「おい、まこと。わたしがいるというのにナンパか?」
突然、声をかけられて振り返ると姉貴がジト目で俺を見ていた。
それを見て小野寺さんは目を丸くして俺の顔を見る。
「…もしかして本当に実践しちゃったの? 弘が言っていたパートナー探しとかいうやつ」
小声で言う小野寺さん。
一瞬、何の事だ? と思ったのだが彼女がとんでもない誤解をしている事に気がついた。
「違う、違う。こいつは俺の姉貴なんだ」
慌てて弁解…もとい、説明する俺。
その様子を見て姉貴がニヤリとした。
な、なんか悪い予感がするぞ…。
「わたしに声かけておきながら、他の娘をナンパするなんてどういう事なのよ」
そうわめいて俺を睨む姉貴。
それを見て少し身を引く小野寺さん。
おいおいおいおい!! 冗談じゃないよ!
「や、やめろよな! たちが悪過ぎるぞ姉貴」
「姉さんだなんて嘘ついて。そんなにその娘のほうが大事なの?」
「あの〜、まこと君、わたしひょっとしてお邪魔?」
小野寺さんが上目遣いに俺を見てそう言う。
「あああ! だから違うって」
俺は頭を抱えて叫ぶ。
「酷いわ、まこと!」
さらに調子に乗って俺につかみかかる姉貴。
くそ〜、本気で怒るぞ姉貴!!
「おや、どうしたんだい?」
急に間の抜けた声が割り込んでくる。
康太郎義兄さんがやって来たのだ。
それを見て姉貴が動きを止めた。
「あ〜あ、いい所だったのに」
「???」
康太郎さんの顔を見つつ言う姉貴。当の本人は訳が分からずキョトンとしている。
「あのな〜姉貴!!!」
「あ、あはははは。ちょっとしたおふざけじゃないか。気にしない。気にしない」
「度が過ぎるぞ! 彼女はクラスメイトなんだから変な誤解されたらどうするんだ」
「何?そうだったのか。いや、ごめんな。え〜と…」
「小野寺美和です。じゃぁ本当に宇佐美君のお姉さんなのですか?」
頭を下げながら言う小野寺さん。
「長谷川博子だ。驚かしてすまないな。よろしく美和ちゃん。それで、二人はそういう関係なのか?」
「え?」
「恋人同士かって事だ」
な、なんて事を聞いてるんだ姉貴は!
自分の顔が熱くなるのが分かる。
「な、なに馬鹿なこと言ってるんだよ。小野寺さんは、と、友だちだよ」
「分かって聞いたんだ。なに声裏返しているんだよ」
冷めた声で言う姉貴。
くそ〜、まったく姉貴の奴!!
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