「怪説・世界のクワガタ」 第8回 ミヤマクワガタ (1)

A.CHIBA


ミヤマクワガタは第一回で図を使い゙怪説゙した事が有るが紹介出来なかった種も多くあり、それに何故か最近ミヤマクワガタが熱いようで、今回写真を使いもう一度やってみようと思う。Lucanus属は大型で迫力の有る種も多く昔から人気の高い種である。世界各地に広く分布しているが、赤道を超えて南半球には分布していないようだ。ヨーロッパから中東にはこの属の最大種ヨーロッパミヤマ Lucanus cervus が分布しており多くの亜種や型が記載されているが、産地によってはすでに絶滅してしまったのではないかと言われている種(亜種)もいる。果たして本当に絶滅しているのだろうか。
ミヤマクワガタが多く分布しているのはやはりクワガタの宝庫である東南アジア、中国あたりで、近年になっても亜種や新種?と思われるものも見つかっているようである。




fig1

今回は始めに日本名でタテイタミヤマと呼ばれているグループを紹介してみたい。まず fig1 の3頭は台湾に産する Lucanus formosanus で、左から桃園県ララ山、真ん中が南投県捕里獅子頭、右が高雄県六亀で採集されたもの。北部型、中部型、南部型が有ると余清金氏により指摘されたが、世界のクワガタムシ大図鑑では3つの型(亜種)が有るようだ が分布範囲が不明確であるとしている。それぞれ頭楯の型に違いがあり大顎のカタチの違いも大型個体では明確になる。写真で見るように中部型に最大の個体が出るようで、文献には最大で85mmに達するとしているものが有るが、数が減ってきている現在それほど大きいものを採集するのは無理だろう。一番右の南部型は他の型のように大顎が伸びず先端は日本産ミヤマのように開いており最大でも70mmを少し超えるぐらいのものしか見た事がない。




fig2

fig2左から2頭は Lucanus planeti プラネットミヤマクワガタで、左がベトナムのタムダオ産、真ん中は中国の雲南省河口。ベトナムから中国の雲南省、広西壮族自治区あたりに分布、最大のものは90mmを超える大型種でタテイタミヤマの仲間では昔から人気が高い。以前ベトナム産の本種は手に入りにくく中国産の標本も古いものしか出回っていなかった。ベトナム産のクワガタが日本に入るようになって本種は比較的手に入れやすくなり、最近は中国産も良く見かける。
右は Lucanus hermani ヘルマンミヤマクワガタで写真は中国四川省産。中国の福健省、広西壮族自治区、広東省、四川省などに分布。この種は前種と良く似ており、初めてこの種が大量に入ってきたとき、同定出来ずプラネットミヤマクワガタとして売っている標本商も見かけたぐらいである。違いは大顎の付け根近くに内歯が一本出ており頭楯のカタチが違うのと頭部のえぐれが大きいぐらいで見慣れないと区別しづらい。真ん中の中国産プラネットミヤマはヘルマンミヤマに形態が近づいてくるのか大顎の付け根近くに小さい内歯が出ているのが興味深い。


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