「けっ! やってられねぇぜ」
「こんな奴ら無視して、さっさと行こうぜ」
もう一人の男が感心なさげに言う。
「ほんと、ここはいい浜辺だよな!」
男は吸っていた煙草ともっていたジュースの缶を直美さんの足元に投げ捨てると駐車場の方へ歩いていった。
なんて酷い奴らだ。俺はもう我慢できない!!
「おい、待てよっ」
「いいの! もういいのよ、まこと君」
呼び止めを無視して去っていく連中に向かおうとした俺を、直美さんが止める。
「直美さん…」
直美さんは黙って男達が残していった焼き肉の道具やゴミを片づけ始めた。
もちろん俺も一緒に手伝った。
それにしても道具や残ってた木炭まで使い捨てだ。
何を考えてるのだろう?
「…私が間違っているの…私が間違った事を言ったの…」
「え? …直美さん!」
気がつくと直美さんは泣いていた。涙をこぼしながら後かたづけをしている。
「…ごめんね…まこと君。私が頑固に言い張ったばかりに、まこと君に嫌な思いさせちゃって…ごめんね……」
「間違っちゃいないよ。直美さんはなにも間違ってはいない! 悪いことを悪いってきちんと言えるなんて立派だよ。俺にはとても真似できない」
「まこと君…」
「ほら、いいから、涙をふきなよ。少し落ち着いてから片づけよう…な?」
「う、うん」
直美さんは必死で涙をこらえてるようだった。
その姿がとても痛々しかった。
自分を強く見せようと悲しみを抑えてる直美さん…俺はそんな彼女に隣にいること以外、何もしてあげれなかった。
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