3.7 異常と雌雄同体

クワガタ虫のように非常によく研究されており、また大きな個体を沢山持つ属においてはいくらかの異常な標本が見つかる事は驚くに値しな

い。TIPPMANN(1954)は、6200の標本の中からたったの5つ(0.08%)ではあるが、異常なアゴを持つもの(片方の上顎が正しく形成されていない
もの)を見つけた。その原因としては蛹時代の発育不全が考えられた。この他の体の部分の発達異常が見つかるような個体はただの一つもな
かった。同じような事は他の種においても見出された。同様の標本における異なった大アゴは、例えばProsopocoilus forceps OLLENHOVEN,

P.parryi BOILEAU 及びCyclommatus imperator BOILEAUにおいても知られていた。異なった長さの脚となると、Odontolabisの属において

知られ、長さの違いは符節が長くなる事によって補完されさえする事もあったという(SCHMIDTによる)。左後脚の符節が短くなる例について

は、KUEHNEL(1991)が報告している。

似たような逸脱の中でも重要な意味を持つと思われる3つの例は、より注意して見るべきであろう。そして非常に希にではあるが、Lucanus

cervusの雌標本でありながら、その大アゴが大きさと形状において発達の未熟な雄のそれに非常に似ているものがある(図7)

[この図はもっとずっと前のページにあるのか?]。こうした個体は通常は偶然の変種「armatus」とされる(FRANZ1932, HEPP1932, 1939)。

自身の昆虫学の仕事によって非常に有名であるところのベルリンのJOHANN FRIEDRICH WILHELM HERBST(174301807)は、「Lucanus

armiger」という自身の独特のものとして1790年にそのような生物を描写している。一つの徹底的な描写から我々は、次の様な理解を読み取る

事ができる。「この甲虫の全体的な有り様を観察する限りにおいて、これは雌の様に思われるがしかし、それならその雄はどのようであり、どこ

にいるのかは全くわからない。というのも私はこれをHofchirurgus COLLINGNONの当地の奇麗なコレクションの中でのみ見つけているからで

ある。

しかしもし私がこれをそのはさみの形状から判断するならばこれは雄である。」
 

このようなまだまだ発見する事の多い体の発達の起源については、当面仮説しかないのであるが、これによればホルモン機能の異常や、蛹

期間の成長時期における生命の危険がない程度のある種の圧力といったものにその原因が求められる(FREUDE 1968)。
 

性染色体(Y)と結び付けられる欠陥奇形の例としては、WEINREICH(1959)がLucanus cervus (f.scapulodonta)について記述しているが、そこ

では大アゴの先端がシャベル状に広がっている(シャベル型)。これらの個体は1936年以来南Wetzlarの特定の地域で見つかっている。
 

(図13)Lucanus cervusの半陰陽雌雄同体。aはDUDICH(1923)、bはVON FRANKENBERG

(1942)の写真による例。
 

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