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この章では、妨害の考え方について説明します。カルドセプトでは、一切の妨害が無くゲームを進行できることはありえません。自分が妨害するにせよ、他者が妨害するにせよ、そこには何らかの意味(意図)があり、良し悪しがあるのです。ある程度の実力が身に付いたのであれば、妨害を避けて通ることはできません。基本的な考え方を知っておいてください。
「妨害」を論じる前に、是非とも触れておきたいことがあります。それが資源(リソース)という考え方です。
カルドセプトに限らずに、ゲームには資源(リソース)という概念があります。(参考:コスティキャンのゲーム論)これは、プレイヤーが管理し、交換することでゲームを進めていくものです。カルドセプトでは魔力やカードが資源としては理解しやすいものですが、実際には次のようなものが挙げられます。ちなみに資産(property:所有物)と資源(resource:財源)が表記上では混同しやすいので注意してください。
場合によっては「破壊されたクリーチャーの数」「配置しているクリーチャーの数」なども含まれます。こういった評価する基準となる単位を明確にすることで、正確な損得の計算が出来るようになります。魔力のみに注目して、カード枚数には注目しない、というのはおかしな話ですよね。
ゲームの勝敗を左右する資源を管理すれば、自ずと勝利に近づきます。逆に、勝敗のポイントとなるべき資源に気が付かないと、勝つことが難しくなります。例えば【パーミッション】が強いマップでは「パーミッションの使用可能枚数」が重要ですし、【ルナティックヘア】がいればクリーチャーのSTに注意する必要があります。
カルドセプトでは管理できる資源の数が多いのですが、真に管理すべき資源が何かを見極めることが、上達への第一歩です。また、誰も気が付かない資源にいち早く着目し、そこでアドバンテージを取って勝てるようになれば、それは全く新しい戦術となります。話が横に逸れましたが、そのくらいゲームを左右する部分であると考えて下さい。
カルドセプトは「運」に左右されるゲームです。「どのカードを引くか」「ダイスの目は何が出るか」など、必ずゲーム中に運の要素が絡んできます。そのため、何らかの理由により他のプレイヤーに差がついてしまうことがあります。「序盤に全くクリーチャーを引けなかった」「敵の高額領地に止まってしまった」といった不可抗力の理由により後退が起こるのは、至極当然なのです。前者はドロースペルを、後者は移動スペルをブックに組み込むことである程度は軽減できますが、完全な対策にはなりません。絶対に出遅れない保証はないのです。
ブックの編集時点でそれらを回避する方法がないのだとしたら、ゲームプレイ中に挽回するしか道はありません。プレイヤーの行動はブックに制限されますから、ブックに挽回するための手段も投入することになります。その手段として真っ先に思いつくのが妨害ではないでしょうか?カルドセプトには様々な妨害手段が用意されています。「自分が出遅れた時は、このカードで他のプレイヤーの足を引っ張って追い付こう」というのは非常に分かりやすい考え方です。
また、相手が自分よりも目標魔力の達成速度が遅く、試合中に有効な行動もできないブックであれば、特に妨害をする必要もなく勝ててしまいます(極端な例を挙げれば、アイテムのみ50枚ブックとか)。明らかにこちらが早く達成できるのであれば、普通に周回を重ねるだけで勝てるでしょう。そこに妨害が入り込む余地はありません。しかし、相手が自分と同程度の実力を持つ人たちであれば、頭一つ抜きん出る方法が必要です。そこで多くの人が「前に進むスピードは同じだから、相手の足を引っ張ってやれば勝てる」と考えます。ここでようやく妨害という発想が登場します。
つまり、妨害が生まれるのは「ドローやダイスなどのランダム性」と「相手と実力が拮抗している」という二つの原因があるためなのです。
では、果たして妨害は本当に有効な手段でしょうか。ちょっと考えてみましょう。
もし、あなたがカルドセプトのゲームデザイナーになったとしたら、次の二つのカードからどちらのカードを採用しますか?
スペルA:コスト10 敵セプター全員の魔力を-100G
スペルB:コスト10 使用者は100Gの魔力を得る
実はこの二つのスペル、盤面に与える影響はまったく同じです。
自分 敵1 敵2 敵3
魔力 200 200 200 300
(スペルAを使用)魔力 190 100 100 100 全員に90Gの差をつける
(スペルBを使用)魔力 290 200 200 200 全員に90Gの差をつける
まったく同じ機能を持っているなら、どちらを採用しても問題が無いように見えます。しかし現実には違います。スペルAは自分に必ず有利に働くカードですから、全員がブックに採用してもおかしくありません。つまりスペルAを使いつづける状況になると考えられます。しかし、カルドセプトは目標魔力を達成するゲームです。プレイヤー全員の魔力が減り続けては、いつまでたってもゲームが終了しません。
これに対してスペルBは、プレイヤーが使い続けることで目標魔力に近づいていきます。プレイヤー全員の魔力は底上げされる傾向にあるので、いつかはゲームの終了が見えてくるでしょう。つまり、ゲームを作る側から考えた場合、ゲームを終了させる方向に働くカードを採用するのが当然であって、無駄に遅延させるカードはゲームに適さないと言えます。実際にカルドセプトでは、スペルAのような全体を対象とした高効率の妨害スペルは存在しません。単体対象においてのみ効率的な側面を持つスペルがあるのみです。
ちなみに、上のスペルAとBの比較から、自分の収入は他のプレイヤーに差をつけることであると分かります。例えば、【マナ】を使って200Gの魔力を得ることは、他のプレイヤーの魔力をそれぞれ200G減らしたことと同義です。こう考えると、収入はアドバンテージを得る手段としては最高のものと位置付けられます。下手に妨害するよりも、収入手段を確保した方が効果的な場合が多く、出遅れた時に挽回できるチャンスも増えます。
以上を踏まえると、わざわざ魔力を消耗して妨害することは割に合わない行為だと言えないでしょうか?
しかし、相手も同じように収入手段を確保していると考えれば、差を埋める手段を用意していないのは不安です。自分と相手が同じスピードで進むとしたら、何らかの理由で差がついた場合に対処する方法が必要になるからです。また「【メテオ】などのカードは効果的に使う局面があるだろうし、収入だけが挽回の手段ではないはずだ」という意見もあります。そこでこの章は、妨害手段の効果を検証した上で、効果的な干渉方法を提示していきます。その前段階として、やや抽象的ですが妨害について分類したいと思います。
資産の妨害:自分の魔力・手札を失いつつも、相手の資産を減らすことを目的とする
機会の妨害:自分の魔力・手札を失いつつも、相手の行動選択肢を狭めることを目的とする
乱暴な分類ですが、カルドセプトでは大まかにこの二つに分類できます。例えば、【マインドブラスト】、【ウェイスト】は相手の魔力を減らす効果があるので資産の妨害です。【メテオ】も「相手が土地につぎ込んだ魔力をリセットする」と考えられるので、資産の妨害に含まれます。これに対して、【シャッター】などの手札破壊や、【バインド】といった行動への制限は、相手の選択肢を減らすことから機会の妨害に分類されます。
実際には、資産の妨害は減った魔力により行動が狭めらるため、機会の妨害の側面もあります。これは機会の妨害も同様で、相手の【マナ】を破壊した時は資産の妨害とも言えます。しかし、これらは状況が限られるため検証しません。一般的に使いうる状況でカードを検証し、妨害と呼ばれる挽回手段の有効性を明らかにするのがこの章の目的だからです。
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