■優紀編■
4日目【7月24日】


 
 

「いや、信じますよ」
「え?」

 優紀さんが俺に聞き返す。

「その事を隠さないで話してくれたから。それに理由なんて気にしないし…優紀さんとこうして話が出来る事で俺は満足ですよ」

 その言葉に優紀さんは少し驚いた顔をして、それから、やわらかく微笑んだ。

「本当に? ありがとう。そう言ってくれると安心するわ」
「そもそも、優紀さんと姉貴とのそういう関係がなかったら、俺なんて相手にされてなかった訳でしょ? 優紀さんには悪いかもしれませんけど、俺はむしろ感謝しますよ」
「前向きなのね。まこと君」

 そう言って優紀さんはゆっくり紅茶のカップに口を付けた。
 そうだよ。きっかけなんてあんまり気にしない。確かにいい気分じゃないけれど、大切なのはこれからそれをどう活かしていくかって事だ。
 たとえ優紀さんが俺に対してからかってやろうなんて気持ちを抱いてるとしても、俺は本気にしてみせる。

 ……。

 あれ? その前に、俺の気持ちはどうなんだ?
 優紀さんの事が本気で好きになってしまったのだろうか?

「ねぇ、まこと君」
「あ、はい?」

 考え事をしていた俺は優紀さんの声に少し慌てた。

「明日は予定とかあるの」
「えっと〜、特にはなかったかな?」
「わたし明日はオフなのよ。よかったら一緒に海に行かない?」
「ええ!? 二人だけでって事ですか?」
「嫌?」
「嫌な訳ないじゃないですか!大歓迎ですよ」

 俺は思わず立ち上がって優紀さんに答える。

「うふふ。よかった。じゃあ明日9時に博子の家まで迎えにいくから」
「分かりました。優紀さんの水着姿、楽しみにしています」
「あらあら。でもそうやって面と向かって言われると、逆に悪い気はしないわね」
「想像するとよだれが…」
「こら。調子にのらないの」

 その後、海での予定を少し話して、俺は別荘を出た。
 あんまり長居すると悪いもんな。それに明日はずっと一緒にいられるんだ。

 それにしても、まさか優紀さんに誘われるなんて思わなかったなぁ。
 俺自身、ここに来て、実際に海に泳ぎに行ったのは初日だけだったし…もしかして凄くラッキー?

 なにはともあれ、明日が楽しみだ。