◆7月25日<夜>◆
『姉貴からのアドバイス』
さて、この旅行も残すことあと二日。
最後の日の朝に帰るから事実上明日一日しかこの町にいられないんだ。
ぐっすり寝て明日に備えよう。
「まこと、まだ起きてるか?」
「もう、寝るところだけど」
「少しいいか?」
そういうと姉貴が部屋に入ってきた。
「それで、まこと。直美ちゃんとの事、どうするんだ?」
「な、なんのことだよ」
「好きなんだろ? 彼女のこと」
「あのなぁ。からかいにきたのなら俺は寝るぞ」
俺はそう言うと布団の上に横になり、姉貴に背を向けてタオルケットをかぶった。
「私は真面目に聞いてるんだ。直美ちゃんに会えるのは明日で最後なんだぞ。なにもしないで別れるのか?」
「なにもしないでって…」
「馬鹿、お前、変な想像しただろ?だからさ、私は気持ちも打ち明けず彼女の気持ちも聞かずに帰るつもりかって聞いてるんだ」
「……」
「やっぱりな。いいか? 明日朝一番で、彼女にプレゼントを買いに行きな。そしてそれを渡すときに、自分の気持ちを彼女にうちあけるんだ」
再び俺は起きあがり姉貴を見る。
「姉貴、でも、俺」
「渡すときは必ず告白もセットだ。わかったな」
「ああ。やってみるよ…」
姉貴って、俺が悩んでるとき、こっちから相談しなくてもその悩みを見抜いて頼りになるアドバイスをくれるんだよな。
こんなクソ生意気な姉貴でも、こういう時ばかりは姉貴に感謝せずにはいられないよ。
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