「小野寺さん、心配したんだぜ」
「宇佐美君…」
彼女はあっさりと見つかった。
駅のベンチに力無く座り込んでる。彼女はゆっくりと顔を上げて俺を見た。
「どうしたんだよ。何があったのか知らないけど、みんな心配してるよ」
「うん…」
弱々しく返事をする彼女。何か様子が変だぞ。
彼女の顔をのぞき見る。頬が紅潮し、心なしか息が荒い。
「ちょっとごめん」
俺は慌てて彼女の額に手を当てる。
「あっ…」
小野寺さんは少し驚いた表情をしたが、そのままじっとしていた。
熱い。
「熱があるじゃないか! 大丈夫?」
「うん。ちょっと無理しちゃったから…ごめんなさい」
無理に笑顔をみせようとする彼女に、俺は少しあきれながらも手を取って立ち上がらせた。
「そういう問題じゃないだろう?」
立ち上がったとたんよろける彼女。
慌てて肩をささえる。
「いくらなんでも無茶が過ぎるよ小野寺さん。こんな状態で家出なんて」
「ご、ごめんね…本当に…」
息が荒い。俺は再び彼女を座らせる。
俺はどうしようか迷った。
病院に連れて行くにも、場所も知らないし健康保険証もお金もない。
いっそう救急車でも呼ぶかな…。
だめだだめだ。騒ぎが大きくなる。
彼女は家出して来たのだぞ。あまり無意味に事を大きくするのは良くないかもしれない。
とにかく小野寺さんを落ち着ける場所へつれて行かなきゃ。
俺は悩んだあげく、電話で事情を話して姉貴に車で迎えに来てもらう事にした。
あんな馬鹿姉でもこういう時はけっこう役に立つ。
借りを作ることになるが、まあ、仕方がないだろう。
「お姉さんすみません…迷惑かけてしまって…」
「いいんだよ。それより少しでも眠ってな。きついんだろ?」
「本当にごめんなさい」
BMWの後部座席。俺の隣でうずくまている小野寺さん。そう言って謝る彼女の目から涙がこぼれ落ちるのを俺は見てしまった。
こりゃぁ、風邪をひいてる以外にもなにかあるな…。
親と喧嘩したって言っていたけど、やっぱり、その辺に理由がるんだろうな。
聞きたいことはいろいろあったけど、とりあえず今はそっとしておいた方がいいだろう。
|