「ほぉら! 美和、取ってこぉぉい!!」
そう言って弘はフリスビーを海に向かって遠くへ投げる。ほお、よく飛ぶもんだ…ってあれを小野寺さんに取ってこいって、むちゃくちゃ言ってやがる。
「自分で勝手にどうぞ」
「なんだよノリが悪いなぁ…」
「いくらなんでも行かないわよ。弘、なんか調子乗りすぎてない?何かあったの?」
そりゃぁ、弘の奴はこの後、別の女の子とデートなんだから少しは浮かれるわなぁ。
「あ〜うるさい。いいから取りにいかないと流されてなくなっちゃうぞ。ちなみにあれ、お前のだからな」
「あああ!! もう! また勝手に人の荷物、漁ったわね!」
怒りながら海の中にフリスビーを取りに行く小野寺さん。
でも、なんかさっきから俺、相手にされてないのだが……少し寂しい。
フリスビーを拾って思いっきり勢いよく弘に投げ返す。あきらかに敵意がこもっている。しかし低空を凄いスピードで向かってくるそれをいとも簡単にキャッチする弘。
こいつら…何者だ?
「この俺に挑戦するとはな…」
不敵な笑み…らしきモノを浮かべると弘は体を低くして彼女に投げ返した。
こちらもかなりスピードがついていたがそれも見事に受ける小野寺さん。
それから一時リレーが続く。
…って俺、完全に忘れられていないか?
ああ。見上げた空が潤んで見えるのはなぜ?
「まこと! そっちいったぞ」
不意に声をかけられて俺は一瞬、凄く嬉しかったが、次の瞬間、顔面に衝撃を食らっていた。
「あ〜あ! よそ見してるから…」
俺はもろにフリスビーを顔で受けていたのだ。
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