三本松駅で電車に乗り換えて、今、俺は電車の窓からぼんやり流れ去る景色を眺めていた。
緑の向こうに青い海が見える。
この一週間の出来事やさっきの姉貴の話。
そんなことを思い出しながらだんだんと遠くなる海を見つめていた。
知らない間に涙がこみ上げていた。
なに俺はブルーになってるんだ…直美さんの事は終わった訳ではないだろう?
夏の終わりにまたここに来て…直美さんにあって…話をして…それから…。
「ちょっと、君、荷物座席に置かないでくれる?」
「え?」
覚えのある展開に、俺は声の主を見た。
直美さんだ。
「私が言ったこと全然解ってないのね、まこと君」
「直美さん、何でここに?」
俺が荷物を膝に抱えると俺の隣に直美さんは座った。
「もーちょっと驚いてくれると思ったのにな」
「そりゃぁ驚いたけど…」
しばしの沈黙。
俺が何か言わねばと口を開こうとしたとき、直美さんが先に話し始めた。
「私、あれから色々考えたんだ。ほら、あのとき私やけになって気持ちが平静でなかったからね」
「まさか、昨日言ったこと…勢いで?」
「ちょっと、勝手に結論ださないでよ。昨日言ったことのほとんどは本心よ。私の真面目な気持ちよ。ただね、今夜だけ恋人でいさせてと言ったうちの今夜だけって所、あれ取り消す」
ちょっと照れながら直美さんがぶっきらぼうにそう言った。
「え?それじゃあ」
「やってもみないうちから諦めるなんて私らしくないよね。友達とかから遠距離恋愛は無理よなんて言われて真に受けてたけど、他人は他人、私たちは私たちでしょ? 結局、私たちの事は私たちしかわからないのよ。それで私は自分の気持ちとまこと君とを信じてみることにしたの」
「俺も姉貴に言われたよ。物理的距離より精神的距離を考えなって」
「それで、まこと君の結論は?」
「俺、夏休み中にもう一度三本松町に来て、直美さんに言うつもりだったよ。遠く離れていてもいい。時々しか逢えなくてもいい。彼女になってって…」
「…じゃぁ」
「直美さん。俺とつきあってくれ」
「まこと君…」
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