「確かに、美鈴はいろいろと気になるヤツだけど、俺はどちらかと言うと、その…優紀さんの事が気になっています」
「わたし?」
「その、なんて言うのか、美鈴みたいな子供と違って、落ち着いてるし、美人だし、年上の女性として、すごく魅力的だし…優紀さんを振った奴がいるなんて信じられないですよ」
「ふ〜ん。嬉しい事いってくれるわね。そうね、君があと二、三年もして少し成熟したら、本気で相手してあげようかしら」
「ちぇ、やっぱ年下じゃダメですか」
「あんまりからかうとわたし本気にしちゃうよ〜。そうなったらどうなってもしらないからね」
「どうなるんですか? 俺本気ですよ」
優紀さんの冗談じみた挑発に思わず乗ってしまう俺。
「言ったわね。じゃぁ、どうなるか教えてあげる」
優紀さんは俺の背中に手を伸ばして来た。
これは、もしかして…
「ねぇ、目をつぶってよ」
優しく耳元で囁く彼女。俺は何かを期待しながら目をつぶってみせた。
「まこと君…」
予想外の展開に胸が高鳴る。
優紀さんは、やさしく俺の名前を囁くと俺の鼻に感触が…え? 鼻!?
「大人をからかうのは、あと5年ばかり早くてよ」
痛てて、俺は優紀さんに鼻をつままれていた。まあ多分こうなるだろうとは思っていたけど、少し期待してしまった自分が恥ずかしい。
「ひどいですよ優紀さん」
「私はいい加減な気持ちで君を傷つけたくないからね。酔った勢いなんて最低でしょ?」
「ま、優紀さんが俺みたいな子供を相手しないのは予想ついてたからね」
つままれた鼻をさすりながら、俺は優紀さんを見る。
「べつにまこと君に魅力がないって言っているんじゃないのよ。でも年齢を考えるとちょっとね。もう少し歳をとって君がいい男になったら、そのとき誘ってね」
「それ約束ですよ。数年後いい男になって優紀さんの言ってることが本当かどうか確かめますからね」
「ええ、楽しみにしてるわ」
しょえ〜、勢いとはいえとんだ約束をしてしまったもんだ。
でも、優紀さん本気かなぁ、それとも酔ってるからか?