たぶん、勘違いだろう。声かけて知らない人だったら恥ずかしいもんな。
さて、そろそろ帰るか。
俺は元来た道を戻り姉貴の家へ帰った。
そして家が見える所に来て、誰かが玄関先にいるのが見える。
おや?あれは…。
「こんな所でなにしてんだ美鈴?」
つまらなそうに足元を見ている女の子は、間違えるはずもない美鈴だった。
俺の事に気付くと、一瞬嬉しそうに微笑んだように見えたのだが、次の瞬間には怒った顔をして俺の前にズカズカやって来た。
「バカ宇佐美、あんたを待っていたのよ。何処行っていたのよ! またっく」
「待っていたって、ずっとかよ?」
「そうよ。あたしを待たせるなんて、とんでもない男ね」
「なんだよ。俺、お前と何か約束してたか?」
そう、俺には美鈴となにか約束した覚えは全くない。
「う、うるさいわね。今日一日、私のお供をさせてあげようと思っただけよ。ありがたく思いなさい」
「そうか、お供ね…お供だと!」
でた。美鈴お嬢様のわがままが。
「なによ、文句でもあるっていうの!?」
「あるさ、あるある。おおありだ! 何が悲しくて俺がお前のお供をしなきゃいけないんだっ! 優紀さんはどうした? 優紀さんは」
「さあね。最近、深川とはできるだけ一緒にはいない事にしてるの。誰かに見張られているのはもうたくさん」
「…で、なんで俺なわけ?」
「感謝しなさいよ。私と二人っきりで一日過ごせるなんてめったにいないんだから」
俺はため息をついて美鈴の肩を叩く。
「美鈴よぉ、俺とデートしたいんなら、デートしたいって言えよ」
「な、なに言ってるのよ! 私があなたみたいな最低男と一緒にデートなんてするわけないじゃない!」
まったくこの女は…。
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