なぜ、妨害しなければならないのか?
カルドセプトは「運」に左右されるゲームです。「どのカードを引くか」「ダイスの目は何が出るか」など、必ずゲーム中に運の要素が絡んできます。そのため、何らかの理由により他のプレイヤーに差がついてしまうことがあります。「序盤に全くクリーチャーを引けなかった」「敵の高額領地に止まってしまった」といった不可抗力の理由により後退が起こるのは、至極当然なのです。前者はドロースペルを、後者は移動スペルをブックに組み込むことである程度は軽減できますが、完全な対策にはなりません。
絶対に出遅れない保証はないのです。
ブックの編集時点でそれらを回避する方法がないのだとしたら、ゲームプレイ中に挽回するしか道はありません。プレイヤーの行動はブックに制限されますから、ブックに挽回するための手段も投入することになります。その手段として真っ先に思いつくのが妨害ではないでしょうか?カルドセプトには様々な妨害手段が用意されています。「自分が出遅れた時は、このカードで他のプレイヤーの足を引っ張って追い付こう」というのは非常に分かりやすい考え方です。では、果たして妨害は本当に有効な手段でしょうか。ちょっと考えてみましょう。
ゲームデザイナーの気持ち
もし、あなたがカルドセプトのゲームデザイナーになったとしたら、次の二つのカードからどちらのカードを採用しますか?
スペルA:コスト10 敵セプター全員の魔力を-100G
スペルB:コスト10 使用者は100Gの魔力を得る
実はこの二つのスペル、盤面に与える影響はまったく同じです。
自分 敵1 敵2 敵3
魔力 200 200 200 300
(スペルAを使用)魔力 190 100 100 100 全員に90Gの差をつける
(スペルBを使用)魔力 290 200 200 200 全員に90Gの差をつける
まったく同じ機能を持っているなら、どちらを採用しても問題が無いように見えます。しかし現実には違います。スペルAは自分に必ず有利に働くカードですから、全員がブックに採用してもおかしくありません。つまりスペルAを使いつづける状況になると考えられます。しかし、カルドセプトは目標魔力を達成するゲームです。プレイヤー全員の魔力が減り続けては、いつまでたってもゲームが終了しません。
これに対してスペルBは、プレイヤーが使い続けることで目標魔力に近づいていきます。プレイヤー全員の魔力は底上げされる傾向にあるので、いつかはゲームの終了が見えてくるでしょう。つまり、ゲームを作る側から考えた場合、ゲームを終了させる方向に働くカードを採用するのが当然であって、無駄に遅延させるカードはゲームに適さないと言えます。実際にカルドセプトでは、スペルAのような全体を対象とした高効率の妨害スペルは存在しません。単体対象においてのみ効率的な側面を持つスペルがあるのみです。
ちなみに、上のスペルAとBの比較から、
自分の収入は他のプレイヤーに差をつけることであると分かります。例えば、マナを使って200Gの魔力を得ることは、他のプレイヤーの魔力をそれぞれ200G減らしたことと同義です。こう考えると、収入はアドバンテージを得る手段としては最高のものと位置付けられます。
下手に妨害するよりも、収入手段を確保した方が効果的な場合が多く、出遅れた時に挽回できるチャンスも増えます。
以上を踏まえると、わざわざ魔力を消耗して妨害することは割に合わない行為だと言えないでしょうか?
妨害の分類
しかし、相手も同じように収入手段を確保していると考えれば、差を埋める手段を用意していないのは不安です。自分と相手が同じスピードで進むとしたら、何らかの理由で差がついた場合に対処する方法が必要になるからです。また「メテオなどのカードは効果的に使う局面があるだろうし、収入だけが挽回の手段ではないはずだ」という意見もあります。そこでこの章は、妨害手段の効果を検証した上で、効果的な干渉方法を提示していきます。その前段階として、やや抽象的ですが妨害について分類したいと思います。
資産の妨害:自分の魔力・手札を失いつつも、
相手の資産を減らすことを目的とする
機会の妨害:自分の魔力・手札を失いつつも、
相手の行動選択肢を狭めることを目的とする
乱暴な分類ですが、カルドセプトでは大まかにこの二つに分類できます。例えば、ペイン、ウェイストは相手の魔力を減らす効果があるので資産の妨害です。メテオも「相手が土地につぎ込んだ魔力をリセットする」と考えられるので、資産の妨害に含まれます。これに対して、シャッターなどの手札破壊や、バインド、ライフフォースといった行動への制限は、相手の選択肢を減らすことから機会の妨害に分類されます。
実際には、資産の妨害は減った魔力により行動が狭めらるため、機会の妨害の側面もあります。これは機会の妨害も同様で、相手のマナを破壊した時は資産の妨害とも言えます。しかし、これらは状況が限られるため検証しません。一般的に使いうる状況でカードを検証し、妨害と呼ばれる挽回手段の有効性を明らかにするのがこの章の目的だからです。
資源
やや、補足の説明になってしまうのですが、これから妨害について論じる上でどうしても必要な考え方なので解説します。
カルドセプトに限らずに、ゲームには
資源(リソース)という概念があります。これは、プレイヤーが管理し、交換することでゲームを進めていくものです。カルドセプトでは魔力やカードが資源としては理解しやすいものですが、実際には次のようなものが挙げられます。ちなみに
資産(property:所有物)と資源(resource:財源)が表記上では混同しやすいので注意してください。
総魔力資源
現魔力、土地魔力、護符魔力
機会資源
カードのドロー、スペル使用、ダイス使用、クリーチャーカード・領地コマンド使用、聖堂利用
その他の資源
カード枚数、周回数
場合によっては「クリーチャーの死亡数」「配置しているクリーチャーの数」なども含まれます。こういった評価する基準となる単位を明確にすることで、正確な損得の計算が出来るようになります。魔力のみに注目して、カード枚数には注目しない、というのはおかしな話ですよね。
次項では、資産への妨害を中心に論じます。得になるようなならないような妨害スペルを、具体的に解説します。