を講演の際に回覧してもらいました。また、場の雰囲気を和らげるためにこちらから質問をして挙手で答えてもらったりもしました、そのなかで家で何か動物を飼ってますかの問いに対してわずか3名(香港人は挙手の際にまわりの顔色や様子をうかがったりしません)が、ネコ、カメ、金魚という回答をしました。さらに昆虫に関する質問では、蝶を見たことがあるかでは殆ど全員手が挙がりましたが、採ったことがあるかとか、飼育したことがあるかとなると、手が挙がりませんでした。

上述の日本人学校では理科教育の一環として教室内でタイワンモンシロチョウや、シロオビアゲハ等を飼育したり、野外観察も行っている旨の話をしました。そして最後に甲虫の話題について触れ、農業害虫でも益虫でもない一般の昆虫については公的機関による研究がなされていないので知見が少なく、それもごく一部の愛好者や博物館によってあきらかにされているのが現状で蝶に比べ愛好者が少なく、夜行性のものが多い甲虫類に関してはまだまだこれから研究しなければならない課題が多いことを話しました。

 私の講演が終わったところで、質疑応答に移りましたが、やはり日本人学校の理科教育方法に関する質問が多く、つまり生徒に教える以前に先生に教えるところから始めなければならないとあらためて痛感した訳です。

以上、展覧会&講演会報告でした。

 支部だよりといいながら支部活動がなかったので個人活動だよりとなってしまいましたが、TOTTOTO氏はそれでもなお妻な人の目を盗んでは、フィールドへ出かけているらしい。しかしながらいつもの場所でちょっと前に食糞性の甲虫を拾って以来数週間、収穫がないという。
私としては秋に発生するマルバネクワガタの発見を密かに期待しているのだが、、、
さらに、氏は8月のマレー上陸強行作戦時に手なづけた現地女性を介してマレー産の昆虫をゲットしているらしいとの情報を得た。この真相については次回本人に登場してもらいたい。

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