◆7月26日<昼>◆
『小野寺さんの帰宅』
そして、朝。
「いろいろ、ご迷惑をおかけしました」
そう言って玄関まで見送りに来た姉貴達に頭を下げる小野寺さん。
体調の良くなった彼女に姉貴は「もう大丈夫だな。早く帰って親を安心させてあげな」と帰宅をうながした。
喧嘩して飛び出した家に帰るのは気まずいものだ。
でも彼女は家に帰る覚悟は出来ていたのだろう。素直に姉貴の忠告に従う。
「気にする事ないよ。困った時はお互い様だよ。それにまことの大切な女性だからね。もし放っておいたりしたら、後々までコイツに恨まれてしまうだろうからな」
「姉貴!!」
「あ〜、はいはい。冗談だよ。とにかく、元気になってよかったよ」
「はい。お世話になりました」
再び、ぺこりと頭を下げる小野寺さん。
「気を付けて帰りなよ」
「はい。失礼します」
そう挨拶して外へ出る彼女。
「それじゃあ、俺、小野寺さんを送ってくるから」
俺も彼女と一緒に玄関を出た。
途中、たいした話しもなく、黙々と駅を目指す。
小野寺さんも、今回の事でいろいろと考える所があるのだろう。
俺はあえて話かけずに、そのまま彼女の様子をうかがった。
駅に着いた。
入場券を買ってホームまで見送ろうとした俺を、小野寺さんが止める。
「後は大丈夫だから。ここまで送ってくれてありがとう。あといろいろ迷惑かけたり、心配かけちゃってごめんなさい」
「ああ。親とはちゃっんと話し合いなよ。きっと上手くいくから。また何かあったら、俺でよければ相談にのるから」
「うん。ありがとう。じゃあ、また学校で」
「気を付けてな」
改札を抜けていく彼女を見送る。
この数日間で、小野寺さんとはかなり親しくなれた気がする。
彼女の親の説得が上手くいくことを祈りつつ、俺は元来た道を戻った。
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