■美和編■
2日目【7月22日】


 
 
「ほぉら! 美和、取ってこぉぉい!!」

 そう言って弘はフリスビーを海に向かって遠くへ投げる。ほお、よく飛ぶもんだ…ってあれを小野寺さんに取ってこいって、むちゃくちゃ言ってやがる。

「自分で勝手にどうぞ」
「なんだよノリが悪いなぁ…」
「いくらなんでも行かないわよ。弘、なんか調子乗りすぎてない?何かあったの?」

 そりゃぁ、弘の奴はこの後、別の女の子とデートなんだから少しは浮かれるわなぁ。

「あ〜うるさい。いいから取りにいかないと流されてなくなっちゃうぞ。ちなみにあれ、お前のだからな」
「あああ!! もう! また勝手に人の荷物、漁ったわね!」

 怒りながら海の中にフリスビーを取りに行く小野寺さん。
 でも、なんかさっきから俺、相手にされてないのだが……少し寂しい。

 フリスビーを拾って思いっきり勢いよく弘に投げ返す。あきらかに敵意がこもっている。しかし低空を凄いスピードで向かってくるそれをいとも簡単にキャッチする弘。

 こいつら…何者だ?

「この俺に挑戦するとはな…」

 不敵な笑み…らしきモノを浮かべると弘は体を低くして彼女に投げ返した。
 こちらもかなりスピードがついていたがそれも見事に受ける小野寺さん。
 それから一時リレーが続く。

 …って俺、完全に忘れられていないか?
 ああ。見上げた空が潤んで見えるのはなぜ?

「まこと! そっちいったぞ」

 不意に声をかけられて俺は一瞬、凄く嬉しかったが、次の瞬間、顔面に衝撃を食らっていた。

「あ〜あ! よそ見してるから…」

 俺はもろにフリスビーを顔で受けていたのだ。